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2022年4月の記事一覧

私の宇野功芳

私の宇野功芳

宇野功芳の思い出。

亡くなって6年近く経ってもクラシックファンに絶大な人気を誇る宇野功芳。
ただ、ファンの中には「〜といえよう」や「メータのブルックナーは聴く方が悪い」というネタにのみ終始して、実際の宇野さんの本は読んだことがないという人も多いのではないか。

私はバリバリの宇野チルドレンだった。

私が最初に行ったクラシックコンサートは「功芳のラストリサイタル」、宇野さんと新星日本交響楽団によ

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囲碁小説「手談」#1

囲碁小説「手談」#1

「ねぇ、最初の一手を打つときどんなこと考えてる?」
 杉浦さんが言った。
「最近は小目(こもく)より星に打ってるかな」
「そうじゃなくて」
 彼女がおかしそうに笑う。
「私は真っ暗な夜の海に向かって小石を放り投げてる気がする。その石の波紋がだんだん広がっていくの」
「言われてみればそんな気もする」
「紺野くんは夢がないね」
 杉浦さんが苦笑いするとお父さんからもらったらしいRのネックレスの金色が揺

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