車離れを背景に成長するカーシェアリング市場 。タイムズとCARECOを比較分析
こんにちは、KnownsインターンのDaikiです。
みなさんは自動車をお持ちですか、もしくは、これから購入されるご予定はありますか?近年、自動車所有という概念が大きく変わりつつあります。
特に、若年層は自動車を所有するよりも利用する、という新しいライフスタイルを模索していることが見て取れます。
公益財団法人エコロジー・モビリティ財団による2019年の世帯主年齢別乗用車普及率を見てみると、29歳以下は52.8%、30〜59歳は78.9%、60歳以上は63.0%となっており、若年層の所有率の低さが際立っています。
また、日本自動車工業会の調査によれば、若者の約40%しか「車を購入したい」という意向を示しておらず、「自動車なしでも生活が可能」「自動車の維持費が高い」「他の消費に資金を使いたい」といった理由が自動車離れの主な要因として挙げられています。
しかしながら、若年層の自動車離れというトレンドの一方で、「カーシェアリング」のような自動車利用サービスが注目を集めています。
カーシェアリングとは、主に事業者が所有する車両を会員である利用者に貸し出すサービスで、日本では特定のステーションから自動車を借りて返却するステーションベース型のカーシェアリングが主流となっています。
日本のカーシェアリングの2022年3月の車両台数は51,745台、会員数は2,636,121人、カーシェアリング車両ステーション数は20,371ヶ所となっており、右肩上がりに拡大していることがわかります。
拡大しているカーシェアリング市場ですが、日本にはどのような企業があるのでしょうか。
今回は消費者データ分析サービス「Knowns Biz」を用いて主なカーシェアリング企業について分析を行っていきます。
企業の満足度と認知度
上からカーシェア企業の認知度と満足度のグラフ、認知率ランキング、満足率ランキングを並べてみました。
これらのデータは、業界内での一部の企業の地位について興味深い数値を示しています。具体的には、「タイムズ」または「タイムズカー」は認知度という観点で圧倒的な評価を得ている一方で、顧客満足度では「CARECOカーシェアリングクラブ」に劣る結果となっています。
しかし「CARECOカーシェアリングクラブ」は顧客満足度で業界トップを獲得しているにもかかわらず、認知度では極めて低い評価にとどまっています。
確かに、タイムズのブランド名やその誰もが目にしているであろうロゴは多くの消費者にとってすぐに思い浮かぶものでしょう。
一方で、CARECOカーシェアリングクラブはあまり認知されていませんが、それはその顧客満足度の高さという優れた業績を考えると、一見不思議に思えます。
それでは認知度でトップのタイムズカーと、顧客満足度でトップのCARECOカーシェアリングクラブという、これらの主な違いは何でしょうか?今後は、この二つの企業に焦点を当てて分析していきます。
タイムズカーとCARECOカーシェアリングクラブ
タイムズカーとは
タイムズカーとは、タイムズモビリティ株式会社が始めたカーシェアリングサービスです。時間貸駐車場のタイムズパーキングでこちらのロゴを見たことがある方は非常に多いと思います。
2023年3月時点で、タイムズカーは14,728箇所のステーション数と38,224台の車両台数を所有しています。
CARECOカーシェアリングクラブとは
CARECOカーシェアリングクラブは三井不動産リアルティ株式会社が運営するカーシェアリングサービスです。三井のリパークでおなじみだと思います。
2023年3月時点で、CARECOカーシェアリングクラブは3,672箇所のステーション数と6,371台の車両台数を所有しており、ステーション数、車両台数ではタイムズカーより少ないものの、その数は確実に増加傾向にあります。
また、CARECOカーシェアリングクラブの特徴的な点は、初期費用や月会費が無料であることから、ユーザーに対する経済的な負担が軽減されています。
タイムズとCARECOの利用者はどんな人?
タイムズカーとCARECOカーシェアリングクラブとの利用経験がある顧客のデモグラフィックを比較分析すると、タイムズカーは幅広い年齢層に利用されていますが、40代や50代などの中高年層からの利用割合が比較的多い傾向にあります。
一方でCARECOカーシェアリングクラブは30代を中心としたやや若年層に利用が集中していることが見て取れます。
これは、CARECOカーシェアリングクラブが初期費用や月額費用を無料に設定し、初めてカーシェアリングサービスを利用するユーザーの利用障壁を低く保っていることが、この年齢層の利用に繋がっているかもしれません。
顧客の個人年収を見ると、タイムズカーとCARECOカーシェアリングクラブとの間に明確な差は見られません。それぞれの企業が採用している価格設定により、これが詳細に理解できます。
具体的には、ベーシック、6時間までの利用料金を比較すると、タイムズカーは4,290円、一方CARECOカーシェアリングクラブは4,280円と、ほぼ同格の価格帯に位置しています。このほぼ同等の料金設定が反映され、顧客の個人年収に大きな違いが生じていないと解釈できます。
タイムズとCARECOのブランドイメージは?
続いて、タイムズカーとCARECOカーシェアリングクラブのブランドイメージと比較してみます。両社とも似たようなイメージを顧客に与えていますが、微妙な違いが見受けられます。
例えば、タイムズカーには「絆・親近感」というイメージを持っている顧客の割合がCARECOカーシェアリングよりも多いことが分かります。これはおそらく、同社が有している圧倒的なステーションやタイムズパーキングの数が要因であると解釈できます。
ほかにも、タイムズの黄色い看板の存在感も要因の一つでしょう。これらはタイムズが地域と深く結びついている印象を、顧客に強く与えているのでしょう。
一方、CARECOカーシェアリングクラブには「期待感・ワクワク」というイメージを抱いている顧客の割合がタイムズカーよりも多いようです。
こちらは、同社が年会費無料プランを提供していることにより、カーシェアリングを初めて利用しやすいというユーザーにとってのアクセスハードルが低く、新規体験への期待感が反映されているのかもしれません。
さらに、CARECOカーシェアリングクラブが提供する豊富な車種、特に輸入車やスポーツカーなど、通常ではなかなか運転する機会のない車種に対する期待感や、それらを通じて得られる優越感は、この「期待感・ワクワク」や、「ステイタス・優越感」といったかなり高い割合を占めているブランドイメージに寄与している可能性があります。
タイムズとCARECO利用者の声を探る
最後に、タイムズカーとCARECOカーシェアリングクラブの消費者の声を比較していきます。まず、タイムズカーについては、「どこでも見かける」「みんな知っている」といった声が頻繁に寄せられています。
やはり、これまで見てきたようにタイムズカーのステーションとタイムズパーキングの多さとその長きに渡る事業が高い認知度を生み出しており、その結果が消費者の声として反映されていることを示しています。
消費者の中には「とりあえずタイムズカーを使う」といった方々も多く、タイムズカーがカーシェアリングの「デフォルトの選択」となっているのかもしれません。
一方、CARECOカーシェアリングクラブの顧客からは「カーシェアリングといえばカレコ」や「非常に期待感があるイメージ」といった声が寄せられています。
これらのコメントは、顧客が単にカーシェアリングサービスを求めてCARECOを選んでいるだけでなく、CARECO自体に対する高いブランドロイヤリティを示しています。
また、「期待感があるイメージ」は、顧客が現在の拡大を続けるサービスに対する前向きな期待を抱いていることを示唆しています。
まとめ
これまでの比較分析から、タイムズカーとCARECOカーシェアリングクラブは、一見すると顧客構成に大きな差が見られないように見えますが、より詳細な視点で見るとそれぞれが独自の特性を有していることが明らかになりました。
タイムズカー
圧倒的にステーションと車両の数を誇り、広範で確実なサービス提供能力を有している。
利用者は幅広い年齢層に渡るが、特に中高年層の利用が目立っている。
高い認知度から、顧客の「初期選択肢」になっている
CARECOカーシェアリングクラブ
30代を中心とした若年層からの利用が特に多く見られる
年会費が無料のため、カーシェアリング初心者にとっても手頃な導入機会を提供している。
輸入車やスポーツカーなど、様々な車種を取り揃えていることで、顧客の多様な要望に対応している。
ステーションと車両数におけるタイムズカーの優位性が印象的ですが、CARECOカーシェアリングクラブもまた、タイムズカーにはない車種や独自のブランドイメージを武器に差別化を図りつつ、ステーションの数や車両数の拡大に努めています。
これらから、カーシェアリング市場が競争的な構図が生まれつつあることが感じ取れました。
みなさんはどこのカーシェアリングを利用したいですか?
この記事を読んで「面白かった!」「参考になった!」と思っていただけたら、スキを押していただけると嬉しいです。
他にも色々なジャンルの記事がありますのでフォローもお待ちしてます!
Knowns Bizとは?
Knowns Bizは、「消費者のイマ」を知ることができる、消費者データを大量にストックしているデータプラットフォームサービスです。ブランドやアニメ、タレントなどのデータが揃っているのでデータ取得の手間なくすぐに使用することができ、デモグラや価値観の属性データと掛け合わせることで、あらゆる切り口で分析可能です。データサイエンスを扱いやすく、もっと身近にすることで、思いもよらないマーケティングの文脈を創出し、新しいマーケティングアイデアを生み出します。
詳細・お問い合わせは