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創業70周年。味も地元愛も"変わらない"!「横浜」を背負ったあのシウマイ王者を分析
こんにちは。ベトナム在住ライターの寺内です。
みなさんは“駅弁”と言ったら何のお弁当を思い浮かべますか?
私は日本で電車や新幹線、飛行機の国内線移動でお弁当を買うとき、いつも色々見て悩むのですが、結局買ってしまうのが「崎陽軒のシウマイ弁当」です。
崎陽軒のシウマイは真空パックでも発売されており、日本からお土産でそれをもらうとテンションが上がります…!
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Knowns Bizで崎陽軒のポジショニング分析を見ると、認知率と満足率ともに大手中華チェーンの「餃子の王将」「バーミヤン」「大阪王将」に次いで4位になっています。
今回はそんな「崎陽軒」について分析していきたいと思います!
≪Knowns Bizについて簡単にご紹介≫
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崎陽軒
崎陽軒の歴史
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「崎陽軒」は1908年(明治41年)に初代横浜駅(現在の桜木町駅)で創業しました。祖業は牛乳やサイダーなどの飲み物、餅、寿司の構内販売でしたが、1915年に横浜駅が移転したことをきっかけに、「匿名組合崎陽軒」を設立し、駅弁の販売を開始しました。第二次世界大戦終了後の1946年には横浜駅構内食堂をオープンしました。
1989年に新たに「点心部」を創設し、日本人の口に合う中華菓子の開発を開始しました。月餅・中華まんなどの定番商品の他、シウマイの餡を中華まんの生地で包んだ一口サイズの「シウマイまん」など、オリジナルの味の創作に挑戦し続けています。
また2020年には台湾・台北駅に海外1号店をオープンし、横浜ならではの食文化・日本の駅弁を世界へ発信することを目標としています。
崎陽軒の看板商品「シウマイ」
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1928年に発売された崎陽軒の「シウマイ(※)」は、初代社長の野並茂吉氏が当時名物のなかった横浜に何か名物を、と南京街(現在の横浜中華街)で突き出しとして出されていたシュウマイに着目したことで製造・販売を開始しました。
※崎陽軒の「シュウマイ」の表記が「シウマイ」なのは野並茂吉氏が「シュウマイ」を「シーマイ」と発音していたこと、中国語の発音に近いことから「シウマイ」になったそうです。
1950年に華やかな制服を着たキャンペーンガール「シウマイ娘」が列車の窓越しにシウマイを販売し、1954年には「シウマイ弁当」の発売を開始しました。豚肉と干帆立貝柱の豊かな風味が特長の冷めてもおいしいシウマイと、蒸気炒飯方式(水蒸気を使って炊きあげる)で冷めてももちもちのご飯、バリエーション豊かなおかずが魅力です。
崎陽軒では発売以来、変わらぬレシピ・変わらぬおいしさで定番の「昔ながらのシウマイ」を含め、現在は6種類のシウマイを通年で販売しています。他にも「いかシウマイ」や「きのこシウマイ」など、 5つの季節限定シウマイ、おせち限定・通信販売限定のシウマイを広く提供しているそうです。
利用者層分析
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崎陽軒利用者のデモグラ構成比をみると40代後半〜50代後半・60代後半が多く出ています。特に60代後半の方に利用されています。
男女比では僅差で男性が多いです。
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「崎陽軒」の7 Journeyを見てみると、未認知がやや高く、また潜在顧客ややや好意的ではありますが最近利用していない巻き戻し層が高めです。しかし駅弁はしょっちゅう買うものではないので、過去1年に1回以上という意味では巻き戻しが多くなるのは仕方ないのかもしれません。
ファネル分析では認知からの購入意向も85.8%と高く、また現在購買⇒リピート意向は98.1%とリピーターが多いようです。
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未認知がやや高めなのが意外に感じましたが、崎陽軒の利用者の居住エリアを見ると関東が圧倒的に多いです。 店舗自体が横浜を中心に関東圏に多く、その他エリアでは静岡のみに出店しているので、店舗のエリアに比例しているようです。潜在顧客も多かったことから、関東以外では静岡の4店舗しかなく、関東では認知率は78%くらいになるので、地域差が大きいようです。
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また、中部居住エリアの時系列(ファネル)分析をみると、中部だけで見ると現在購入が上昇傾向になっています。静岡の4店舗を考えると、今年3月に開通した北陸新幹線延伸の影響なのでしょうか。期間は短かったもののコラボ弁当もあり、人の行き来が盛んになって崎陽軒にアクセスできる人が増えたことが考えられるかもしれません。
https://news.1242.com/article/502463
どんな人が購入してる?
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サイコグラフィックを見てみると、個人価値観は"倹約家”"アウトドア派”"都会派”な方が多いです。
社会価値観は"ワーカホリック”"おりこうさん”“自分より家族優先”と、真面目なビジネスパーソンに多く利用されているのでしょうか。
消費価値観は"エシカル消費”に次ぎ、“ハラオチ型消費”“ノスタルジー消費”が高いです。
歴史が長い商品なので“ノルタルジー消費”が上位に来ているのは納得ですが、“エシカル消費”が高いのはなぜでしょうか。
今すぐ自社・競合の顧客構造を見てみたい方へ
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横浜市民と歩んできた「シウマイ弁当」
横浜市のシュウマイ消費額は日本一
横浜市はシュウマイの消費額日本一の都市であり、全国におけるシューマイの一世帯あたりの年間平均消費額が1,093円であるのに対し、横浜市は2,248円と約2倍以上、次いで川崎市が1,951円となっています。この要因として横浜名物として知られる崎陽軒の「シウマイ」や、中華料理のメッカである横浜中華街の存在が大きいと言われています。
出典:「うちの郷土料理」農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/35_22_kanagawa.html)
ローカルから世界を目指すため、全国展開から撤退
一時期は各地のスーパーでシウマイを売っていたことも崎陽軒ですが、2010年には撤退をしています。
当時、全国マーケットに出していたシウマイの売り上げは10億円近くあったそうです。しかし、販売員が接客をして売る必要もない分、シウマイが残念な状態で販売されるなどを目の当たりにしたことをきっかけに、目先の数字よりもブランドを育てることを大切にしようと決意し、全国展開から撤退しています。
崎陽軒はナショナルブランドをめざしません。
真に優れた「ローカルブランド」をめざします。
崎陽軒が作るものはシウマイや料理だけではありません。
常に挑戦し「名物名所」を創りつづけます。
崎陽軒は皆さまのお腹だけを満たしません。
食をとおして「心」も満たすことをめざします。
全国展開撤退中の1996年には崎陽軒本店ビルをオープンし、結婚式、イベントなどの売り上げも増えたそうです。商品、サービスの幅が広がったことにより、シウマイだけの会社から総合飲食サービス業の転換に成功。
横浜、神奈川県のローカルブランドとしての地位を確立し、ローカルから世界を目指す企業として、成長しています。
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運動会・イベントでの活躍
横浜市内の運動会では、崎陽軒の「シウマイ弁当」がよく並ぶそうです。実際に横浜に限らず、神奈川県出身の友人によると運動会や地元のイベントには「シウマイ弁当」が定番だそうです!
そして「シウマイ弁当」誕生70周年記念企画の一環子ども向け「はじめてのおべんとう」販売というものも発売されていたようです。
また学校の社会科見学では崎陽軒の横浜工場に見学に行ったという人も多々。ちなみに工場見学は一般の方でも予約可能だそうです。また横浜工場内にある、「プチミュージアムショップ」では工場でできたてアツアツメニューも食べられるそう…とても美味しそうです。
変えないことの勇気
横浜の「ソウルフード」として長年愛されている「シウマイ弁当」といえば、定番のおかずもポイントではないでしょうか。
そんな「シウマイ弁当」現在の黄金比にたどり着くまでに数々の試行錯誤があり、唐揚げをエビフライに変えたときは、“元に戻せ”の大合唱で結局1年で戻したなどのエピソードもあり、日ごろからおかずファンの支持率を察しておく必要があるそうです。
現在のバランスはほぼ完成形だそうですが、季節商品や企画弁当などを通じて、人気を見極めながらも、変えない勇気を大事にしているそうです。
ちなみに「シウマイ弁当」といえば「アンズ」ですが、「食べるタイミングが難しい」「酸っぱい」「味の主張が強い」など議論になり、過去に甘いチェリーと入れ替えたところ、不評を買ったこともあるそうです。どのおかずにもファンがいるのですね。
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また「崎陽軒」利用者の意見を見てみると、「シウマイ」「おいしい」「定番」との意見が多い中、シウマイ弁当の他のおかずやバランスに関するコメントも多かったので、シウマイに限らずそれぞれのおかずにもファンがいることに納得です。
サイコグラフィックの消費価値観でも“エシカル消費”が高く出ていましたが、「シウマイ弁当」は横浜の地域社会とともに成長をしてきた歴史があるからこそなのかもしれません。
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現在利用者のブランドイメージでも「伝統・頑固さ」に次いで、「家庭的・安堵感」「ベーシック・定番的」「期待感・ワクワク」「安心・安全」「誠実・愛着」が高く出ており、サイコグラフィックとの相関性が高い結果となっています。
1日約2万7000食売れるという「シウマイ弁当」はこの4月で誕生70周年を迎えましたが、その理由についても“横浜市民の皆様が、ずっと愛して下さっているから”だと、野並社長も仰っています。
https://news.1242.com/article/503620
Knowns Bizを使った資料を見てみたい方へ
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まとめ
「崎陽軒」利用者の特徴
・40代後半〜50代後半・60代後半が多い
・報われ待ち・モノ重視・八方美人
・真面目なビジネスパーソンに利用される
・エシカル消費・ハラオチ型消費・ノスタルジー消費の傾向
横浜のソウルフードとも言える崎陽軒のシウマイ。全国展開からは退いたものの、現在はローカルブランドとして、日本の各地域や企業とのコラボなどに入り組んでいるそうです。
台湾崎陽軒とのコラボなども行っており、「パイナップルシウマイ」なるものも!今後も崎陽軒の活躍に期待です!
筆者のひとこと
母が神奈川県生まれなこともあり、私自身小さい頃からシュウマイ=「崎陽軒」のイメージがあり、母と遠出のときは高確率で「崎陽軒のシウマイ弁当」を食べていたせいか、母と別の時でもつい「シウマイ弁当」を選びがちです(笑)。いつ食べても美味しい、安定の味です。
ちなみに崎陽軒のお弁当の売れ筋でもやはり「シウマイ弁当」がトップだそうです!
またベトナムの日本式居酒屋の箸置きで、「何か見たことあるなぁ…」とずっと思っていたこちら…
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なんと崎陽軒のお醤油入れ「ひょうちゃん」でした!(笑)
シウマイの箱に入ったしょう油入れの「ひょうちゃん」は笑った顔に怒った顔、シウマイの名脇役として親しまれています。2003年には横浜工場のリニューアルオープンに合わせ、現在は3代目ひょうちゃんだそう。期間限定ひょうちゃんも数々あり、集めても楽しそうだと思いました!(ひょうちゃんが入っているのはシウマイ商品のみで、弁当には入っていないので注意!)
またオリジナルグッズも人気で、2024年10月1日から「昔ながらのシウマイブランケット」と「シウマイ弁当ダウンマフラー」が再販されるそうです!横浜土産としても良さそうですね!
≪本記事は新しいバージョンのダッシュボードを利用しております≫
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