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ニコレッテ・クレビッツ『A E I O U – A Quick Alphabet of Love』ドイツ、母音のレッスンと恋のレッスン

ニコレッテ・クレビッツ長編四作目。60歳になるアナは全盛期の過ぎた女優で、今ではプライドの方が収入より高い。家賃も滞納しているが、下階に住む大家は寛大で仲も良い(大家は迫力のあるウド・キアであまりにも役不足)。ある日、彼女はひったくりの青年に恋をしてしまった。そして、渋々引き受けたスピーキングコーチの相手が、その青年アドリアンだった云々。題名の"AEIOU"は母音の羅列であり、アドリアンへのレッスンでも登場するのだが、"全て(Alles)はAから始まる"という言葉、そしてアナとアドリアンという名前から察するに、Aにしか興味はないようだ。映画はアナ、アドリアン、世界のすべて!みたいな感じの関係に至るまでの短い期間を描いている…わけだが、単純に"一目惚れ"!というだけしか描かれないので、二人が互いに夢中になるという一番大事な部分が繊細さに欠けて全く訴えかけるものがない。あまりにも空っぽすぎる。退屈でベタベタなメロドラマを年齢差付けて再演しただけ(ちなみに年齢差恋愛関係をMay-December Relationshipと呼ぶらしい)で、そこに満足してしまっているようだ。コンペに入ったのは地元枠だからと思いたい。ちなみに、エンディングでは竹内まりや『プラスティック・ラブ』が流れる。

・作品データ

原題:A E I O U – Das schnelle Alphabet der Liebe
上映時間:104分
監督:Nicolette Krebitz
製作:2022年(ドイツ, フランス)

・評価:30点

・ベルリン国際映画祭2021 その他の作品

★コンペティション部門選出作品
1 . カルラ・シモン『Alcarràs』スペイン、ある桃農家一族の肖像
2 . カミラ・アンディニ『ナナ』1960年代インドネシアにおけるシスターフッド時代劇
3 . クレール・ドゥニ『愛と激しさをもって』生まれ変わった"私たちは一緒に年を取ることはない"
5 . ニコレッテ・クレビッツ『A E I O U – A Quick Alphabet of Love』ドイツ、母音のレッスンと恋のレッスン
6 . リティ・パン『すべては大丈夫』リティ・パンはお怒りのようです
7 . パオロ・タヴィアーニ『遺灰は語る』兄ヴィットリオ・タヴィアーニに捧ぐ物語
8 . ウルスラ・メイエ『The Line』スイス、トキシックな家族関係について
9 . ホン・サンス『小説家の映画』偶然の出会いの連なり
11 . ミカエル・アース『午前4時にパリの夜は明ける』人生の中で些細な瞬間を共有すること
12 . フランソワ・オゾン『苦い涙』ピーター・フォン・カントの苦い涙
13 . ミヒャエル・コッホ『A Piece of Sky』スイス、変質していく男と支え続ける女
14 . アンドレアス・ドレーゼン『クルナス母さんvs.アメリカ大統領』ラビエ・クルナズと国家の1800日戦争
15 . リー・ルイジュン『小さき麦の花』中国、花と円形は愛のしるし
16 . ウルリヒ・ザイドル『Rimini』"父親"を拒絶し、"父親"となる歌手の兄
17 . ナタリア・ロペス・ガヤルド『Robe of Gems』メキシコ、奇妙に交わる三人の女性の物語
18 . ドゥニ・コテ『That Kind of Summer』カナダ、性欲過剰者の共同生活から何が見えるか

★エンカウンターズ部門選出作品
1 . アルノー・ドゥ・パリエール『American Journal』フランス、独り善がりなシネマエッセイ
3 . Jöns Jönsson『Axiom』ドイツ、嘘とパクリで構成された人生
4 . Syllas Tzoumerkas&Christos Passalis『The City and the City』テッサロニキとユダヤ人の暗い歴史
5 . ベルトラン・ボネロ『Coma』停止した"現在"は煉獄なのか
7 . Kivu Ruhorahoza『Father's Day』ルワンダ、"父親"を巡る三つの物語
11 . アシュリー・マッケンジー『Queens of the Qing Dynasty』カナダ、"期限切れ"の未来
13 . 三宅唱『ケイコ 目を澄ませて』聾唖のボクサーの日記

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