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ヒトイキ短編

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ひと息で読める、短編
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魚

ブロッコリーの匂いが部屋に充満した。
それが合図だった。作戦開始の。

僕は急いで車に乗り込んだ。

大通りを走り抜ける。
同じように、たくさんの車が走っている。

世の中のものはほとんど、魚だ。
車も鳥も、僕は魚に見える。

港に着くと、もう船が用意してあった。
「はやくしろよ。」
と、バニートウに急かされながら船に乗り込む。
こいつもまた、魚みたいな顔をしている。

「ああこれ、積んでおいてく

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そんなこと言えないけど

そんなこと言えないけど

「不安も悲しみも常に携帯していて、
だけど楽しくて仕方がなくて、目に光がちゃんと宿っているような日々がほしいだけなんだけど」とか、

「春と冬の間の夕方の気持ちとか、秋の昼間の気持ちとか、全部おんなじだと思ってたんだけどね、違うってことに気がついたんだ。
全部、違うの」とか。

ただ言いたいだけの話を、脊髄反射で話している彼はゆっくりと家具屋の電気コーナーを歩く。
どうやら机のランプが壊れて買い替

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バターいらない君へ

バターいらない君へ

今日もいつものように、町のケーキ屋の悪口を言い合っていた。

あそこは美味しいけど、バターを使い過ぎていて食べきれない。はたまた、あのケーキ屋は美味しい。レモンケーキがさっぱりとしている。
なにしろ世の中の食べものは油にまみれすぎているから、食革命を起こした方がいい。
と、彼女は決まってこの結論に至る。
そうして必ず、革命を起こすにはひとりでは無理だから、同盟を組まない?と問いかけてくる。

僕と

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愛された記憶にも、触れそうで触れないな

愛された記憶にも、触れそうで触れないな

それは、夜の空に、宇宙ステーションが肉眼で見えた日のことだ。
はたまた、朝が夕方みたいだった日のこと。

日常がごちゃごちゃしていて、整理がつけられていなかった。
が、昔からいつもそうだということも分かっていた。
そういうときは、脳にある煎餅のようなかたまりが、ぱんっと弾けそうになる。
(雪の宿だったら、弾けても雪みたいで、きれいかもしれない。)

頭の中がいつも言葉で溢れていて、うるさくて仕方な

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わたしたちへ

わたしたちへ

バナナをつまみに、ビールを飲んでいた。

最近自転車の音がすきだということに気がついたのだが、それから派生してあちこちに思考を張り巡らしていたとき、インターホンが鳴った。

隣人だった。

「空、見た?」
「見てない。なんで?」
「もう終わりだって、全部」

窓に駆け寄ると、太陽が降りてきていた。
彼と私は窓ぎわに並んで外を見た。

「ずいぶんと早いね」
「だね」

彼はさっきまで私が飲んでいた缶

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だからさ、泣いてもいい?

だからさ、泣いてもいい?

彼はいつも余裕そうだった。
歩いているときもリズムに乗っているみたいだし、話しているときも僕の目を見て、優しい顔で笑う。焦るべきときも、大丈夫だよ〜と言い笑っていた。
僕とは真反対だった。なぜなら僕はいつも早歩きだし、相手の目が見れなくて、おしぼりばかり触っている。焦るべきときは、いつだって額に汗が滲んでいた。
しかし、そんな彼には、実は余裕なんて1ミリもないことも分かっていた。だから見てしまうの

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コッペパン、半分ちょうだい。

「ウルセェ!!!!!!!
バ、ババア!!!!!!
もう、知らない!!!!!!!!」

百合亜は家を飛び出した。もちろん、行くあてはない。
ひとしきり走ると、咳き込みながら走る速度を緩め、立ち止まった。

「あーあ。またやっちゃった。」
河原に座り込み、空を見上げながら百合亜は呟いた。

"だって、しょうがないじゃない。
田中くんと付き合っちゃダメなんて、あんまりだよ…。お母さんは誤解し

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プロテクト

プロテクト

眠くて仕方がないのに、涙が溢れて止まらない夜があった。特に大きなことはない。むしろ、何もないから幸福だ。でもだからこそ、泣きたくて仕方がないのだ。こういう時はいつだって、あのドラマのせいだ。僕をこういう思考にするのは、決まってあれを観た後だったよな。一日中活動して、身体はとうに限界を迎えているから、はやく眠りたい。
息が薄くて、山にいるみたいだ。山のテントで寝ているときは、みんなこんな感じなのかも

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三軒茶屋のバーの3分間

三軒茶屋のバーの3分間

「きっと、あれですよね。一輪車に乗れる人がいいんですよね。わかりますわかります。」
と、彼女は瞳を揺らし、ちらちらと僕の目を見ながら言った。

「うんそうだね。一輪車にうまく乗れる子が好きかな。」
僕はそう答えた。

「分かりました、じゃあー

友達で。
友達でお願いします、私たち。」

彼女はカクテルの入った浅いグラスの縁を、人差し指でなぞり、それを見つめながら答えた。

友達なんてあるのだろう

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じゃあ夢を、言語化してよ

じゃあ夢を、言語化してよ

なりたいものになるべきなのに、二の足を踏んでしまうのは私だけだろうか。
キャリア支援センターに言えなかった夢を毎日のように想い続けている。
夢と言っているうちは叶えることができなくて、手に届きそうになるとそれは自然と目標になるらしいが、そんなのも適用できないくらいには、時代がすごい速さで変わっているよな?

"じゃあ夢を、言語化してよ"
なんて言われた時に、私は何て言うのだろうか。
分からないくら

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換気扇をかける

換気扇をかける

みんなにとっては当たり前で、もはや思考の一部にすらならないような事柄が、
私にとっては大きな悩みであるということが、
かねてからの私の悩みである。

ということを、煙で満ちた喫茶店でEに打ち明けると、彼女は一度「うーん」と小さく唸った。
ストローでアイスコーヒーに浮かぶ氷を2.5回ほどつついた後、時計回り反時計回りとそのストローを回した後に、「大きなって言ったけどさ」
「そんな、大きなことかな?私

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