5分の検査で守れる子供の未来がある。視力1.0の両親を持つ子の弱視治療記録(#1)
「この子、右目ほとんど見えてないみたい」
中々歩きださず運動発達の遅れを心配していた娘が、1歳半健診で指摘されたのはまさかの「視力」でした。
弱視とは、眼鏡をしても視力が十分に出ない状態のことです。
この記事では娘の弱視治療の過程とその経験から親の私が感じたことについて書きます。
声を大にしてお伝えしたいのは、たった5分の検査で守れる子供の未来があるということです。
「うちの子は、小さいモノもよく見えてるし視力は大丈夫そう」と思っているご家庭も、ぜひ読んでみて下さい。
我が家の娘も、赤ちゃん時代から床に落ちた細い髪の毛を見つけて拾ったりしていたので視力はまず大丈夫だと思っていました。
青天の霹靂だった、娘の弱視発覚
パソコンやスマホが普及する令和の時代には珍しく、私と夫はどちらも裸眼の視力が今だに1.0以上あります。
ですので、娘も当たり前に目が良いんだろうなと思っていました。
しかし娘は1歳半検診の視力項目で引っかかり、眼科の精密検査で右目の遠視が発覚。
ちなみに左目はほぼ正常で、片目だけ見えづらい「不同視弱視」でした。
不同視弱視の場合、日常は見える方の目で不自由なく生活できているので特に気づきづらいそうです。
子どもの弱視について初めて知ったこと
夫婦共に眼科に行ったことすらなかったため、娘の弱視判定を機に初めて知ることが沢山ありました。
弱視が影響するのは「目だけではない」
視覚と脳はセットで発達します。
目で見える映像により脳が刺激を受けて発達するため、見ている映像がぼやけていると脳の発達にも影響があります。
娘のように片方の目のみで見ているとそれだけ片目に負担がかかり疲れるので集中力の持続にも影響が出るそうです。
タイムリミットは「8歳」
子供の視力の完成は、6〜8歳。
おそろしいのは、それ以降に治療を行っても思うような効果が得られない場合があるということです。
逆に、早期に発見して視力の発達時期に適切な治療をすれば小学校入学前までにほとんどが日常生活や学習に支障のない程度まで回復することができるそうです。
運命を握るのは「各自治体」
治療開始時期が将来的に回復できるかの要なのですが、何歳児健診から視力が検査項目になっているかは各自治体によって違うのです。
娘が産まれた東京の区では1歳半健診時に視力の項目がありましたが、いま住んでいる大阪の市では3歳健診までありません。
自治体での健診項目になくても、生後半年以降に小児眼科で自主的に診てもらうことはできます。
早めの受診をおすすめします。
検査・治療の流れ
我が家が感じた各タイミングでの注意事項もありますので、今後受診する方のお役に立てれば幸いです。
①1歳半健診での小児科での簡易検査
1歳半健診時、小児科でスポットビジョンスクリーナーによる簡易検査を受けました。
昔のカメラのような形の機械を見つめるだけで、子供でも簡単に検査できます。
所要時間は5分程度で、準備物も特にありません。
主治医いわく、これで「目の中のレンズの焦点が合っているか」を確認できるとのこと。
娘は、右目が大きくずれているという結果が出ました。
②眼科での精密検査
小児科に紹介状を出してもらい、眼科に行きました。
同じスポットビジョンスクリーナーを使うのですが、より精密に調べるためにサイプレジンという点眼薬を刺してから検査しました。
子供の目は常にピントを合わせようと頑張っているそうです。
この点眼薬を刺して目をリラックス状態に戻すと、より正確な結果が出るとのことでした。
【注意点】
この点眼薬、結構目に染みるらしく1歳半の娘はギャン泣き。
数分あけて何度か刺す必要があり、2回目以降は羽交い締めにしながら刺しました…
ご褒美のお菓子やおもちゃを持っていくと良いと思います。
③眼鏡の制作
眼科で眼鏡の処方箋をもらい、小児眼鏡の取り扱いのある眼鏡屋さんに行きました。
我が家はこちらのアンファンさんで作りました。
【注意点】
注文してから受取まで10日ほどかかりました(※3/24更新。「1ヶ月」と書いていましたが、眼科受診〜眼鏡受取までの期間が1ヶ月で、眼鏡の注文〜受取は10日程でした🙇♀)
月イチくらいで眼鏡のメンテ(緩んだネジを締める等)が必要なので近所のお店が良いと思います。子供はよく動くのですぐに耳にかける部分がゆるゆるになります。ちなみにアンファンではレンズ交換が不要のメンテは無料でお店ですぐにやってもらえます
④補助金の申請
小児眼鏡、高かったです。
娘は遠視の度合いが強く普通のレンズだといわゆるビン底眼鏡になってしまうので、度が強くても薄くできる特殊なレンズを選んだりと課金すると4万円超でした。
しかし、9歳未満の弱視治療の小児眼鏡には補助金が出ます。
5歳未満は前回給付から1年以上後、5歳以上は2年以上後で受けられます。
また、健保による補助のほか、各自治体でも追加で補助を受けられることもあります。
我が家は補助金のおかげで実質1割負担程度になりました。
【注意点】
一度全額自費負担してから、補助金申請して入金なのでキャッシュアウトとインに時差が出ます
健保と自治体の両方で補助を受けると必要な書類が重なることがあり診断書や領収書などの原本が複数必要なことがあります。病院や眼鏡屋さんに複数枚発行の依頼が必要なので事前に必要書類を確認することをおすすめします
⑤定期検診
眼鏡の購入後は、3ヶ月おきに眼科に行ってスポットビジョンスクリーナーによる焦点の検査と、2歳を過ぎてからは視力検査もしています(大人がするのと同じ、「C」を使う視力検査です)。
なお、眼鏡によって「目の中のレンズの焦点が正しく合っている」だけでは勝手に視力は上がらず、正しい焦点の状態で「目を使う」ことによって初めて視力は育つそうです。
娘は最近、遠視の強い右目を集中的に使って鍛えるためのアイパッチトレーニングをはじめました。
こちらについてはまた別の記事でご紹介したいと思います。
1年半の治療を経て感じていること。母の気持ちを救った主治医の言葉
「ちゃんとした目で、産んであげられなくてごめんね」
眼科で目薬を刺して痛い思いをし、保育園のクラスで自分だけ眼鏡なことを疑問に思う娘を前にして、何度この言葉を呟いたか分かりません。
そんな中、娘の定期検診で眼科にかかった際のことです。
眼鏡を新しくするために1年半ぶりに例の目に染みるサイプレジン点眼薬を刺しました。
そこで、一切泣かず耐えた娘。
1歳半のときは、目薬が全部流れるのでは?という勢いで泣いていたのに。
その様子を見た主治医からの一言。
「子供はびっくりするくらい育ちますからね。心も、目もね。だからお母さん、大丈夫ですよ」
子供の成長力というのは、本当にすさまじいものです。
弱視治療を通して、私は我が子のその力を実感できる機会を通常より余計にいただいているのだと思います。
これからも諦めず、娘と共に治療に励みたいと思います。
まとめ
50人に1人の子どもに弱視があると言われています。
たった5分の検査で発見できる子どもの弱視は、早く気付けば治すことが出来る一方で治療にはタイムリミットがあります。
娘は1年半の治療で、眼鏡をかけた矯正視力が0.5未満→0.9まで回復しました。
この記事が、一人でも多くのお子さんの弱視発見や、治療に不安を抱えているご両親の安心に繋がると幸いです。
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