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1000年前も、8000年後も

清少納言と紫式部は同じ会社の先輩後輩であり、共に次期社長を狙う女性役員に仕えていた。

清少納言の仕える定子(ていし)は一条天皇の中宮。藤原道隆の娘。

当時の日本は一夫一妻ではなかった。

やがて道隆の弟 道長が自分の娘である彰子(しょうし)を一条天皇の中宮として送り込んだ。

結果、定子が皇后、彰子が中宮という異例の役員配置となった。

自分の娘が天皇の子を産めば、自身が未来の天皇の外祖父として権力を握れる。優秀な女房(高貴な女性のそばに仕える女性のこと)を用意し、一条天皇の寵愛を受けねばならぬ。

そこで彰子サロンへスカウトされたのが紫式部。
すでに定子サロンでは清少納言が人気者だった。

このパワーバランスの中で、紫式部と清少納言は必然的にライバルとならざるを得なかった。

清少納言の方が若干年上、さっぱりした性格で、見たこと、思ったことをすぐエッセイに書いた。貴重な紙を上司(定子)からいただいた喜びをこう表現している。

世の中の腹立だしうむつかしう、かた時あるべき心地もせで、ただいづちもいづちも行きもしなばやと思ふに、ただの紙のいと白う清げなるに、よき筆、白き色紙、みちくに紙など得つれば、こよなうなぐさみて、さはれ、かくてしばしも生きてありぬべかんめりとなむおぼゆる。

世の中が腹立たしく、煩わしくて、ほんのわずかな時間も生きていられそうな心地がしなくて、もうどこへでも行ってしまいたいと思う時に、ただの紙でとても白く美しいものに、上等の筆、白い色紙、みちのくに紙などを手に入れたら、気持ちがすっかり慰められて、まあいいか、このままもうしばらく生きていてもよさそうだなと思われます。

枕草子

一方、紫式部は正反対の湿度高い系で、思いをじっとり発酵させた後、書くタイプだった。

先輩が社内報インタビューで何気なく言った一言がアウティング(*)だ、マタハラだと社内ハラスメント部へメール送っちゃうタイプ。密かに妊活しているのを知っているのは先輩だけ。これは私のことを言っているのよ。

だから紫式部はブログ(紫式部日記)で清少納言のことを散々ディスってる。X(Twitter)の悪口みたいに。

*人のSOGI(性自認、性的指向)を、当事者の許可なく他の人に言いふらしたり、SNSなどに書き込み暴露すること

清少納言こそ、したり顔にいみじうはべりける人。さばかりさかしだち、真名書き散らしてはべるほども、よく見れば、まだいと足らぬこと多かり。かく、人に異ならむと思ひ好める人は、かならず見劣りし、行末うたてのみはべれば、艶になりぬる人は、いとすごうすずろなる折も、もののあはれにすすみ、をかしきことも見過ぐさぬほどに、おのづからさるまじくあだなるさまにもなるにはべるべし。そのあだになりぬる人の果て、いかでかはよくはべらむ。

(阪本訳)
清少納言は、ドヤ顔で文章の中に漢字を書き散らしてる。でも私に言わせれば彼女、漢文の知識なんてまだまだ未熟なのよ。あんな風に「私は人と違うのよ」と思い込んでいる人はやがて周りの人に比べて見劣りするようになるはず。一時期人気あったとしても、その先続かないわ。感性を売りにしてるみたいだけど、ふつーのことにも「もののあはれ!」とか「をかしき!」なんて飛び跳ねてるけど、中身はどうよ。これから先、どうするつもりかしら。

紫式部日記

1000年前の話だが、1000年たった令和のいまも、何ひとつ変わらない。

映画行こう。

JR大阪駅。天空の広場。

若手漫才コンビがステージにいて、観客集まってる。

日曜の午後。人が多い。

1000年後、ここにいる全員、入れ替わってる。ぼくも含め。そもそもこの建築物も、消えてるだろう。

でも、1000年後に生きる人たちは、ケンカしたり、ディスったり、清少納言と紫式部みたいなこと、やってるはずだ。変わらず。

映画館着いた。

ゴジラ-1.0の対策として履いてるデニムの前ボタンを外した。これでゆるくなり、しめつけないから、マシだろう。

デューン part2

part1、予習のためにアマプラで見始めたのだが、途中寝てしまい、残り2時間観てないまま、映画館に来た。

配信待つ選択肢はなかった。これは映画館で観るべき映画だと思った。

戦いの話。

主人公ポールは、あんなに可愛かったのに、だんだん勘違いを始める。
若い頃よくやる勘違いだ。全能感。オレ、何でもできる。オレ、選ばれし人。

そして最後、雌雄を決する一騎打ち。言い換えればマウンティング決勝戦。

ここまで観て、「どっちが勝とうが同じじゃねーか」と醒めてた。

そう。

戦争なんてのに聖戦はない。

要は殺人、破壊である。

朝読んだエコノミストの記事が浮かんだ。

何をどう言おうが、イスラエル、このままじゃ孤立するよ、という内容。

デューン、舞台設定は8000年未来だ。

でも、1000年前の清少納言と紫式部のように、やってることはいまと同じ。

変わらない。

戦争。領土の奪い合い。
その背景にあるのは希少資源の奪い合い。経済的理由。

そして。

支配したい人と支配されたい民衆は8000年後も、変わらず、存在する。

支配されたい民衆が存在する限り、宗教と政治が一体化すると、極めて有効に働く。

救いは、主人公の妹が母のお腹にいること。
おそらく、この後、彼女が何かしてくれる。

やれやれ、これはpart3も観なきゃなあ。配信だとだめだ。映画館の大音響で時々起こしてもらわないと。

余韻に浸りながら劇場出口に向かうゆるい坂道を歩く。何かヘンだ。デニムが落ちてくる。おかしい。

ボタン、開けたままだった。

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