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「アンビシャス」を読んで痛感した多様なステークホルダーがいる組織向けにオーダーメイドの教育プログラムを作る際に注意するべきこと

どうも森本です。これを書いている6月2日(日)に私は、エスコンフィールドに行くため北海道にきています。


ここにやってきた最大の理由は私が愛する横浜DeNAベイスターズと日本ハムファイターズとの交流戦があるからではあるのですが、それだけだったらわざわざ来ることもなかったでしょう。

もう1つの理由は、この本で描かれているようにエスコンフィールド北海道がどういった場所なのかを体で感じてみたかったからです。


エスコンフィールドから感じられる成熟社会での対話型民主主義


この本、私の周辺での評価がすべからく高かったこともあり、また、私自身が大のプロ野球好きということもあり、読んでみたのですが。

噂通り、とんでもなく面白くて、読み始めたら止まらず、夢中になって最後まで読んでしまいました。

読んでみての私個人の感想としては、「たしかにこれは野球を題材にした本ではあるんだけれど、実はたまたま領域が野球だっただけで、その本質は多様な利害を持つステークホルダーの複雑な合意形成を前提とした上で新しい価値がどのようにして生まれるのかを描いた本」というのが一番に挙げられるなと思いました。

これは本当に私が浅はかだったなと思ったのですが、ネットでの情報を鵜呑みにしていたこともあり、この本を読むまで、てっきり札幌市の秋元市長はファイターズを食い物にしようとしている悪い人間なのかと思っておりました。ですが、それは完全なる私の勘違いでした。秋元市長、勝手に悪者だと思っていてすみません。

当たり前の話ですが、改めて情報はちゃんと取り扱わないといけないなと良い機会をいただきました。

実は秋元市長も、なんとかファイターズに札幌に残ってもらえるようにとあらゆる手を尽くして、さまざまなステークホルダーとの交渉に当たったいたのです。

ただ、それでもなお移転先候補の住民などに反対派が多く、苦しみながらも何度も何度もあちこちの住民に説得を試みるも、結局、ファイターズ誘致のために必要な条件を生み出すことができなかったとありました。

最後の章では、北広島への移転が決まり、苦虫を噛みながらも、それでもなお前を向き、ファイターズの未来を応援しようとする様が描かれていました。それはもう悔しかったし、やるせなかっただろうなと思います。

結局、人間、誰だって最終的には自分が一番可愛いわけですから、自分が新たな負担を負わなければいけない時や、今あるリソースの分配については、必死に抵抗したり、主張したりするのが当たり前なんですよね。

古くからそこに根を張り、議題に対して影響を持っている人が多ければ多い領域ほど決定が難しくなります。

結局、反対派が多い場所での新しい創造よりも、反対派が少なく、支援者が多い場所に別の何かを新しく作ってしまう方が話は早いよなということを改めてそう思いました。

これは北海道の球場の話でしたが、私が住んでいる軽井沢の新庁舎でも今まさに似たような議論がされていますし、おそらく静岡県でのリニアモーターカーなども同じようなところがあるのかもしれないなとイメージが浮かんできます。

日頃、「みんなにとって納得のいく、対話型民主主義を通じての意思決定の支援をしたい」なんて偉そうに言わせてもらっていますが、対話型民主主義を本当に実現するというのがいかに難しいものなのかということを痛感しました。

いかに異なる利害を持つ人から適切に取材を行い、それを価値にするか

この本を読みながら、対話型民主主義の行く末と同じように感じたのが「取材することの重要性」です。

この本の執筆にあたって、著者の鈴木さんは、数十名の方々にインタビューを行ったと書いてありました。ファイターズの中の方はもちろん、北広島市や札幌市の方々にも話を聞いていました。

登場人物は皆、1つの壮大なプロジェクトを異なる立場から囲む方々ばかりです。当然、同じ事象も異なって見えてきます。

そういった方々の話を聞きながら、情報、意見、感情を見事に整理して、この本が描かれていて、それはもう見事な仕事だなと感心いたしました。

取材というテーマで、自分の周辺を思い浮かべると、ちょうど今週の私の仕事の中で、偶然にも複数の企業の人材育成施策として、それぞれの企業ごとに何人かの方にヒアリングをさせてもらった経験が蘇ってきました。

つい先日も、最近私のところに届く案件がとんでもなく難しくなっているという話を書きましたが、まさにその1つが、この社内の異なる立場にいるを方々からヒアリングをしながら、プログラムを作らなければいけないという点にありました。

たとえば、A専務はA専務で、見ている課題、懸念、要望があります。
同時に、B工場長はまた別の課題、懸念、要望を持っています。
それと同じような形で、人事部長さん、事業部長さん、若手の担当社員など、さまざまな人が、課題、懸念、要望を持っています。

これまでは、若手の担当社員や、せいぜい人事部長さんの話を聞きながら作ればよかったのですが、今は、もうそれだけでは、社内の稟議が通らないというケースが増え、もっぱら複数の役員の方々から話を聞かせていただきながらプログラムを作っています。

この「アンビシャス」に描かれているのは、組織も利害も異なるため、私の仕事とはまた桁違いの難しい合意形成を必要とします。

ただ、そこまでいかないまでも、個人の権利がどんどんと大きくなっていっている現代社会においては、あれほどではないですが、多少近しいところがあるのを感じます。

きっと、さまざまな方々の要望をヒアリングしながら進めていかなければ前に進まないということはたくさんあるのだろうと思います。

この本を書くにあたって、さまざまな人から取材をして書いたとありましたが、もっぱら私が行っているのも取材といえば取材だなということができることに気づきました。

教育プログラムを生み出すために必要な材料を複数の方々から話を聞かせていただきながら、取得・獲得・収集していきます。

そこで得られた材料を、さまざまな形で整理、編集しながら、また必要に応じてさらなる必要な要素を獲得しながら、プログラムを生み出しているなと思いました。

通常の私の業務では、「ヒアリング」という言葉は頻繁に使うものの「取材」という言葉はほとんど使わなかったというのが実情だったと思うのですが、今後は「取材をする」ということをより一層意識して仕事に取り組むことが重要になってくるのかもしれません。

そして、これは教育プログラムを作る私の仕事だけでなく、ありとあらゆる知的生産で「取材」つまり、創造的な活動において必要な材料・リソースを、複数の他者から得ていく活動なしには、良いものは生み出せないのではないかということを感じたという話です。

これは、今まで以上に、頭を使いながら、人の話を聴く必要性の高まりとも言えるでしょう。取材力を高めるための教育プログラムも今後、率先して開発していきたいということを思いました。

ということで、アンビシャスを読んでのエスコンフィールド体験、めちゃくちゃ勉強になりました。本エントリーでは全く触れていませんが、エスコンフィールドならではの体験がたくさんあり、これが彼らが描こうとしていたアンビシャス・大志なのかと感じると、より一層、エスコンフィールドに行った際の感動が高まるのではないかと思います。

よかったらぜひ一度、本を読んだ上で、行ってみていただけたらと思います。あと、著者と本作の主人公に位置付けられているお二人が語るこの動画もおすすめです。

今日も素晴らしい学びの機会をどうもありがとうございました。



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