あなたの思考は停止していないか?
選挙
労働組合の執行部の選挙があった。
無投票で当選が決まることの多い選挙で、今回は二人、対立候補が出て、珍しく投票で決することになった。
二人の対立候補たちは、現状から何ができ、何ができないのか、どこを目指すのかを熱く語る。
それに対して現職たちは現在の執行部チームの組織力が重要だと団結力を強く打ち出した。
私には発表された候補者たちの主張内容がとても面白く感じられた。
現職の執行委員長はこの地方支部からの出で、まぁいわば出世頭のようなもの。執行部もしっかりまとまっているがどこかの内閣と同じでお友達内閣ならぬお友達執行部であったようだ。
私の周りでも現職を強く推す声がはばかりなく聞かれ、「地元からなんだから推すのが当たり前、よそへ持っていかれてどうするんだ」的なことを堂々と言う人もいた。
争いごとの種
対立候補は他支部の出である。主張内容はコロナによる影響で悪化する労働環境と大きく下がった収入をどうやって改善していくのか、これまで執行部がしてきたことの無力さにしびれを切らしての立候補だったようだ。
国の選挙や地方自治体の選挙でもそうなんだが地盤という考え方がある。 「己の住んでいる地方だけ、自分たちだけに益がもたらされれば良い」という考え方だ。
世の中の争いごとはそもそも「その考え方」から始まるのではないのか。
少し考えればわかりそうなものだと思うのだが、そこを堂々と主張されると参ってしまう。
国の選挙であれば「全国民」のことを、組合の選挙であれば「全社員」のことを考えた政策、方針を打ち出すのが当然で、そのための選挙であるはずなのに。
いや「全」というのは難しいのかも知れないが、ごく一部の者達だけが利益を得る為のモノではないはず。これは政治的な主張ではなくごく当たり前のことだと思うのだが。
そして、
結果は現職たちの、3倍近い得票率での圧勝となった。
具体的な政策は何も言わず、組織の力と団結力を売りに地元をアピールして現状維持を勝ち取った。
思考停止の罪悪
なにをするかがハッキリ見えない人たちの団結力ぼど怖いものはない。
目標や目的意識もないままに周囲の人に言われるがまま、何となく良いような感じのことを行う。
何となく日々しなければならないような事をする。
これまでしてきたことと同じように流れの中で行動する。
若いうちはなかなか目標が見つからないとか、人生の意味がわからないとかいろいろなことで悩んだりするかも知れない。
悩んで探し求めてわからないままに大学に行き、就職をし、また悩み、そんなこともあるだろう。
個人としてみれば、その人の行うことの結果はその人が刈り取るのだからそれはそれで良いだろう。その人が思う通りの人生を行くのだ。
ただ、目標も目的も理由さえもよく考えようとしないままの人々、思考停止した民衆が、この世界を動かす大きな力となって、様々な諍い、争い、戦争を惹き起こしていることを知っておいて欲しい。
何を目指すのかを語らない、内的にはあるとしても明らかにしない現職の執行部に、応援する人たちは何を見ているのだろう?
ここ数年コロナ禍を理由に下がり続ける給料と、悪化し続ける労働環境に対して、何をしてきた? そしてこれからどうするの?
何もしてきたことを語れないような、先の目標も顕かにできないような組合執行部の組織の力、団結力に、何を期待していると言うのだろう。
現代のアイヒマン
周囲の同調圧力に意識的にせよ無意識的にせよ屈してしまう弱さは無知から来るものなのか、思考停止から来るものなのか。
現職派が当選したことや、そこに投票したことをどうこう言いたいのではない。
私が言いたいのは「あなたの思考は停止してないか?」ということだ。
そんなあなたの、その行動が、全体主義的な思想となり、現代のナチス、現代のアイヒマンとならぬように祈るばかりだ。