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【国語の教科書って面白い】作られた「物語」を超えて 光村図書 中3
(この記事は約7分で読めます)
こんにちは!
私はいま、「国語の教科書読書会」という、小中学生向けのイベントの準備をしています。
その一環として、noteでも
国語の教科書って実はこんなに奥深くて面白くて、私たちの日常とつながっているんだー!
ということを、感想文を書きながら伝えていこうと思います。
第一回目の単元は、中学3年生で習う「作られた『物語』を超えて」です。
まずはあらすじを簡単に紹介します!
あらすじ
概要
・19世紀、初めてゴリラを見たヨーロッパの探検家たちは、ドラミングを戦いの宣言だと勘違いして恐怖した
・やがて作られた映画「キングコング」により、ゴリラは好戦的で凶暴な動物だという誤ったイメージ(=「物語」)が人々の間に広まった
・その誤ったイメージのために、ゴリラはハンターによって射殺されたり、凶暴な怪物として見世物にされたりした
筆者の主張
・人間は、ある印象を基に「物語」を作り、それを仲間に伝えたがる性質をもっている
・そのため最初の話が誤解によって作られていると、気づかないうちにそれが社会の常識になってしまうことがよくある
それが戦争の原因になるなど、人間社会でも悲劇を生んでいる。
・このような誤解と悲劇を避けるためには、二つのことが重要だ。
一つは、自分勝手な独りよがりな解釈を避け、常識を疑うこと。
もう一つは、自分を相手の立場に置き換えて、考えてみる視点を持つことだ。
以上が教科書のあらすじです。
皆さまは、どんな感想を思い浮かべましたか?
私の感想(教科書を自分ごとにしてみる)
■人は「物語りたがる」生き物なんだ…!
この作品を読んで真っ先に思い出したのが、かつてのアルバイト先※1の社長の言葉でした。
※1 不登校、ひきこもり、高校を中退された方等を学力・メンタルの両面でサポートする「キズキ共育塾」という学習塾
人は大きな挫折を経験した時、それを無意味なもの、無価値なものと思いたくないんだ。
だから「あの時に〇〇という出来事があったから、今の自分がある」みたいに、物語を紡ごうとする。
本当にそうかは分からないよね。
それでも、因果関係があると信じようとする。
人は、物語を紡ぐことによって自分の人生を肯定し、自信をつけ、困難を乗り越えることができる。
だとしたら僕らは、生徒さんたちに
「どんな物語を描かせることができるか?」
ということを、考え続けていくべきだと思うんだ。
■私も「物語ってる」
この話を聞いて衝撃を受けたことを、今でも覚えています。
・前の恋人にフラれたから、今の恋人と出会えた。
・上司に厳しく指導されたから、苦労したぶん成長できたな。
・しばらくパンばっかり食べてたから、久しぶりに食べるおにぎりはおいしいわ。
私も、〇〇があったからこそ××が起きた、という因果関係で結ばれた「物語」をたくさん作ってることに気づいたんです。
でも果たして…そこに、本当に因果関係が存在するんでしょうか?
・前の恋人と出会わなくても、(運命的に)別の形で今の恋人と出会ったかもしれない
・自分の成長は上司の厳しい指導のおかげではなくて、陰で支えてくれた家族のおかげかもしれない
・今日おにぎりを食べておいしいのは、たまたま米を食べたい気分だったからかもしれない
幸せに生きていくための生存スキルとして、私たちの脳には
「どうにか因果関係を見出したい、物語りたい!」
という本能が備わっているんじゃないか?と思いました。
(これについてはもっと面白い話もあるので、記事の最後に参考文献を載せます! ※2)
まとめ
人は「物語りたがる」生き物。
中学生でも高校生でも、自分の体験からそれを感じることができると思います。
挫折を味わった時、あなたはそこにどんな「物語」を作ったことがありますか?
自分の体験を振り返ってみると、この単元の面白さをリアルに感じることができると思います!
参考文献など
(※Amazonアソシエイトを利用しています)
〇著者(山極寿一 氏)による教科書の解説
※1安田祐輔 『暗闇でも走る』発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由 (講談社、 2018)
p.164に、この記事の元になったエピソードが描かれています。
※2玉樹 真一郎 「ついやってしまう」体験のつくりかた――人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ
ゲームデザイナーは、どんなことを考えながらゲームを作っているのか?
具体例を挙げながら、体験デザイン(=UX)の視点から分かりやすく説明されている本です。
物語りたがる=「つい想像したり、因果関係を結び付けてしまう」という人間の脳の性質は、ゲームの体験デザインにも応用されています。
マリオが右を向いている理由、ドラクエ5でビアンカかフローラを選ばなくてはならない理由…ゲームデザイナーはこんなに深く、科学的に考えてるの!?と心から驚きました。
「ゲーム」というものの概念が変わる一冊です。
試し読みもできますので、興味のある方はぜひ読んでみてください(^^)