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少年刑務所を見学してきました④(最終)

こんにちは!
今日は「函館少年刑務所スタディツアー」のレポート第四弾です。
これが連載最後の記事です!


⑥質疑応答で出た質問(後半)

刑務所や受刑者の方の様子について、ツアー参加者が職員の方に質問をしました。
その後半部分を紹介します!

質問4:現場で感じる課題は?

職員:とにかく、受刑者と1対1で話す時間が圧倒的に足りません。
精神的な問題を抱えた受刑者など、もっときちんと話を聞いてあげたい。しかし予算と人員の都合上、それは難しいです。

質問5:医療的なアプローチをしている?

質問者:クレプトマニア(=依存症的に万引きをしてしまう人)などの加害者は、「悪いことをした」と認識できていないことが多いです。そういう人たちが立ち直るためには、医療的なプログラムが必要だと思います。
刑務所ではどのようなプログラムを提供していますか?

職員:福祉系の専門職員が何度も面談を繰り返します。
その中で少しずつ、自分のやったことを客観的に振り返ることができるようにしていきます。

質問6:受刑者が金銭感覚を取り戻す方法は?

質問者:特殊詐欺などで一度200万、300万と稼ぐのを経験してしまうと、普通の仕事の給料で満足することが難しくなりそうです。
金銭感覚を正常に戻すためのプログラムは実施していますか?

職員:函館少年刑務所ではそういうプログラムは実施していません。
でも刑務所によっては、受刑者に自分の家賃や生活費などを計算させることで、金銭感覚を1から教える所もあります。

クレプトマニアなど万引きの常習者には、万引きの損害額を計算させたりもします。
このあたりは、各教官が個人で取り組んでいます。

質問7:刑務所として、社会(=私たち)に伝えたいことは?

名古屋刑務所の受刑者暴行事件があってから、刑務所の環境は劇的に変わりました。受刑者を「さん付け」で呼ぶようになったりです。

さらにこれからは懲役刑がなくなり、拘禁刑に統一されます。
刑務所が「刑務作業(=懲役)をさせる場所」ではなくなるんですね。
現場としては「どうやったらいいの?」というのが正直な気持ちです。

懲役刑から拘禁刑。つまり「作業をさせるための刑」から「社会に返すための刑」に変わりました。
これは、刑務所だけでは絶対にできません。受刑者の方たちが出所した先…社会の中でもやらなきゃいけないことだと思います。

だから、社会の中で生きる皆さんにもご協力いただいて、一緒に考えていただきたいと思っています。

⑦育て上げネットからの3つのお願い

ツアーの最後、育て上げネット代表の工藤氏からお話がありました。
罪を犯してしまった人が立ち直るために、私たちができること」について書いて、この連載を終わろうと思います。

お願い①|刑務所や職員の方たちの努力を知ってほしい

私たち(=育て上げネット)が刑務所を出所した方たちの支援をやっていると、いろんな方から「社会のために意義のある活動をしてますね、偉いですね。」と言葉をかけてもらえます。

でも、私たちがこんなことをできるのは、刑務所の中で、受刑者の方たちと一生懸命向き合っている人達がいるからなんです。
私たちは「10年見てくれたあとを継いでいる」だけなんです。

刑務所の方たちの存在なしには、私たちの活動は成り立ちません。
刑務所の外で活動している私たちだけでなく、刑務所の中で頑張っている人たちのことを知って、応援してほしいです。

お願い②|「中立の人」になってほしい

日本は、犯罪被害者への支援が薄い国です。そういう国で加害者支援をしていると、辛辣なことをかなり言われます。

でも、私たちは加害者だけを重視したいわけではないんです。
被害者支援も、加害者支援も、どっちも大切です。
この「どっちも大切だよね」という人が、日本には非常に少ないです。

「被害者支援も加害者支援も、どっちも大切だよね」
このツアーに参加してくださった皆さまが、そういう「中立の人」になってくださったら、とても心強く感じます。

お願い③|「刑務所に行ったよ」と周りの人に伝えてほしい

このツアーが終わって家に帰ったら、ぜひご家族やご友人に「刑務所の見学に行ってきたよ」と伝えてほしいです。
世の中には、刑務所に入ったことを隠して生きている人がいるからです。

皆さまが話すことで、そういう人が「どうしてそんな所に行ってきたの?」と聞いてくるかもしれません。
そうしたら「ちょっと興味があって」みたいに話してあげてほしいんです。

そうするとその人は「あぁ、今まで刑務所にいたことを隠してきたけど、この人になら話してもいいかもしれないな」とか「自分みたいな過去のある人間に関心を持ってくれる人がいるんだ」と思うはずです。

それは、刑務所に入った経験のある人の大きな心の支えになります。

⑧少年院・少年刑務所を見学してみたい人はこちら!

認定NPO法人育て上げネットは、少年院を出院した子どもたちを支援するためにクラウドファンディングを行っています。
クラファンの寄付者は、スタディツアーに優先的に参加することができます。

次回の行き先は東北少年院で、申込期限は10月3日(先着10名)です。

少年院を出院した子どもたちに寄り添い、更生自立を支え続けます。
自立のための道は長く、時間がかかります。私たちは少年たちが必要とする時間を、必要な分だけ彼らに寄り添いながら、彼らの歩みを支えていきます。
未来を担う子どもたちの更生自立をともに支えてくださる仲間を募集します。

クラウドファンディングのトップページより抜粋

おわりに|「受刑者の人権を守るべき」って、どういう意見?

スタディツアーを通して私が一番考えさせられたのは、受刑者の人権についてでした。

教育の仕事をしていると、どうしても優しい発想になります。
刑務官が受刑者を「さん付け」することも、このツアーに参加するまでは賛成でした。

でも、実際に刑務官や受刑者の方の姿を見て、そんなに簡単なことではないと分かりました。

語弊を承知で言うと、受刑者の中には「怖い人」もたくさんいます。刑務官が厳しく接しなければ、刑務所の秩序はあっという間に崩れると思います。

受刑者の人権を守るべき。それは確かにそうです。
でも、

・「人権」とは具体的に何なのか?
・具体的にどうしたら刑務所の「規律」と両立できるのか?

というレベルの解像度で考えないと、理屈倒れの、優等生の意見になってしまいます。

私は「受刑者にもっと教育を!」みたいにフワッとしか考えられていなかったので、すごく反省しました…。

子どもに関わる職業の方や教育関係の方には、ぜひ少年院や刑務所の見学ツアーに参加してほしいです。

社会の見方が変わります。おすすめです!!

追記:

書く機会を逃してしまったんですが、このツアーはVoicyパーソナリティ木下斉さんのプレミアムリスナー枠で参加しました。
抽選だったので、めっちゃ頑張って志望動機を書きました!

ここ20年の若者の環境(特に経済面)の変化や、少年院に入ってくる若者の質の変化、若者支援の歴史が学べます。

冒頭部分は無料なので、興味ある方はぜひお聞きください!

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