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少年院が「最後の砦」と呼ばれる理由 -東北少年院を見学してきました②-
こんにちは!
今日は前回の続きで、「東北少年院・青葉女子学園スタディツアー」について書きます。
少年院は「最後の砦」
少年院は(更生の)「最後の砦」と呼ばれているそうです。
「砦=すごく重要なもの」というイメージはできますが…具体的にどう重要なのかは、よく分からないですよね。
でも今回少年院の中に入ってみて、少年院が「最後の砦」と呼ばれる理由が分かりました。
今日はそのことについて、図解を交えながら説明します!
図解でわかる!日本の少年司法制度
前の記事で書いたように、警察に補導されて家庭裁判所に送られる少年の数は約3万7,000人でした(令和5年)
このうち、少年院に入ったのは約1,300人。たったの3.6%しかいません。
なぜこんなに少ないのかというと…補導されてから少年院に入るまでには、さまざまな分岐が存在するからです。
この分岐について、東北少年院で聞いた話を図で解説します!
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警察で補導…4万1千人
非行を疑われる少年は、まずは警察や検察で簡単な調べを受けます。家庭裁判所に送致(そうち)…3万7千人
年齢や非行の内容、家庭環境などを考慮するため、事件が家庭裁判所に移されます。
検察ではなく、家庭裁判所調査官が事件の聞き取りなどを行います。少年鑑別所(かんべつしょ)での検査(必要に応じて)
家庭裁判所の判断で、少年を隔離し、医学・心理学的な検査を行う場合があります。非行の背景や少年の資質を、専門家が詳しく調べるための施設が少年鑑別所です。
主に以下のケースがあります。
・身体拘束が必要…逃亡や証拠隠滅のおそれがある、住所不定など
・緊急保護が必要…自傷、家族からの虐待
・鑑別上の理由…外界(=交友関係など)と遮断した観察が必要な場合審判(家庭裁判所)
裁判官が、「保護観察にするか?少年院に送るか?」「そもそも処分が必要ないか?」などを決定します。
ここで不処分(7,000人)や審判不開始(1万6,000人)となるケースが多いため、最終的に少年院へ進む人数が少なくなります。
※1 不処分…審判の結果、処分をしなくて良いという決を下すこと。
※2 審判不開始…審判自体を行わないこと。
→両方とも、「警察や裁判官などの働きかけによって反省し、更生のめどが立った」と判断されるケースが多い。少年院送致(そうち)
・家庭等の環境が悪く、社会での更生(=保護観察)が困難
・集中的な指導が必要
と判断された場合、少年院へ入所することになります。
どんな場合に少年院に行くのか?
少年院では手厚い保護を受けられるメリットがある反面、社会から隔離されるというデメリットもあります。
退学になる可能性がありますし、1~2年入院すれば人間関係が切れてしまいます。家を借りるのも、就職するのも非常に難しくなります。
そのため、裁判所としてはできる限り、社会の中で更生させたいわけです。
だから「保護観察」「審判不開始」「不処分」という決定が多いんですね。(合計で約3万2,000人。全体の85%)
逆に考えると…
退学など大きなデメリットがあっても、少年院に入院させた方が良い
と判断された人だけが、少年院に送られるわけです。
法務教官の先生のお話では、
・家族や親族がほとんど犯罪者
・家族からの虐待
・恋人が麻薬の売人
・薬物がやめられない
・深刻な自傷行為がある
のようなケースが多いようです。
つまり…一人では到底まともな生活に戻れないような過酷な状況にいる少年を、リスク承知で無理やりにでも保護する必要がある。
そんな場合に「少年院送致」という処分が下されるんですね。
少年院が「最後の砦」と呼ばれる理由
これまでの流れを踏まえて、少年院が「最後の砦」と呼ばれる理由を説明します。
少年犯罪の流れを整理すると、以下のように分岐していきます。
1.非行あり
↓
2.家庭や学校が対応
↓
↓更生できず
↓
3.家庭裁判所に送致…警察や裁判官が対応
↓
↓更生できず
↓
4.保護観察処分…保護観察官が対応。社会の中で更生を目指す
(=デメリットの小さい手段)
↓
↓更生できず
↓
5.少年院…法務教官が対応。社会から隔離して集中的に更生を目指す
(=デメリットの大きい手段)
↓
↓更生できず
↓
6.刑務所…更生ではなく、罰を与えることが主目的の施設
=更生が格段に難しくなる
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少年院の前と後では、フェーズが変わってしまうんですね。
少年院でダメなら、もう刑罰のフェーズに移らざるを得ない。
前回の記事でも、東北少年院の中に入って一番驚いたのは、刑務所との雰囲気の違いだと書きました。
少年院と刑務所とでは、厳しさの度合いも人間関係も、まるで違います。
日本の少年司法制度において、少年院は「更生の最終手段」という位置づけになっています。
そういう意味で、少年院は更生の「最後の砦」と呼ばれています。
今日のまとめ
・少年院は、更生の「最後の砦」と呼ばれている
・補導されて家庭裁判所に送られる少年の人数は、約3万7,000人
・そのうち、少年院に入るのは約1,300人(たったの3.6%)
・少年院に行くことはデメリットも大きいため、約85%は社会の中での更生になる(保護観察 / 審判不開始 / 不処分)
・少年院は、周囲に悪い人しかいないなど、極めて困難な環境にいる少年の人間関係を断ち切って手厚い教育を行う施設
・少年院までは「更生と教育」のフェーズ。これでダメなら「刑罰」のフェーズに切り替わってしまう
・少年院は「更生の最終手段」という位置づけ(だから手厚い)
→「最後の砦」と呼ばれている
次回予告
次回は、少年院の更生プログラムについて解説しようと思います。
少年院で行われる教育は多岐にわたっていて、義務教育のような教科の勉強から、対人関係のトレーニング、職業指導、運動会や文化祭など…学校のようなバリエーションがあります。
これらのプログラムは3級~1級に分かれていて、定期的に成績評価があったり、級によって院内の待遇が変わったりもします。
少しずつ具体的な話に迫っていくので、次回も読んでいただけると嬉しいです!
ツアーに参加したい方へ(再掲)
今回のツアーは「認定NPO法人育て上げネット」という団体が主催したものです。
月額制のクラウドファンディングに参加すると不定期で見学ツアーのお知らせが届くので、ご興味ある方はぜひ一緒に応援しましょう!!
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