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静 霧一/小説
2021年10月22日 23:29
「みんな持ってるもん」この言葉で、私は何回親を困らせただろうか。「よそはよそ、うちはうち」と一掃され、何度も悔しい思いをしたことを未だに覚えている。気づけば、その言葉をいつの間にか言わなくなった自分がいる。ようやく、「よそはよそ、うちはうち」という言葉の意味を理解したのかもしれない。子供のうちはまだ可愛い駄々こねで済んだかもしれないが、大人になると大変である。「みんなが言うなら
2021年10月8日 22:00
夏の夜空に咲く大輪の花———きらきらと火花が撥ね、夜のキャンバスに動的な芸術が咲き誇る。猩々緋、菖蒲色、群青色に梔子色。草花にはないその配色は、人工物たる芸術の最たるものである。花火は”散る“と言うのだから、それはもう職人の息吹が込められ、血が通っている生命そのものだ。まるで蝉の幼虫のように、羽化をまだかまだかと望み、そしてようやく外へと出ると、小さな心臓に鞭を打ち、生命を涸らしなが