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随筆・日記
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2024年3月の記事一覧

【朔 #63】瘤、鰡

【朔 #63】瘤、鰡

 恐慌、
 投降、不凍港。
 小川軽舟『無辺』(ふらんす堂)再読。
 瘤、瘤、鰡。
 法螺。
 洞穴からのろのろと出てきた千手観音が火を置く。
 奥、億。

【朔 #62】今は暇

【朔 #62】今は暇

 手帖を開いても、そこに、和、多、詩、は居ないし、鷹が来ても舟の優しい厳しさを知っただけだった。
 歯は軋み、顎は軋み、また歯の不安が増大中。
 評を仕上げ、評を送る。あと一ヶ月分残っていて、五月以降は連載の締切はない。五月末の原稿が一本。今のところ、上半期の締切はこれだけになった。こいつが一番難敵だ。鏡無しで己を視て、それは雲の粒子から光を見るようなものだけれども。この原稿のこともあり、一昨日(

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【朔 #61】寄居虫、……は違うから

【朔 #61】寄居虫、……は違うから

 気になり始める貝の種類。思い出せる貝を先ず列挙。桜貝、蛤、浅蜊、蜆、硨磲貝、赤貝、子安貝、烏貝、栄螺、鮑、田螺、常節、北寄貝、馬刀貝、馬珂貝、寄居虫、……は違うから。
 これ以上は思い出せない。命はひとつなのかもしれないが、殻は裏返る。輾転反側。
 鯨の通った入海に神の小指が聳え立つのを、見たか。見たな。よし。
 目覚めれば、きっと鷹が来ている。そして、手帖を開くのだ。久しぶりに。

【朔 #60】続報、私信Σ

【朔 #60】続報、私信Σ

 続報、私信Σ。M氏に原稿を送信しました。作品の質が不十分であった場合、差し戻していただいて構いません。
 くくく、空腹の、くくく。蝶の口に歯が無い。顎が無い。

【朔 #59】ペリカンが群れている

【朔 #59】ペリカンが群れている

 歯の不安は一周した感じ。まだ時々、襲ってくるし、まだ、違和感があるけれども、それ以上に処理せねばならないことが多い。
 菅原道真「遊覧偶吟」の一節。

 この「不傷/傷まず」に宿るぬらぬらとした光を百千鳥(谺して山ほととぎすほしいまま/杉田久女)、風に教えてやりたいような。
 なにかを、惜しむことがない、者に、この、金の、門をくぐることは、できない。ペリカンが群れている。

【朔 #58】和、多、死、に足りなかったのは、らら、光、光の裸

【朔 #58】和、多、死、に足りなかったのは、らら、光、光の裸

 和、多、死、に足りなかったのは、らら、光、光の裸。
 裂くべし。
 今日はやるべきこと多く、やりたいこと無し。

【朔 #57】ただ一行になりなさい

【朔 #57】ただ一行になりなさい

 十代の作とは思えない、二十代の作とは思えない。
 それだけ、クオリティを褒めていただいていると思うと同時に「あっ、新鮮さがないということか」とも。
 神馬よ、天馬よ。
 林檎の花が散ってゆく。
 海馬よ、絵馬よ。
 千行を駆け抜けて、突き抜けて、あなたは、鉈は、菜は、田は(べたべたに田も菜の花も照りみだる/水原秋櫻子)、ただ一行になりなさい。

【朔 #56】それでいいんだ、蛍なんだ

【朔 #56】それでいいんだ、蛍なんだ

 二日前(二〇二四年三月二十一日)、火傷を負う。右前腕に熱せられた油が跳ねてきて、小さな滴であれば良かったのだがそれなりの量を受けてしまった。油が垂れる形に火傷が広がり、水脹れ、水が滲み、結構重度かも。痕は確実に残る。
 今年は本当に不幸が続く。真剣に先ず、神頼みをするべきかもしれない。
 荒ぶ、荒む、遊び、遊み。
 詩篇に手を入れる。これは火傷しないが、裂傷の危険。少し行数が膨らんだが、火傷の影

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【朔 #55】朗報、私信Σ

【朔 #55】朗報、私信Σ

 朗報、私信Σ。詩が完成。一応、二三日寝かせて、推敲を行います。題はまだ未定。

【朔 #54】小雨が首筋にかかるようなバイブレーション

【朔 #54】小雨が首筋にかかるようなバイブレーション

 今日(二〇二四年三月二十日)は能。初能。初狂言。狂言は「無布施経」、能は「紅葉狩」。
 能について。かつて横尾忠則のとあるドキュメンタリーで瀬戸内寂聴が脚本か何かを書いた能「夢浮橋」のワンシーンを観たことがあり、それが非常に印象的だったので今回の観劇に至った。そのシーンとは、衣を脱がされて白絹に赤い袴だけになる女、それは能の世界ではヌードなのだという、脱がされる時に引っかかったのだろうか、女役が

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【朔 #53】紅葉の軋みを知りなさい

【朔 #53】紅葉の軋みを知りなさい

 霞の質量、朧の質量。
 須磨、多摩、好摩、好摩。
 須磨、奮起する心霊の摺足があたたかかった。買った。
 痙攣する小面と白装束はヌード。紅葉の軋みを知りなさい。
 憾み、魔魅、太陽の黒点に仄かに香るキャラメル。飽食は罪、或はそれ以下の豚、山羊。

【朔 #52】成分表が止まらない

【朔 #52】成分表が止まらない

 成分表が止まらない。それが石蓴と昆布と若布であって、浜風と浦風の接合面に抱擁していたい。能楽の心はこのような漂い、絡まり、糞(まり、鞠、毱)、手枕の上に死顔があるのです。数字が、必要です。大変だ、大変。改変だ、開閉。遥か、とほしろし。

【朔 #51】誰が落としたミモザの枝よ

【朔 #51】誰が落としたミモザの枝よ

 誰が落としたミモザの枝よ。
 今日(二〇二四年三月十七日)は千里中央に出没。春雨。傘がゆきかよう。情。
 昨夜(二〇二四年三月十六日)の中田満帆主宰歌誌『帆』のツイキャスにおいて、話、他、時、が言及される。次号には非常に力強い批評が載るのでお楽しみに。連作も寄稿。

【朔 #50】金属的な音さえも夕永し

【朔 #50】金属的な音さえも夕永し

 吉増剛造の直筆を眺めた眼が東風にさらされて、夕霞を海藻の採決。石蓴が見たかった。涸河(カレ、カハ、……)に仏と踊り子が並んでいた。その上で舞うことはできても詩を書くことはできないから、原稿用紙をひろげるのは諦めて、やはり霞へ、霞から朧へ。夕月の、最低限の眠りを妨げたい。
 ブロンズィーノ、
 ラファエルロ、
 あぁ、金属的な音さえも夕永し、明かし。
 毎日のようにあなたは、環、為、死、の虚像を正

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