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【朔 #50】金属的な音さえも夕永し

 吉増剛造の直筆を眺めた眼が東風にさらされて、夕霞を海藻の採決。石蓴が見たかった。涸河(カレ、カハ、……)に仏と踊り子が並んでいた。その上で舞うことはできても詩を書くことはできないから、原稿用紙をひろげるのは諦めて、やはり霞へ、霞から朧へ。夕月の、最低限の眠りを妨げたい。
 ブロンズィーノ、
 ラファエルロ、
 あぁ、金属的な音さえも夕永し、明かし。
 毎日のようにあなたは、環、為、死、の虚像を正立させ、屹立させ、挙句、萎える(黄に紅にカンナの乱れ四肢萎ゆる/藤田湘子)墜落睡眠は恋猫の声ではなく鴉の鶏鳴もどき。それでも、磯巾着。石蓴を掻くうちに声はどんどん増えてゆく。塩垂るる髪に鼻を押し当てるとはっきりわかるのは聖性の単純な逆転、その作用について。
 サンティ、サンティ、
 笑いましょ。

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