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「うさぎ先生と学ぶ!日常の小さなクエスト、ゲーミフィケーション」

こんにちは!
ゲームをしている時って夢中になってますよね!今回はそんな夢中になる様な楽しさを活用するお話です!


●今回のテーマ
ゲーミフィケーション
(Gamification)とは、ゲームの特性や要素をゲーム以外の領域(例えばビジネス、教育、健康管理など)に取り入れることで、参加者のモチベーションや行動意欲を高める手法を指します。単なる遊びではなく、ゲームの楽しさや達成感を利用して、特定の目的を達成するように促すのがポイントです。

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日常にクエストを発見する

 薄暗くなりはじめた秋の夕刻、マンションの小さな玄関で靴を脱ぎながら、ユキはふっとため息を漏らした。社会人二年目、勤めているのは中小企業のマーケティング部。だが、今日も「販促企画」に行き詰まり、上司からの期待に応えられない自分に、もどかしさを感じている。

ゲーム理論に似ていますよね

「ただいまー」とユキは小声で呟く。彼女が住むのは一人暮らし用のワンルームだが、実際にはもう一匹、部屋に住人ならぬ“住兎”がいる。
 その名は「うさぎ先生」。真っ白な毛並みにクリクリした目、そしてとろけるようなモフモフの体躯。彼はユキに拾われたのだが、実は元大学教授であり、AI・マーケティング・心理学の専門家。それが何らかの闇組織の策略でうさぎに変えられてしまった――という不思議な背景を持っている。
 もっとも、そんな奇妙な設定も、今のユキにとっては「日常」の一部だ。仕事で疲れた彼女は、部屋の中に視線を走らせ、テーブルの上にちょこんと腰掛けているうさぎ先生を見つける。

「おかえり、ユキちゃん」
 低く落ち着いた声が、うさぎの口元あたりから響いてくる。その声は教授らしく知的で、どこか懐かしい温もりを帯びている。マーケティング界の伝説的存在だったという彼が、今はこうしてユキの部屋で、彼女を見守り、時に助言を与えてくれる。不思議な縁だ。

「ただいま、先生……はあ、今日も何もいいアイデアが出せなかったんです」
 ユキはカバンをソファ脇に置き、コートをハンガーにかける。小さな部屋には、紅茶の香りがうっすら漂っていた。どうやら先生はユキが帰るのを待って、こっそりケトルを使ったらしい。

「販促企画、まだ行き詰まりかい?」
「はい。上司はもっと顧客を楽しませつつ、購買意欲を上げる何かが欲しいって言うんですけど……何をどうすればいいのやら」

 ユキはふっと肩を落とし、床にぺたんと座り込む。外は薄暗く、窓の外には都心の喧噪がかすかに聞こえる。このマンションは古く、小さなベランダ越しに見える街並みがどこか懐かしい。
 そんな空気の中、うさぎ先生は軽く毛づくろいをしてから、意味ありげに言う。

「ユキちゃん、マーケティングには人の行動を変える仕掛けが必要だ。それを楽しく導くために、ゲームの構造を応用する手があるよ」
「ゲーム……ですか?」
「そう、ゲーミフィケーションと呼ばれる手法だね。人はゲームっぽい要素があると行動を続けやすくなる。ポイント、レベルアップ、称号……それらを応用すると、顧客が商品に親しみやすくなるんだ」

 ユキは首をかしげる。
「でも、ゲーム要素って子供っぽくないですか? 仕事なんだし、もっと真面目な雰囲気で……」
「いやいや、ゲームは決して子供じみたものではないよ。人間は誰でも『達成感』が欲しい。小さなクエストをクリアしてポイントを得る、それが続くと行動のモチベーションが高まるんだ。試しに日常でやってみたらどうかな?」

ゲームの要素を取り入れていくイメージ

「日常で……?」
「たとえば、スーパーへの買い出しをクエストにしてみるんだ。必要なものをリストアップし、それぞれを達成するたびに自分にポイントをつける。合計ポイントが一定数に達したら、自分に小さなご褒美を与えるとか。試してごらん」
 うさぎ先生は、まるで学部生を導く教授のような口調で、しかしどこか面白がっているような雰囲気で続ける。

 翌朝、ユキはいつもより少し早く起き、先生のアイデアを試してみることにした。
 朝ごはんを作ることを「モーニングクエスト」と名付けてみる。パンを焼き、卵をふわふわに炒める。成功したら1ポイント。次に、出社前にポストを確認してDMを処理する「DMクエスト」も設定。これも達成で1ポイント。さらに時間に余裕があれば、近所のスーパーでお得な朝市野菜をゲットする「グリーンクエスト」を設定。これも成功で1ポイント。
 結果、ユキは普段億劫にしていた雑事が、なんとなく「ミニゲーム」めいて感じられ、クリアできた達成感がある。
「何だか、思ったより楽しいかも……」
 と、玄関を出る前、嬉しそうに呟く。

 会社に向かう途中、久々にポジティブな気分が胸に宿る。オフィスビルに入り、ユキは午前中のタスクをいくつか設定し、仕事を片付けるたびにこっそり自分のメモに「★」印をつけていった。
 昼休み、スマホを見ながら考える。仕事を「クエスト化」することで、達成感がより明確になる。これが顧客相手にも応用できないだろうか?例えば、商品を買うごとにポイントを貯める仕組みはありふれているが、それをもっとゲーム的にして、顧客同士が達成状況を共有できたら……?

 夜、自宅で報告するユキに、うさぎ先生は満足げだ。
「どうやら、達成感の妙味を少しは理解したようだね、ユキちゃん」
「はい、先生。ただ、これをそのまま企画に使うにはどうすればいいんでしょう。今考えているのは、新商品をただ売るだけじゃなくて、購入を繰り返すごとに顧客が自分の『ランク』を上げるような仕組み……」
「いい着眼点だ。顧客が楽しみながら、自分の行動が積み重なっていく感覚を得られると、人はその行動を継続しやすい。マーケティングで重要なのは、いかに顧客体験を豊かにするか。遊びっぽいと敬遠する声もあるが、君はまず小さなクエストで得た実感を企画書に反映してみるといい」
「わかりました!」

 翌日、ユキは社内会議で「クエスト型キャンペーン」のアイデアを出してみる。顧客は商品を購入するとポイントが貯まり、一定のポイントで「称号」や「特典」が得られる。さらに、SNSで自分の達成度を共有できる仕掛けを提案する。しかし、先輩社員は渋い顔をする。
「ユキちゃん、その企画、なんだか子供向けのお遊びっぽくない?うちの顧客層は中堅サラリーマンも多いんだよ。そんな軽いノリで動かせると思う?」
 他の社員も「楽しさは大事かもしれないけど、うちのブランドイメージと合うの?」と難色を示す。
 ユキはしゅんとする。家で小さな達成感を得て、勢い込んで提案したものが否定的に受け止められるとは思わなかった。

 退社後、暗い気分で帰宅するユキ。今日の夕空はどこか薄紅色で、ノスタルジックな気配を帯びていた。秋の風が肌を撫でる。胸が少し締めつけられるような寂しい気持ち。
 部屋に入り、うさぎ先生と目が合うと、先生は静かに言った。
「落ち込んでいるね、ユキちゃん。だが、批判はチャンスでもある。疑問を投げかけられたら、答えを探せばいい。そのためにも、まずは人間の心理をもう少し深く理解してごらん」

 ユキは膝を抱えてソファに座りこむ。
「先生……ゲームっぽいってダメなんですか?私はあれで達成感を得られたし、なんだかやる気も出たのに」
「ゲームは子供の遊びと思われがちだが、人間の行動原理に深く根差している。次は、その根拠を明確にして、社内の人を納得させる必要があるね」

 こうしてユキは、日常で得た小さな達成感を糸口に、もっと深く「ゲーミフィケーション」の心理学的裏付けを学ぶ決意をする。窓の外には遠く街灯がまたたき、先生の柔らかな毛並みに包まれる部屋は、静かに次の展開を待っていた。

さあ、日常という冒険の旅に出よう

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