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第11話:「法人の税金と資金調達」法人シリーズ全12話

法人形態によって税金や資金集めの方法が全然違う! 営利法人の法人税や株式発行、NPOや公益法人の寄付や助成金、自治体の地方債や国債などなど……。ユキが「資金と税制を把握するとマーケティングのゴールがよりはっきり見えるんだ」と実感する回。全体をまとめて振り返るのにオススメです。

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●法人紹介シリーズ

第1話:「法人とは何か? 基本概念と重要性」
第2話:「営利法人の基本 – 会社とは?」
第3話:「株式会社の仕組みと特徴」
第4話:「合同会社(LLC)とは? 特徴と活用法」
第5話:「合名会社・合資会社・持株会社」
第6話:「非営利法人の基本と種類」
第7話:「NPO法人の仕組みと運営」
第8話:「学校法人・医療法人・社会福祉法人の役割」
第9話:「公益法人と一般法人の違い」
第10話:「公法人(国・地方自治体・独立行政法人)」
第11話:「法人の税金と資金調達」
第12話:「法人設立の実務——会社を作る方法」

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今回はお金の話です!

意外と知らない? 法人とお金の関係に気づくユキ

 朝のオフィス。エレベーターを降りたユキは、デスクに向かいながら今週の課題を思い返していた。これまで「法人編」で営利法人、非営利法人、公法人について学んできたが、次のテーマは「法人の税金と資金調達」だという。上司から「それぞれの法人がどう税金を納め、どう資金を集めてるかまとめろ」と言われて、ユキは少し困惑気味。

「法人の税金かぁ……株式会社なら法人税を払うイメージはあるけど、合同会社も同じだし、非営利法人や公法人はどうなってるんだろう? 資金調達だって、株式発行や寄付、助成金、借入れ……いろいろあるよね」
 昼休み、社内のカフェスペースで同僚と話しても、「うーん、確かにNPO法人の税制優遇とか聞くけど詳しくは知らない」「学校法人はどうなんだろうね」など皆ピンと来ない様子。ユキはやはり、うさぎ先生のレクチャーに頼るしかない、と決意する。

 夜、自宅アパートに帰り、リビングのソファを覗くと、いつも通り羊羹をかじるうさぎ先生の姿。靴を脱いで「先生、ただいま。今日から法人の税金と資金調達について学びたいんです。会社なら法人税だと思いますけど、NPOとか学校法人、医療法人や公法人はどうなるのか、全然イメージが湧かなくて……」と声をかける。

 先生はテレビを消し、耳をぴんと立てて「おかえり、ユキくん。法人編もだいぶ進んだね。税金と資金集めは、営利・非営利・公法人それぞれで仕組みや優遇制度が違うから、複雑だけどやりがいがあるテーマだよ。今日はそこをまとめて見ていこう」と微笑む。

 ユキは腰を下ろし、「お願いします! 会社の資金調達とか非営利法人の寄付集めは分かってきましたけど、税金ってどう絡むのか……マーケティングとの関係もあるんですかね?」と期待に満ちた眼差しを向ける。こうして「法人編 第11話:法人の税金と資金調達」が始まるのだった。

納税の形が法人の形

多様な法人とお金の仕組み——税負担と資金調達のリアルを探る

 深夜のアパート、リビングの照明を落とし、ユキは床に座ってノートPCを構える。ソファにはうさぎ先生が腰をかけ、落ち着いた口調で話し始める。前回までにさまざまな法人形態を学び、今日はそれらがどう納税し、どう資金を集めているのかを総合的に見る。ユキは若干緊張しながらも、ペンを走らせる準備を整えた。


1. 営利法人の税金と資金調達

 先生はまず、「営利法人から押さえよう。株式会社や合同会社などは、基本的に法人税の課税対象だ。利益(税引前当期純利益)が出れば法人税、法人住民税、法人事業税などを払う。また株式発行や銀行融資、社債発行で資金調達が可能だね」と切り出す。

 ユキは「なるほど……法人税は率が一定で、所得税とは違って累進課税じゃないんですよね。株式会社なら配当金を出す前に法人税を払い、配当をもらった株主側も課税される二重課税構造ってやつ。マーケティング視点だと、利益を増やすために売上拡大を図るけど、税金をどう節税するかも経営戦略に含まれそう」とメモする。


1-1. 法人税と資本金規模

 先生は耳を動かし、「法人税は大企業ほど税率が同じでも金額は膨大になるし、資本金1億円以下の中小法人には軽減税率が適用されるなど優遇もある。マーケティングで売り上げを伸ばすほど税負担も大きくなるが、その分内部留保や再投資に回す判断が必要だね」と解説。

 ユキは「そうか……会社は利益を配当に回すか、マーケティング予算や設備投資に回すか迷うところ。税負担が大きいなら節税対策として広告宣伝費を増やすなんてこともあり得るのかな」と首をかしげる。


1-2. 株式発行・社債・融資

 先生は「資金調達では、営利法人は株式発行が強み。特に株式会社はIPO(上場)で一般投資家から資金を集められるし、銀行融資や社債も利用できる。マーケティング活動を派手に打ち出すために新株発行で資金を増やす企業もあるよ。一方で合同会社や中小企業は株式発行が難しく、融資や内部留保に頼りがちだ」と補足する。

 ユキは「なるほど……大企業は大きな広告キャンペーンや新商品開発も株式発行や社債で資金を調達できるから可能なんですね。マーケターとしては、その資金がどこから来てるのか把握しておくと提案の仕方も変わる。あまりリスクを取れない会社だと銀行融資が限界……法人税と資金調達、深いですね」と感心する。

税金を考えていきます

2. 非営利法人の税負担と資金源

 先生は「次は非営利法人。NPO法人や一般社団法人、医療法人など、配当をしない法人だね。ここは税制優遇がある場合が多いし、資金調達は寄付や助成金、補助金が中心になる。営利企業のように法人税をガッツリ払うことは少ないが、一定の収益事業には課税があるよ」と話を進める。


2-1. 収益事業課税と税制優遇

 先生は「NPO法人や公益法人でも、いわゆる収益事業を行っている部分は法人税が課されることがある。ただし、実質的に利益を分配しないから、非収益事業には課税されない仕組みになってることが多い。特に公益法人や社会福祉法人は税制優遇が大きいよね」と耳を立てる。
 ユキは「たとえばNPO法人がイベントでグッズ販売した場合、その収益が‘収益事業’と判断されれば課税対象になる。だけど、それ以外の活動には課税されない。マーケティングでも、その線引きは考慮すべきか……寄付や助成金は非課税扱いなんですね?」と確認する。

 先生は「そう、寄付金は基本的に法人所得じゃないから直接課税されない。ただし受け取った寄付をうまく活かして公益活動を行っているかは行政の監督を受ける。マーケティングで寄付をたくさん集めるほど、活動が拡大できる反面、資金の使い道が不適切だと批判を招くリスクもあるね」と補足する。


2-2. 寄付や助成金、会費の活用

 先生は続ける。「非営利法人は資金の多くを寄付・助成金・会費で賄う。だからその獲得が至上命題。マーケティング的には‘活動意義を伝え、共感を得る’が重要だね。税制優遇がある法人の場合、寄付者が所得控除を受けられるなどインセンティブがあるから、寄付を集めやすいというメリットがある」と耳を動かす。

 ユキは「なるほど……NPO法人や公益法人が『寄付者には税額控除が適用されます』とPRするのを見かけますね。確かに、寄付する側の負担が減るならもっと応援したくなります。資金調達と税制優遇をどう組み合わせるかが非営利法人の戦略……ここにマーケティングの余地が大きいわけですね」とまとめる。

財源をどう振り分けるかの目線

3. 公法人の税金と財源

 先生は「最後に公法人。国や自治体は税金を徴収する立場なので法人税はないが、公共事業や公共サービスのために予算が組まれ、歳入として国税や地方税が入ってくる。独立行政法人地方独立行政法人は国や自治体からの交付金に加え、利用料やサービス収益も得る。特殊法人も事業によって収入がある場合があるね」と解説する。


3-1. 税金で運営する国・自治体

 ユキは「自治体は住民税や固定資産税、国は所得税や法人税などの税金を集める立場……一方で、法人税を納めるわけじゃないんですね。そこが民間法人と大きく違う。でも国や自治体も‘公法人’として公共サービスの費用をどう調達し、どう使うかで行政評価を受ける。マーケティングだと観光施策や移住PRを行うために予算を確保してるイメージ……」と想像を巡らす。

 先生は「うん、自治体は税金を主な財源とし、地方債を発行して資金調達することもある。国も国債を発行して資金を確保し、公共事業や社会保障に充てる。いわば資金調達は債券発行がメイン。マーケティングで住民満足度を高めたり、移住者を増やしたりすれば税収が増える可能性もあるし、イメージアップによる地域活性が狙えるね」と話す。


3-2. 独立行政法人・特殊法人の財源

 先生は続ける。「独立行政法人特殊法人は国からの交付金や利用料収入で運営。例えば日本年金機構は保険料が主な財源だし、国立博物館は入場料や企画展の収益を得る。税金を納めるわけではないが、行政の予算や国民からの利用料が財源だ。マーケティングで来場者や利用者を増やすことが収益拡大に直結するケースもあるよ」と耳を立てる。

 ユキは「そう考えると、国立博物館とかが企画展を成功させるために広告を打ったりSNSで話題を作ったりするのは、まさにマーケティングですよね。入場料収益が増えれば施設を充実させられるし、国や自治体の交付金も評価次第で変わるかもしれない……。公法人=税金だけに頼ってるわけじゃないんですね」と納得する。

資金の調達の形も色々ありましたね

4. 法人と税金・資金調達のまとめ

 先生は「ここまで営利・非営利・公法人について、税金と資金調達の話を総合してみよう。営利法人は法人税や株式発行、非営利法人は収益事業課税や寄付・助成金、公法人は税金や債券、利用料がメイン。これらをどう選ぶかで法人の経営やマーケティングが大きく変わるんだよ」と語る。


4-1. 税制戦略とマーケティング

 先生は「営利法人の節税策や中小企業向けの税制優遇、非営利法人の税制優遇や収益事業の課税範囲、公法人の予算確保や債券発行……すべてマーケティングと無縁じゃない。例えば企業が利益を最大化して株主に配当するためマーケを強化する。非営利法人が寄付を増やすため共感を狙う。自治体が観光客を増やして税収を間接的に高める……すべて一貫している」と耳を動かす。

 ユキは「本当ですね! ‘税金や資金の集め方’が違えばマーケティングの目的や手法も変わる。企業なら売上拡大と節税の両立を考え、非営利なら寄付や助成金を呼び込む広報、公法人なら住民や観光客を増やす活動……。法人形態を理解するって大事すぎる」と笑う。


4-2. 企業×非営利・公法人のコラボ

 先生は「さらに企業が非営利法人や公法人とコラボする場合も、税制上のメリットやPR効果を狙う例が増えてる。企業が寄付金控除を活用しつつCSRをアピール、自治体と組んでイベントを行い地域創生を狙う……こうした協働もマーケティングの視点で設計される場合が多い」と声を和らげる。

 ユキは「なるほど……企業が自治体にふるさと納税の制度を使ってPRし、地域特産品を売り出すとか、学校法人と提携して企業説明会を行うとか、さまざまな形があるんですね。社会や経済の仕組みを理解するほどマーケティングが広がるんだなあ」と目を輝かせる。


法人を知る事で繋がりを理解した提案ができます

学びを胸に日常へ戻るユキ、総合的な視点が芽生える

 数日後、ユキは会社の会議で「新プロジェクト」でプレゼンを行った。そこでは地元企業が地域のNPO法人と協力してCSR企画を展開し、自治体(公法人)から後援を得る構想が提案されている。ユキは「営利・非営利・公法人がそれぞれ税制や資金源を持ち寄ってコラボすれば、より大きな効果を生むはず」と説得し、上司や同僚を納得させることに成功した。「まさに法人の多様性を知ったからこそ出せるアイデア」と内心ほくそ笑む。

 夜、自宅アパートのリビングでユキは先生に「今日、企業×NPO法人×自治体の三者連携プロジェクト提案が通りました! 企業の広告費やCSR予算、NPOの寄付集め、自治体の観光予算……それぞれ資金の出どころや税制優遇を理解した上で企画を立てられたんです。マーケティングってこんなに幅広いんですね」と興奮気味に報告する。

 先生は「それは素晴らしいね、ユキくん。メタ認知で法人の多様性と税制・資金調達を俯瞰すれば、こうした連携が思いつく。これで法人編もそろそろ終盤だけど、最後に法人設立の実務まで踏み込めばさらに理解が深まるよ。お疲れさま!」と耳をぴんと立てて柔らかく笑う。

 ユキは「ありがとうございます、先生。法人の違いを無視してただ‘広告打ちましょう’って言うだけじゃ浅かったって思います。税制や資金源、組織の目的が違えばマーケティングのゴールも変わるんだな、と。次はいよいよ法人設立の実務編ですか……楽しみです!」と意欲を燃やす。こうして「法人編 第11話:法人の税金と資金調達」が幕を下ろす。ユキは法人形態ごとの税負担と資金調達の手法を俯瞰し、そこにマーケティングがいかに絡むかをしっかり理解した。次回は法人設立の具体的なフローへと進み、法人編の最終段階を迎える。

それでは本日のおさらいです!

用語解説

  1. 法人税

    • 営利法人の利益(所得)に課される国税。会社規模や所得額に応じて負担が異なるが、中小企業向けに軽減税率が適用される場合もある。

  2. 二重課税

    • 会社の利益に法人税がかかり、その後株主に配当する段階で株主にも所得税がかかる構造。日本では軽減措置や配当控除などで調整が図られている。

  3. 寄付金・助成金・補助金

    • 非営利法人が資金を集める主な方法。営利法人のように株式発行はできないが、税制優遇や共感マーケティングを通じて資金確保を図る。

  4. 収益事業課税

    • 非営利法人が事業活動を行い売上を得る場合、その範囲が収益事業と認定されると法人税が課されることがある。NPO法人や公益法人でも対象となり得る。

  5. 公法人の財源

    • 国・地方公共団体は税金を主財源にし、独立行政法人や特殊法人は国の交付金や利用料を得る。法人税を納めるわけではなく、公共サービスの提供が目的。

  6. 地方債・国債

    • 国や自治体が発行する債券。税金だけでまかなえない公共事業の資金を市場から調達する。返済は将来の税収や交付税で行う。

  7. マーケティングと税・資金調達の関係

    • 営利法人は利益拡大&法人税負担増と株式発行や社債などで大規模マーケティングを可能に。

    • 非営利法人は寄付や助成金を得るための共感マーケティングが重要。

    • 公法人は税金や交付金を元に公共サービスを展開し、地域振興や広報で住民・利用者を増やす戦略を採る。


次回予告

次回はいよいよ「法人編 第12話:法人設立の実務——会社を作る方法」。ここまで各法人の特徴や税金・資金調達を俯瞰してきたユキが、最後に「実際に法人を立ち上げるにはどうするのか?」を学ぶ。株式会社や合同会社の設立手続き、NPO法人の認証プロセス、一般社団・財団法人の立ち上げ方、法人化後の税務・社会保険の対応まで、具体的なフローをまとめる場面がやってくる。法人編もついに大詰め、どうぞお楽しみに!


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