優しさと深い傷
『君は今すぐにでも
消えてしまいそうなくらい儚いね。』
そんな言葉を人から貰ったことがある。
自分から何かを掴み取ることが
出来ない 愚かな私は
形あるものがすごく嫌いだった。
形あるものはいとも簡単に
容易く崩れて 原型を留めず、
固く強く結んだ糸は
簡単に綻んでゆく。
人だってそう、物だってそう、
思い出だってそう、生命だってそう。
その儚さを愛さなければ
私はきっと生きて行けない。
『君は本当に優しいね、なにかあげようか。』
そんな言葉は要らなかった。
何も要らない。
人に何も求めていない、期待をしていない。
唯々、人から頼られている
生きている。
必要とされている。
そう思うだけで 私の心が救われた気がした
でも、所詮、私は愚かな人間。
良い人だ。優しい人だ。
と言われることに疲れたりする。
困った時だけ傍に歩み寄ってくる人だって
本当は居ることに
気付かないふりをしている。
「気の所為だ」
誰かの為に生きているような
存在価値を他人に委ねるような
脆い私は 紛れもなく人間だった。
優しくない世界で
優しくない人々が溢れていて
そんな世界になれて
そんな周りの人になれて
優しさなんて人に求めてはいけない
何も求めてはいけないと
全てに期待をしなくなった。
私が人に尽くすのは当たり前のことで
私は人に頼るなんてことは出来ない。
他の誰よりも1人で何かをやり遂げなければ
いけないんだ。
そう思って生きていたら
知らぬ間に、涙が流れていた。
意味のある涙だった。
「こんなにも苦しいのは生きているからだ、
生きているんだなぁ。」
生の憂いを、人間としての儚き憂いを
愛したい。愛していきたい。
私に在る 時間を唯々生きていきたい。
私の心に埋もれた言葉達を
生かしていきたい。
人の為だけでなく 自分の為にも。
誰かに尽くしすぎて
私が居なくならないためにも。
この世界が少しでも優しくなるように
優しい気持ちになれる人が
少しでも増えるように。
悲しい心に気づけるように。
それが本当の優しさだと思う。
そう私に教えてくれた涙はあの宇宙へ
飽和して 跡形もない。
でも、私の心には意味のある想いが
芽生え、心を潤す。
そんな存在に私もなりたい。
誰かの瞳に私が居なくても
誰かの心を潤すような人になりたい。
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