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なぜ保育士は信用できないのか? 『死を招いた保育: ルポルタージュ上尾保育所事件の真相』を読みました


概要

小さな嘘、怠慢、思い込みとすれ違い……日々のひずみの積み重ねが、必然的に子どもの命を奪うことがあるかもしれないことに気付いて欲しい。命の重みを背負った保育の質を問う、著者渾身のルポ!

https://hitonarushobo.jp/books/books-1131/

読書感想文

 私は、子どもを保育園や幼稚園に預けたくないと思ってしまう人間だ。
 私自身、保育園児だったころに保育士から良い対応をされてこなかったというのもあるし、認可保育所ですら園児の死亡事件がいくつも起きていることから、子供を預けるに値するほど、保育士が信用できるとは思っていない。
 これはあくまで、私の考えだ。保育園などで働いている人や、預けている人を悪くいうつもりはない。
 ただ、子どもに関わる全ての人に、知ってほしい事件がある。

 それが、上尾保育所事件だ。

榎本八千代さん(49)のひとり息子、侑人くん(当時4)が埼玉県の上尾保育所で亡くなったのは、2005年8月10日のことだった。

園内で遊んでいるうちに、行方が分からなくなった侑人くん。ちいさな本棚に隠れたことに気づいた人はいなかった。

ぐったりとした状態で見つかったのは、1時間ほど経ってから。熱中症で病院に救急搬送されたが、ちいさな体は、耐えきることができなかった。

「何が起きたかまったく、わかりませんでした」。BuzzFeed Newsの取材に応じた榎本さんは、当時をそう振り返る。

保育士たちが目を離している間に起きた、事故。榎本さん夫妻は民事裁判を起こして真相を明らかにしようとしたが、「なぜ侑人が死んだのか」という疑問の答えは見つからないまま、裁判は終わった。

https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/photographer-mother

 意見陳述書が載っているサイトがあったので、こちらのリンクも貼っておく。

 1時間も被害児童が発見されなかったのは、保育士が人数確認をしなかったからだ。園長含め、誰ひとりも。
 人数確認をせず、熱中症で死んでしまった事件は、他にもある。

静岡県牧之原市の認定こども園で、当時3歳の女の子が通園バスの車内に置き去りにされ、重度の熱中症で亡くなった事件の裁判で、静岡地方裁判所は業務上過失致死の罪に問われた当時の園長に禁錮1年4か月の実刑判決を、クラスの元担任に執行猶予の付いた禁錮1年の判決を言い渡しました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240704/k10014500991000.html

 ちなみにこの事件は、園長が記者会見で笑っていたことが、視聴者を苛立たせた。問題の箇所は3:58である。

 話を上尾保育所事件に戻す。
 「主体性」が教育現場で重要視されるようになり、「自由保育」といって園児が好きなように遊べることを良しとする保育園や幼稚園がある。しかし、それは「ほったらかし」ともいえるのではないか?
 これは、園児バス置き去り事件も同様。子どもはほったらかすと、死ぬ危険性がある。大切に見守る存在が常に必要なのだ。
 それをわかっていない保育士がいるから、信頼できない。

保育所では「子どもの主体性に任せる自由な保育」を標榜していました。しかし実際には「保育士に園内での人数確認や子どもの動静を把握する習慣が身についていない」「職員全員で児童全員を見ようという取り組みができていない」など、基本的なことが何もできていなかったことが指摘され、「防ぎようもなく起こった事故ではない」と結論付けられています。「自由保育」と言いながら、その実、行われていたのは「放置」「放任」であったことがわかっています。

https://gendai.media/articles/-/56432?page=3

 保育士にも事情があるのはわかる。国家資格を得るために勉学に励み、ようやく就職した。しかし、現実に待ち構えるのは、低賃金で重労働な環境。
 保護者からのカスハラや、同僚同士の悪口など、人間関係のいざこざに巻き込まれる。肉体的にも精神的にも負担が重い。それに合った給料ではないと感じ、退職を考えるか、意欲が低下した状態で働くことになる。
 これらは、上尾保育所事件に限ったことではない。全国で起きている。改善すべき国の問題といえるだろう。

 少子化だからこそ、子どものためを思った政策に尽力する政治家を選ばなければならない。
 子育てのしやすい国でなければ、少子化は改善しない。

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