読書紹介40 「殺しへのライン」
感想
元刑事で現在は、ロンドン警視庁の顧問で探偵のホーソンと作者と同姓同名の登場人物(作者の分身)であるアンソニー・ホロヴィッツのコンビが活躍するなぞ解き、犯人あてミステリー第3弾です。
前2作もそうですが、今作でも、作者の分身としての「わたし」が登場し、現在の仕事、手掛けている本(原稿)やプロモーション、出版社とのやりとりなどが書かれていて、そんな「裏側」を知るのも楽しみの一つでした。
作家がどんな生活をしているのか、案外と「孤独」な作業を続けていることや、特に原稿の締め切りまで引きこもって誰とも話をしない(できない)こと、その分、文芸フェスなどで、同じ職業とする「仲間」との交流を楽しみにしていることなどが書かれていて、より身近な存在に感じました。
そういえば、宮部みゆきさんが、本を書く(つくる)中で、
「東野圭吾さんに関西弁の会話についてアドバイスをもらった」
「地理不案内で、高村薫さんに大阪取材に同行してもらった」
ことを紹介していました。本が世に出る(生まれる)までには、たくさんの人の協力があってこそなんだなと、改めて、物語さえ書ければいいものではないこと考えさせられました。
「大どんでん返し」という衝撃は大きくはありませんでしたが、話の始めから、途切れることなく次々と提示される事実や小さな謎が、なぞ解きの後半に入って、怒涛の勢いで、ドミノ倒しのように解決していくところがあり、すっきり感と言うか、「あは体験」というか、半端ない面白さがありました。
たくさんの謎を提示すると同時に、「なぞ解きに必要なデータを提示する」いわば、ミステリー小説でよく言われる「フェアプレイ」は、しっかりとなされていました。
少しずつ提示される事実を組み合わせることで、新しい事実や謎、謎解きにつながっていくので、読みながら、夢中にさせられてしまうのも作者のホロヴィッツさんのうまさなんだなあと感心させられました。
ホーソーンシリーズの3作目です。
1冊ずつ独立している部分と、ホーソーンの秘密が明かされていく部分があって、第4作目にさらに私生活や二人のコンビの仲が深まるかなどの楽しみも引き継がれているように思いました。
楽しみです。
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです