感想など
今から30年以上前の作品。
当然、スマホやインターネットがない時代の中での話。
主人公たちがいろいろと調べるのに、新聞記事、雑誌記事、現代用語辞典、手紙でやりとり、固定電話、実際に会いに行って・・・等々、体を動かして、手元で得られない情報を求めて移動するところに、おもしろさを感じました。
また、その分、話の中では時間が結構経過しているのに、読んでいる自分の中では、事件やその捜査内容がパズルの最後の方のピースのように、ダダダとつながっていって、臨場感や緊迫感があり、あっという間に読み終えられました。
今回の「魔術」「サブリミナル(効果)」など、ちょっと現実世界ではありえないようなことでしたが、フィクションと感じさせない、むしろ、本当に、実際に起こっているのではないか、起こせるのではないかと思えるほどの現実感がありました。
登場人物の言動が、よくある推理小説の人物のような、ある程度、型にはまったような言動ではなく、その人の生い立ちから含めてどんな人なのか、次に何をするのか、何が起こるのか?といったような予測がつかない分、読み進めるごとにだんだんと明かされ、全体像が見えてくるという意味でのスリリングさも感じました。
犯人捜しや3人の死の関連、「魔術」の謎解きがメインの作品であると思って読んでいましたが、むしろ、最後の最後で設定された主人公の守の「葛藤」と、その後の選択が、話の一番の盛り上がり部分であると感じました。
逆に言うと、なぞ解きミステリーと思わせつつ、その時どうするのか!と言う選択の重みに直面させる物語の構成をつくっていく、宮部みゆきさんのすごさを感じました。
宮部みゆきさんは、社会、人間の本質にかかわる描写、言葉を書かれるところも魅力があります。
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです