「デザイン思考」でバージョンアップ~相手への共感から発想することで固定観念を打破する。
あるデザイナーの方が、とある駅の待合室の改修工事に協力することになりました。それは、その待合室の空間デザイン~間取りや配置するものなど~を考える、アイデアをだすという内容です。
皆さんだったら、どうするでしょうか?
何か、目玉となるようなもの、シンボルとなるようなものを置いたり、つくったりするでしょうか?
あるいは、みんなが使いやすいユニバーサルデザインを豊富に使った空間にしていくでしょうか?
はたまた、「アート思考」を使って、とにかく、今までにない、前例がないような、常識にとらわれないようなものを生み出すでしょうか?
頼まれたデザイナーの方は、空間デザインを固めるまでに次の行動をとったそうです。
1 1カ月ほど、頼まれた駅の待合室で寝泊まりして過ごす。
2 過ごす中でリサーチする。
特に、誰が利用しているか、どの時間帯に利用されているかなどなど。 3 「2」の中で、特に利用してる人たちの様子をさらに観察する。
4 観察の中で、その待合室を利用する人のニーズ、願いを探っていく。
5 「4」で探った内容をもとに、何をどう配置すると、そのニーズに答えられるか考え、空間デザインを決めていく。
というようなプロセスを通ったそうです。
そして、完成したのが、駅の待合室としては珍しい、窓際に机を配置したり、中央にテーブルのような家具を配置したりした「図書館の学習室」のような待合室でした。そして、「みんな」から歓迎される待合室になったそうです。
では、どうしてそうなったか?
まず、待合室で観察すると、一番の利用者が「高校生」であることに気が付きます。
そして、高校生にとって、電車を待つ時間は、友人とのおしゃべりの時間とともに、勉強時間であることに気が付きました。単語帳を開いて覚えたり、参考書を読んだり、中には、スポーツバッグを机代わりにして、問題集を解いたりする高校生がいたそうです。
そう、あきらかに、以前の待合室では勉強する環境~机や座る場所~が足りませんでした。そこで、そんな利用する多くの高校生の「ニーズ」をとらえ、窓際に長机やベンチのような椅子を配置したような空間デザインに行きついたそうです。
・・・もちろん、その他の利用者の事も考慮したデザイン、配置したものもありますが、ここでは割愛します。
以上のような方法を「デザイン思考」というそうです。
デザイナーやクリエイターが、その業務で使う特有の考え方や思考プロセスを使って、課題や前例のない、未知の問題などに対して、最適な解決をすすめていくための思考法の事です。
デザイン思考のプロセスには次の5つがあります。
1 共感
2 問題定義
3 創造
4 プロトタイプ
5 テスト
「共感」は、簡単にいうと、その場やそこを利用する人などに求められている事、ニーズや願いを探り出していくことになります。その時に必要なのが、「共感」です。相手に共感することで、利用者がどんな思いでいるかや何で困っているかなどを見つけ出していけます。
「問題定義」は、「共感」でつかんだ、見出した課題や問題などを明確化、定義することです。あるいは、目指すべき方向性などを決める事でもあります。
「創造」は、「問題定義」に対してどうするか、アイデアを出すことです。あるいは解決方法を考えていくことにもなります。
「プロトタイプ」は、とりあえずやってみること、試作品を作ってみることなどに当たります。頭の中でいろいろ考えているだけでは見えてこないこともたくさんあります。やってみる、つくってみることで新しい気づきも生まれます。
「テスト」は、「プロトタイプ」からえられたことを振り返り、さらによりよくしていくこと、そして、より完成形、精度の高いものにしていくことでもあります。
以前の記事でも触れましたが、
現在でも目標達成や業務改善、生産性向上などを目指して用いられる方法に「PDCAサイクル(思考)」があります。
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとったもので、継続的に品質などを管理するための手法です。目標などを明確に設定でき、無駄を省くことができるというメリットがあります。
しかし、計画や計画の遂行にこだわるあまり、計画以外のものを認めなくなりやすいです。そして、計画が中心になるので、「頭の中での事」、つまり、リアリティを失いやすくなります。
さらに、より早く、より効率よくと「テクニック」に関心が生きやすくなります。
そうすることで、前例主義に傾きやすく、ある枠の中だけでよりよくしていこうという思考になるので、、「殻を破る」というような、大きなイノベーションが起きにくくなります。
PDCAサイクルは 工場などで製品を作る時などには、有効だと思います。しかし、人間関係、子供の教育にあてはめて考えていいものかどうか?
モノと人は違います。「ゆっくり成長」する人もいますし、「手がかかるからこそ生まれる深い関係」だってあります。
子供は、大人の思った通りに動くロボットではないので、予想外の事をしたり、言ったりします。
あるいは、子供の成長は常に右肩上がりでもありません、行きつ戻りつ、人によっては、ずっと停滞していて、ある時パッと花を咲かせる人だっています。
そんな時、教師など、子供に接せる大人にゆとりがなければ、子供をせかしたり、追い立てるような接し方になったりすることは容易に想像がつきます。
子供に計画を合わせるのではなく、計画に子供を合わせよう、枠に押し込もうといいう考えにつながっていきます。
今回の
「デザイン思考」は、ある意味、相手(ユーザー)を中心にした考え方です。
その人(もの)の背景にあるもの~価値観、思考などの本質を理解して、では、何が課題で、どうするとうまくいくか、何を望んでいるか、どうすると心地よくなるかなどと、問題を捉えて工夫していくことにつながります。
子育てを始め、人との関わりに「正解」がないことがほとんどです。
ということは、相手に共感しつつ、試行錯誤しながらお互いの心地よい距離を見つけていくことが求められますが、それは、まさに「デザイン思考」のプロセスに合致しています。
デザイン思考で、固定観念を打ち破って、バージョンアップできるかもしれません。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです