森信三先生の「幸福論」~ 人とのご縁の重視、比較しない、真理は現実の只中にあり
月1回、地域の読書会に参加しています。
現在は「修身教授録」という、森信三先生が講義された内容がまとめられた本を読んでいます。戦前の大阪天王寺師範学校(現 大阪教育大学)の「修身科」の講義をされた記録がまとめられて、本になったものです。
教育関係者をはじめ、特に経営者によく読まれているようです。
それは、「生き方の原理原則」や「仕事に関わる身の処し方」等が書かれているからです。簡単に言うと「人間学の要諦」がまとめられていて、「リーダー」に必要な素養を学べるからです。
教育哲学者であった森先生自身は、何度も死ぬような目にもあっていますし、億単位の借金を抱え、自殺を考えてあちこちを放浪した時もあるそうです。また、75歳の時に、子供に先立たれ、その後、尼崎で独居自炊の生活もしてみえます。
読書からだけではなく、森先生自身が、ご自身の苦労の人生の中で得た真理をいろいろな場面でも教えてくださっています。
そんな、教えの一旦を紹介します。よかったら、お付き合いください。
今回のテーマは、「幸せについて」です。
1 幸せのとらえ方
「幸福は、直接これを人生の目的として求めるものではなく、真の幸福は人生を正しくまともに生きている人々に対して天から恵まれるもの」
と言及されています。
ある意味、チルチルミチルの「青い鳥」のテーマと同じで、幸せを求めると逆に見失う。むしろ、真剣に生きている人に天から恵まれるというイメージかもしれません。
そして、「幸せの原点(出発点)」として、次の5つを指摘しています。
➀ 絶対に人と比べない
② 足るを知る
③ 自分の果たすべきつとめを果たす
④ 人のために親切にし、人のために尽くす
⑤ 人間関係をかみしめ、感謝する
「人とのご縁を大事にして、自分の義務、つとめを果たし、人に親切にする。そうすると、幸せになりますよ~、幸せを求めるだけではダメですよ~」
と言っているようです。
2 ご縁を大事にする
「1」の内容は、当たり前と言えばあたり前。
平凡でみんな知っているような事、と言われてしまえばそれまでですが、それを実際に「行えるかどうか」「実践しているかどうか」が問われるのだなと思います。
実際に、森先生自身は、「人との縁」をとても大切にされていました。
それを示すエピソードに次のような内容があります。
・講演をするために日本中をとび回り、家を留守にして帰ってくると、ハガキや手紙が山のようにポストに入っていました。
森先生の日記の中には、朝に帰って来て、朝からずっと返事を書いて、最終的にはその日の夜中に書き終わったということも記されているそうです。
・「続全集」の第8巻。「40日間の私信」という項では、「1日平均、ハガキ15枚、封書3通書いた」ことが記されています。最終的に40日間で葉書が合計600枚に達し、手紙は120通近かったそうです。
・晩年に脳血栓で倒れ、右手が不自由になりました。しかし、それでも1日に3~5枚は葉書を書いていたそうです。
そして、
「ハガキの活用度いかんで、その人の人生の充実度がわかる」
「ハガキ活用の達人たるべし」
とハガキを書くことを周りにすすめられていました。
メールやラインなどSNS全盛の時代ですが、実際に私もはがきや手紙を書いています。
しかし、ハガキ1枚、手紙1通を書くのがどれほど大変で時間がかかるかを経験してるので、この1日15枚書いた・・・という話には本当に敬服します。そして、逆に言うと、それぐらい、ハガキや手紙を活用して、人とのご縁を大切にされていたのが森先生なのだなあと思います。
3 「真理は現実の只中にあり」
森先生は、学者ですが、日常生活のあれこれについて言及してみえます。
幸せを求めてではなく、どういう生活、考えをもって行動すると「良く生きられる」かを説いてもいます。
特に難しい話だけではなく
「お酒の飲み方」
「性について」
「お金の使い方」
など、ある意味、日常生活の問題を考察研究し、提示されているので、亡くなられた今現在も庶民的に幅広く多くの支持があるのだと思われます。
そんな、森先生が現実からつかんだ真理として、次のような言及があります。
・一切の人間関係のうち夫婦関係ほど互いに我慢の必要な間柄はない。夫婦のうち人間としてエライほうが、相手をコトバによって直そうとしないで、相手の不完全さをそのまま黙って背負ってゆく。夫婦関係と言うものは、結局どちらかが、こうした心の態度を確立する外ないようです。
う~んと考えさせられます(笑)。私はどっちの立場かとも(笑)。
おもしろい内容として、「階段の登り方」についての言及もあります。
・歩いているときに、階段があるからと言って、急に速度を落としたらダメですよ。階段も歩いている時と同じようにサササと登りましょう。それは、人生の逆境に対峙したときの態度と同じなのですよ。
あまり、学者でこんな内容を研究、考察された方もいないのではないでしょうか?
しかし、考えてみれば、生きていることは「食べる、排泄する、寝る、人と関わる・・・」などの繰り返しともいえます。そこで出てくる問題から逃げないで、よりよく対処していくと、「幸せ」も近づいてくるのかもしれません。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです
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