音楽は記憶に残り、言葉は消えるんだって

好きなNHKの番組は『鶴瓶の家族に乾杯』。毎回びっくりするような展開が起こって、人って面白いなぁと思わされます。
田中弥三郎です。鍼灸マッサージ師をしています。

先日NHKで放送された『フロンティア〜人はなぜ歌うのか』を見ての感想です。

たこせん枝瀬さんの共同運営マガジンも「みんなのうた」だけに、良いかも知れないなと。

認知症患者の男性同士の交流

トミーの場合

認知症になり、普通に会話することが難しくなってしまったイギリスの男性、トミー。人が言ったことを忘れてしまうのです。

妻のジョイスも、「彼は座ってるだけで目の前のものも見えていない。私に話しかけてもこないし、共感する心が消えてしまった。かつての夫は、もういません。」と話します。

トミーは「一番孤独を感じるのは、部屋に大勢の人がいるのに誰も私に話しかけて来ないときです。自分が透明人間になったようだ。」と。

ポールとの出会い

トミーとポールは、認知症患者の会で出会いました。認知症になって、初めて共感できる友人です。同情じゃなくて、共感です。
彼らの共通点は、ビートルズ。

ポール「ビートルズの歌は、何年経っても覚えています。全ての歌詞を。本当に不思議だ。頭の中で何が起こっているんだろう。」

トミー「音楽を聴くと、頭のカーテンが開き、光が差して見えます。元の世界に戻ってきた気がするんです。」

音楽記憶(music memory)ネットワーク

聴覚野と報酬系、記憶の領域の関係

音を聞く聴覚野、快感物質が出る報酬系、記憶領域には音楽記憶ネットワーク/Music Memory Networkと呼ばれる連携があります。
音楽を聴くと、記憶と予測が発生し、快感物質が出る仕組みのことです。

まずビート(リズム)。ビートが繰り返されると、脳の予測機能が働き出し、次にどんなビートが来るのかを予測します。
これで脳は、快感を得るのです。

ビート以外にもメロディ展開など、音楽は予測アイテムがたくさんあり、その全てが報酬系を刺激し、脳は快感を得ます。

でもときには、その予測は裏切られます。
すると、脳は「予測の難しさ」を喜び、より大きな報酬を感じるのです。

記憶のこぶができる

報酬系が最も活動するのは、思春期です。
思春期の頃に聞いたものが、その人にとって特別なものとして強く記憶に焼き付きます。
記憶のこぶ(瘤)ができるのです。

トミーに起きた変化

トミーは、妻との思い出の曲として、
ニール・ダイアモンドの『Sweet Caroline』を挙げました。
話しているうちに、自然と歌い出しています。
歌ううちに、妻との記憶が甦ってきました。
「妻と語りあったことは、覚えている。」

トミーとジョイスは、17歳で出会い、一年後に結婚したのです。そのときに歌っていた曲です。
「もっとこうして、君の手を握れば良かった。」
「もう、、、泣かせないでよ、、、」
思い出の曲が、眠っていた記憶を呼び起こしたのです。

考えてみる

認知症だった義母

今年の1月、義母を見送りました。88歳でした。
認知症(5分で忘れる)ながらも問題行動はなく、いつもニコニコと可愛らしい人です。

弟が亡くなったことすら忘れたりしてましたが、大好きな歌は忘れていませんでした。
テレビにAmazon Musicを入れて、美空ひばりのベストアルバムをループ再生しておけば、3周目でも機嫌よく歌ってました。(笑)
可愛いでしょ。

『PERFECT HUMAN』のリズムに合わせて縦ノリしてたのも驚きました。
曲を知らなくても、ビートで気持ちよくなるのは、よく分かりますね。

音楽はヒトが産まれたときから楽しめる

音楽が脳の報酬系を刺激することは、証明されました。
さらに番組の後半では、新生児にヘッドホンと脳波計を付けてデータを取っています。
新生児の時点で、ヒトはビートを認識していて、ビートを変化させると脳波も反応するのです。

マイケル・ジャクソンに合わせてリズムを取るオウムの動画が話題になりました。研究者たちは沸き立ち、動物と音楽の反応を研究しました。
ところが、チンパンジーに音楽を聴かせてみても、反応はするもののはっきりとした効果は認められなかったそうです。

ヒトは、音楽を楽しむ力を持って産まれてくるのです。言葉を覚えるより、寝返りするより先に出来ている能力です。
そして、言葉を忘れてしまっても、音楽を楽しむことはできる。すごいことです。

音楽は認知症の切り札かも

認知症の人こそ、楽しいことをしていて欲しい

認知症のメカニズムは、分かっていないことも多いですが、「感情」は大きなキーワードです。
感情が伴った記憶は、認知症の人でも残りやすいと言われます。
音楽で「楽しい感情」を刺激できるのなら、「楽しい感情の記憶」の割合が増えていくでしょう。

認知症の患者さんは、記憶がない(分からない)ことで不安な感情が強く、不安だから徘徊したり、大きな声を出したりしてしまうそうです。

その不安な気持ちを、楽しい記憶で上書きできたら、落ち着いて過ごせるんじゃないかと思うのです。

少々のことは忘れてもいいじゃないですか。
ニコニコしていてくれたら、それが家族としては1番嬉しいことです。

認知症予防にも可能性を信じたい

完全に私の「希望的観測」です。でも、信じてみたいと思うのです。

認知症の予防には、ストレス解消や知的活動が大事、とよく言われます。
また、人との交流の有用性も指摘されています。

音楽は、それらをすべてクリアできる手段です。もちろんいろいろな楽しみ方があるので、個々人に合った形であるべきですが、使わない手はないんじゃないでしょうか。

ある意味で、認知症になっても楽しめる趣味とも言えます。仲間と歌うのもいいですし、リズムを取るだけでもいい。愛する妻の手を握ることを思い出した実例があるのですから。

自分がnoteにコメントしたきっかけは

いまの自分とnoteの関わりを考えてみると、コメントのきっかけは音楽ネタがほとんどです。
音楽の話をしたくてnoteを始めたわけじゃないのに。

好きです!楽しいです!っていう記事に、
僕も好きです!サイコーですよね!って乗っかる。

別にアンタの好みなんか聞いてないよ、って言われるかも、、、なんて思いましたが、要らぬ心配でした。
気付けば『みんなのうた』という共同マガジンにいます。コメントをするうち、音楽以外のことにもコメントをするようになりました。

いろんなとこに首突っ込んでコメントしてますが、応援したいと思ってのことです。
他意はありません、ご迷惑かけてたらゴメンナサイです。

ヒトはなぜ歌うのか、は次回に

音楽の可能性が楽しみ

ダーウィンは、
「音楽は生きるために直接の役には立たない。それなのに、ヒトはなぜ歌うのか。」
と問いました。

認知症と音楽の関係からそのヒントを見出して、番組の後半で掘り下げられるのですが、長くなったので一度区切ります。

老人施設などでもカラオケは人気ですし、子供番組でも歌や音楽は必ず出てきます。友達の子供さんをクルマに乗せた時は、好きな曲をかけてあげたらそれだけでノリノリ。ジブリソングにはお世話になりました。

コロナ禍でライブやイベントが「不要不急」なんて言われたとき、「必要至急なんだ」と声を上げて、できる範囲でライブをしていたバンドがありました。

仕事柄、毎日抗原検査をしていたので、なかなかライブに行くのはできなかったけど、そういうバンドがあると知っただけで勇気をもらっていました。

物質的には豊かな時代ですから、これからの時代をより良いものにするには「こころ」や「感情」の部分に目を向けるべきだと思っています。

音楽は大きな手がかりになりそうです。

子供の頃を思えば

子供の頃、好きだった曲はなんですか?
私はこの2曲。
『おどるポンポコリン』B・Bクイーンズ

『FUNK FUJIYAMA』米米CLUB

どっちも笑っちゃうくらい楽しい曲ですね。リズムもメロディも、歌詞の世界感もブッ飛んでる。

子供の頃なんて歌詞の意味もわかってないですから、純粋に気持ちよかったんですね。
なんか理由が分かった気がして面白いです。

この2曲が強烈に頭に残ってる、と母親に話したことがあります。大笑いされました。
聴かせた人間が何を笑うとんねん。

子どもたちにヒットする曲には、ビートが面白かったりメロディがキレイだったり、ちゃんと理由があるんでしょうね。

三拍子の連続はワクワクするリズムだそうです。
タタタ タタタの連続です。
祭囃子のチャンカ チャンカも同じリズムです。

で、この曲。

イントロも歌い出しも、三拍子の連続です。
そりゃワクワクしちゃうわけです。

音楽と人間の反応って、面白いですよね。

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