『欠けない剣、重たいシャボン玉』
諸刃の剣、それをゆっくりと鞘から引き出してみる。あるいはシャボン玉を手で包み込んでみようとする。
剣は触ればすぐ崩れ落ちそうである。
シャボン玉は逃げていってしまいそうである。
夜風が吹いてきてすっと夜の匂いが鼻腔をくすぐった。その瞬間、剣は端から欠けてゆき、シャボン玉は空高く逃げていって、案の定取りとめのない思考は手の隙間からすり抜けて行ってしまった。
春の宵に浮かぶじんわりとはっきりしない色の月を見る。肺に生ぬるい空気を吸って、
「はぁ」
今日は暖かかっと言えど、も