『ピョララ、孤独のピョル』
キラキラ光る、お空の星よ。
星雲がひしめくお空で、ピョルは今日も生きています。
まだまだ若い、新人さんです。
ピョルは今日も夜空を彩り、きらめき、彷徨って、ひとに尋ねる。
「こんばんは。ピョルは孤独なのでしょうか。」
1000年前に尋ねたあるひとは言いました。
「もし孤独なら、私に話しかけられませんよ。」と。
ピョルはなるほどそうかもしれない、と思いその日はお家に帰ったわけですが、真下を覗くと先輩ピョルは周りの仲間たちとおしゃべりをし、瞬いています。
もっと、もーーっと下を覗けば、人々が語り合い、食卓を囲んだり、一緒にテレビを見たり、暗いお部屋でおねんねしています。
ピョルにはお話を仲良くする相手はいないですし、ご飯を食べることも、おねんねすることもありません。
「やっぱりピョルは孤独なんだ…」
ピョルはいつも明るく、青いその光をキラキラと元気に放つのですが、今日はそんな元気もありません。
とうとうピョルは1000年ぶりにお外へ出かけて、周りのひとに尋ねることにしました。
以前に尋ねたひとはもういなくなってしまっていて、重たく、真っ暗なひずみが彼のおうちがあったところにはありました。
しょうがないので少し遠出をして、初めて会うひとのところへと向かいます。
「初めまして、こんばんは。ピョルは孤独なのでしょうか。」
突然のピョルの訪問に、驚いてしまったようで、自分の破片を落として、彼の流れ星が真下に向かっていきました。
彼はびっくりした顔を、徐々に怒りんぼの顔に変えて言います。
「俺の一部が落ちちまったじゃねぇか!どうしてくれるんだ!!」
もともと赤い彼の光は怒りでもっと赤くなります。
ピョルはじん星《せい》で初めて怒られたものですから、怖くて声も出ません。
「お前はいつまでも孤独だよ!あんな星雲だらけの田舎に住もうなんて奴はいないさ!」
ピョルはびっくりして、それから言われたことの悲しさが広がりました。
涙が、溢れてきました。
ピョルはキラキラとした涙を流しながら、星の速さで温かい、星雲だらけのおうちに帰っていきました。
それは、星が青い光の尾をひいて動いている、とても幻想的な光景でした。
午後6時43分。瑞樹は今夜も望遠鏡から夜空を覗く。小学生の頃からの習慣である。
時刻は決まっていなくて、だいたいは帰宅して夕飯を食べた後。部活もあるので時間は毎回違ってくる。
今夜は部活が1時間も早く終わって帰宅し、早めの夕食を食べた。
7月のぬるい夜風が焼けた瑞樹の肌をなぞってゆく。今夜は雲が少なくて星が見やすい。方位は南西。レンズから深い青色の世界へともぐりこんだ。
スーっと、青いきらめきを眼の端に捉える。
何かが動いた?
瑞樹は望遠鏡の倍率を上げて、星雲の多いその方向を見つめる。
チラ、チラ、チラ…
青い星だ。青く、純粋そうな、若い星がたくさんの星雲に囲まれてきらめいていた。
「きれい…」瑞樹はつぶやいた。
さいきん、下の方から視線を感じる。
この前のひとに言われたように、ピョルにはお友達もいないし、孤独なのに。誰がピョルを見るのだろう。意地悪ならやめてほしい。
ピョルは恐る恐る、そぉっと下を覗いた。
先輩ピョルは今日も楽しそうにおしゃべりをしている。
あれ、先輩たちは私を見ていない。じゃあ一体誰が…?
チラリ、と先輩ピョルのもっと、ずーっと、はるか下で何かがピョルに向けられ、光った。
ピョルはそれを見ようとして、ずっとはるか下方の世界を覗いて、そうしてレンズを見つけて、その奥の、その奥の男の子と目が合った。
初めてピョルが見つけられた瞬間だった。
初めてピョルが孤独でなくなった瞬間だった。
誰かただ1人に見つけられたならば、
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