大学生の夏休み図書におすすめ #君羅文庫 2022上半期読めて良かったよ10冊
はじめに
試験期間が終わった大学生は夏休みですね。もう計画たくさん立てた人も、何しようかな〜と楽しみにしてる人もいると思いますが、長ーい大学生の夏休みに本を読むのいかがでしょうか?君羅が読んでおもしろかった本を紹介している #君羅文庫 から、2022年上半期に読めてよかった10冊をご紹介します。それぞれにAmazonのリンク貼ってありますが、買わなくとも大学や近所の図書館で借りて読むのも良いですね。夏休みの読書の参考になったら嬉しいです。
■1冊目
『考える教室』 若松英輔 NHK出版
わかりやすく教えてくれる人ってありがたいですよね。でも早く分かる情報を授けてくれる他者が自分の立つ場所の土台を作ってくれることはないようです。
頭でわかることよりも実際に生きることで生に関わる問題にアプローチする。どのように生きるかを問うことで我々は人間となることができる。早く分かるよりも、自分の頭で長く考えることの重要性を感じさせてくれる本です。
■2冊目
『サブカル仏教学序説』 三浦宏文 ノンブル社
「唯識」「四聖諦」など仏教の考え方から世界や生き方の見方を変えることができるなと最近気づいた君羅です。そんな仏教がサブカルに与えた影響を捉え、サブカルの中に現代における仏教思想の経典としての可能性を見出す「サブカル仏教学」Twitterでつながっている三浦先生の素晴らしい思索と実践です。
自分の興味のある作品や好きな作品が扱ってある章から読んでいくのがオススメですね。踊る大捜査線シリーズの恩田すみれファンの僕は第2章から読みました。
踊る大捜査線という"乗り物"を通して『ギーター』の義務の遂行という倫理思想に出会えました。
■3冊目
『食べるとはどういうことか』 藤原辰史 農山漁村文化協会
今年の大学入試共通テストの国語の問題に出題された藤原辰史さんの本です📘
深く考えることが案外ない「食べる」について、藤原さんと中高生たちが考え、対話の渦ができていく様子がとても心地よい。
みなさんも考えてほしいのですが「いままで食べた中で一番おいしかったもの」を答えるというのは本当に難しいですよ。
■4冊目
『地上の飯 皿めぐり航海記』 中村 和恵 平凡社
世界の中にはこんなにも美味しいものがあるんだなぁって感じさせてくれる。世界のおいしいごはんのにおいに誘われて国境を越えてゆく!こんな風に世界を味わいたい! 今の世界の状況が好転し、いろんな国のおいしい食べ物に出会えるチャンスが訪れることを願いつつ読む本ですね。想定も美しくて読む前からなんだか嬉しくなっちゃう一冊
■5冊目
『ナナメの夕暮れ』 若林正恭 文藝春秋
とても良かった。
若林さんがスタバでグランデを頼めないのは、スタバでグランデを頼む他者をバカにする自分がいるから。他者の否定によって得られる自己肯定という負のループから抜け出すために「肯定ノート」をつけ始め、自分を、他者を肯定してゆく。肯定ノートをつけることで自分に目を向けて見つけた「没頭」でネガティブを乗り越える。社会をナナメに見ていた自分を殺して世界を肯定していく若林さんの姿がとても愛おしい。
■6冊目
『ケアの倫理とエンパワメント』 小川公代 講談社
ただ漠然と小説を読むのではなく、「ケアの視点」を持って文学を読むことで、弱者の物語から横臥者や精神的苦痛を強いられる人々の視点が得られる。
ケアの視点からの思考が社会の現状を変える原動力となる。
文学が好きな人も興味がない人も、今まで持つことなかった「本を読むときの視点」を手に入れると、文学や社会の今に向き合う姿勢が変わると思いますよ。
■7冊目
『他者の靴を履く』 ブレイディみかこ 文藝春秋
エンパシーは他者に共感しろとは迫らない。他者を他者として捉え、その人の立場だったらどうだろうかと考える想像力。「今とは違う状況」を考え出すためのスキル。エンパシーが導くオルタナティヴ(自分が知る現状とは違う世界)を知ることで目の前の世界に閉じることなく生きることができる。
エンパシーを育てる教育についての11章良い!赤ちゃんからエンパシーを学ぶ「ルーツオブエンパシー」、家庭で始める民主主義など、アナーキーでエンパシーな空間で学ぶパースペクティヴテイキングとっても重要だ!
■8冊目
『他者と生きる』 磯野真穂 集英社
統計学的人間観に従ってリスク管理をするでなく、未来に向かって飛び他者と共に在る中で時間を作り出し生きていると実感できたなら、統計学的時間で測られた"長い"時間でなくとも、その人生は厚く、深く、長い。
とても良い。とても考えさせられた。
自身の生活を振り返ると、客観的な正しさに身を委ねて、日常を予測可能な範囲に留めてしまっているな。まだ来ぬ未来へ依拠する愛と信頼に基づく選択は、今ある関係性からは想像できなかった自他の生成が待っているかもしれないのだから、他者との関係性を持とう!頭を上げよう!手を挙げよう!
「私」の境界はどこか?もすごく考えさせられた。
身体の概念を持たず、「人」が関係性の中で存在すると捉えられているメラネシア社会。
皮膚を境に自己が途切れるのではなく、むしろ自己は共有されているアフリカのバカ・ピグミー。
自分だけで生きているとは思っていなかったが、所与としての人があることは無意識に考えていたと思う。他者との関係性の中で生成される自分という存在について考えた。
この興味はティム・インゴルドに向かう。
■9冊目
『薬の現象学』 青島周一 丸善出版
薬理作用だけでない、その人の生活の中にある薬を飲んだ先の多様なアウトカムに影響を与えるものを考えることで「薬の効果」という現象を救おうとする哲学的思索。城西大学薬学部卒業生の青島周一さんの著書です。
薬と人の関わりを丁寧に考える青島さんの思考に触れて人の生活にとっての薬や医療の持つ意味を考える
國分功一郎さんの言葉が数々登場するのも良かった!
「薬を飲む」を能動/受動の対立のみで語ることで過去を切断させ患者に意志を持たせようとする。
中動態のフレームワークで臨床にまつわる言葉を捉え直すことで患者の想いや生活の豊かさを考えられるようになるのではないか。
この中動態について語られる7章が学校給食の目的から考え始めているところも興味深いです。
本書の中では、「薬」や「医療」を「食品」「食事」「栄養」と置き換えたり、対比させたりして考えている箇所がいくつもり登場します。ここからもたくさん考えさせられました。
科学理論とクオリアのギャップに注意を向け、そこで言葉にされていない現象を救うことは管理栄養士にも求められることだとも思いますし、我々食品学・食品機能学に関する研究者にとってももちろん必要なことだなと思います。
■10冊目
『アレクシエーヴィチとの対話』
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ, 鎌倉 英也, 徐 京植, 沼野 恭子 岩波書店
「私にとっては、数字や規模などで表される事件事故よりも、人の心がたどる道筋の方がはるかに重要なのです。」
偉大な出来事や英雄的行為だけが語られる「大きな歴史」ではなく、「小さき人々」の声を聞き続けた「耳の作家」アレクシエーヴィチの言葉に耳を傾ける時だ
アフガニスタン戦争にて、数百の亜鉛の棺を前にした将校がこらえきれずにアレクシエーヴィチに向かって言った「私の棺桶だってあそこに並ぶかもしれない。あそこに入れられて…私はここでいったい何のために戦っているんだ」はまさに英雄ではない「小さな人」としての言葉だろう。
これを抱えながら戦地で戦う人々が少なくない人数いるだろうと思うと心が痛い。そして、本当に思っていることは口には出せないと思うと余計に…
徴兵された軍隊で暴力を受ける彼の脱走手引きをして助けた恋人が個人として語る言葉
「チェチェンに行って戦うことに何の意味があるんでしょうか?政府にとっては必要なのかもしれませんが、ロシア人にとってはまったく無意味です。私はそう思います。」
ロシア政府が行うことに意味を見出していない「小さい人々の声があるだろうことを教えてくれる。
最後に
いかがだったでしょうか?
本を読む価値というものがあるとすればそれは、本の中にある情報を知識として得られるということ以上に、自分にはこんなにも知らない価値観や考え方や事実があるんだなと気づけることなのではないかと思います。
ぜひ長い夏休みの期間の中で、自分の中にはなかったものに触れる機会をたくさん作ってほしいなと思います。それがこれからの皆さんの生きる原動力につながるはずです。読書は生きる力を得るための助けになるはずです。この夏いろんな本に出会ってもらえると嬉しいです。