内田百閒『御馳走帖』
好きな和菓子は?と聞かれれば「すあま」と答える。
先日、仕事を早く終わらせた帰りに駅前の和菓子屋で団子でも買って帰ろうとすると「すあま」が並んでいた。
団子とは一線を画すフォルムに一際目を引くピンク色。
食べれば上新粉のもちもちとした食感に、ふんわりとした甘さが優しく感じる。
すあまとの久しぶりの再会を喜び、家族用の団子とは別に、自分用に一つすあまを買って帰った。
すあまとの出会いは、祖母が買ってきてくれたお土産だったろうと思う。
緑茶が大好きな祖母は、お供となる煎餅を複数種類、常にキープしておやつの時間を楽しみにしていた。
墓参りに出かけた帰りには、近所の和菓子屋で必ず団子と一緒に「すあま」を買ってきてくれた。
煎餅も好きだが、その日のうちでしか食べられない柔らかい和菓子も好きだったらしい。
すあまを買ったのは、祖母が亡くなってから初めてかもしれない。
すあまを見ると祖母を思い出す。
内田百閒『御馳走帖』には、食べ物にまつわる"誰か”との記憶がたくさん書かれている。
臆病な部長と食べに行く「河豚」、友人に振る舞った「油揚」、お見舞いにもらったあまりにも大きい「カステラ」、父がぶら提げていた「麦酒の壜」、お土産に買ってもらったが”毛”が生えてしまった「大手饅頭」などなど。
中でも、「シュークリーム」は、祖母を思い出させてくれる大好きなお話。
内田百閒のユーモアと共に、食べ物と人のお話を『ご馳走帖』でぜひ。