見出し画像

世界はまだまだ暖かくて優しいんだ

 最近、社会情勢に目を向けると、国内では物価高騰とゴテゴテの対策、海外に目を向ければウクライナへのロシア侵攻やイスラエルのガザ地区への無差別空爆など、心がチクチクする話題に囲まれ、ついため息をつきたくなる日々が続いていました。

 ただでさえ見えないので、視覚的に明るさから遠い生活を送っているのに、心の中まで暗く沈んだ色に塗られることが多かった先日、ジンワリと心が温まる事件が起きたんです。

ボクは、「埼京線事件」と勝手に名付けたんですけどね、、、。

 それが起きたのは、秋らしい日々が続くようになった10月のとある爽やかな土曜日の夜、、、。

  その日、ボクは、毎年恒例、年末に行うライヴの練習のため、友人の住む埼京線の駅まで出かけていました。
 ボクの場合、使い慣れた駅では駅員さんのサポートを頼むことなく電車を利用するのですが、慣れていない駅では万が一のホームからの転落事故を防ぐためにも駅員さんに電車の乗車だけ、または、乗換駅での援助依頼も含めて依頼することがあります。
 例えば、大宮駅南口の有人改札で、埼京線んに乗車し、池袋で乗り換えて西武池袋線で小手指まで行きたいので案内をお願いしたい旨を伝えると、大宮駅有人改札から埼京線乗車までの駅員さんまたは警備さんによる歩行の誘導、池袋駅で埼京線を下車してからjr改札を通り西武池袋線までの歩行誘導人員の手配、西武池袋線改札からは西武鉄道の係員に引き継ぎ、小手指で下車してから改札を出るまでの歩行誘導と、いたれりつくせりのサポートを受けることができます。
 ただし、乗り換えがある場合などは複数の駅などに人員手配の連絡をしなければならないので、電車に乗るまでに時間がかかることがあります。なので、誘導をお願いする時は、時間にたっぷりゆとりを持って出発することが必要になりますね。また、駅員さんが多忙な時やjr町田駅から小田急町田駅間など、乗り換えの距離が長い時など、特に鉄道会社の改札間の誘導については、サポートを断られたことがあるという視覚障害者の話も耳にしたことがあります。おそらく、改札内は駅係員さんには安全配慮義務があるけれど、改札を出たら義務はないのでしょうね。なので、改札を跨いでの乗り換えは、「駅係員さんの善意」にボクは乗っかっているんだろうなぁ。
 駅係員の皆様、お忙しいところ、いつも誘導していただき(手と目を貸していただき)、ありがとうございます。感謝感謝です。


 さてさて、話を「埼京線事件」に戻しましょうか。
その日、ボクは家に帰るために埼京線を利用しました。

 利用した駅ですが、
1 利用する駅に慣れておらず、階段やホームの構造についての記憶があいまいだったこと
2 改札を入ってから電車に乗るホームまでは、階段などを上り下りして慣れない通路を渡らなければならなかったこと
3 駅のホームの点字ブロック沿いに複数の鉄柱が立っており、とても点字ブロック上を歩きにくかったこと 

 という個人的な背景があったので、有人改札で電車への乗車案内をお願いすることにしたんです。

 駅の有人改札に向けて点字ブロック上を歩いていると、何やら駅員さんとお客さんの賑やかなやりとりが聞こえてきました。

 駅員:「次の電車、のる、乗る、、、。」
お客さん:「アーカーバネ?、、**🌟🌟⭕️▶️❌???」
駅員:」次の、、、デンシャ、、、乗る、、、ノルよー」

 どうやら、外国の方が駅員さんにどの電車に乗れば良いか質問していたようです。それにしても、英語や中国語でもなく、初めて聞いた言葉でした。(何語だったんだろう?)

 乗車する駅の場所的に、たぶん、南アジアのどこかの国の言葉ではないかと想像力を働かせながら有人改札にさらに近づくと、ホームの方へ移動したはずの同じ方が再び有人改札に戻ってきて、

お客さん:「アーーカーーバーーネ? アカー🌟🌟×ばつ🔹???」
 駅員:「次のデンシャ、のる。 ダイジョブ、へいきー。」

 それにしても、だんだんだんだん駅員さんの日本語が外国語化していくのを近くで聞いていて、思わず爆笑しそうでした。
 外国語パワー、強し! です。

 まぁ、その外国人のお客さんとしては、右も左も分からない外国で大きな不安や混乱を抱えながら生きていくために、何度も駅員さんに確認したかったのでしょう。
尊敬すべき、生きる力ですね。

 しばらくすると、吉本のコントのような改札口でのやり取りも終わったようで周囲が静かになったので、駅員さんに乗車案内の手配をお願いしました。 

 「手配しますので、ここでしばらくお待ちください。」と、駅員さんから流暢な日本語で言われ(当たり前か!? 笑)

ちょっぴりニヤニヤしながら有人改札の脇で立って待っていると、、、


 そこへ、、、、


 なんと、、、


 さっきのコントの主役が戻ってきたんです。


 ああちゃーーーー。
 またまた駅員さんとコントを始めるのかなーーと思いつつ様子を伺っていると、


「つーぎ、  デンシャ のるか?? いっしょ?  アーカバーーネーー!?」

のようなことをどうやらボクに話しかけているようでした。
確かめるために、ボクは左手の親指を立てて自分の胸あたりに親指を向けながら、「私ですか?」と、声が聞こえた方を向いて質問したところ、「はーぃはい。」との返事。


 突然エネルギッシュなイケイケ外国人に話しかけられ、ドギマギしてしまったボクは、とっさに

 「大丈夫です。」と日本語で答えてっしまいました。


 あーーーあぁーーーーーっ!

 今度はボクと外人さんで 
 さっきのコントの際限ですよーー

外人さん:「つぎー、  デンシャ いっしょ?  🔶❌⭕️*??」
 ぼく:「I have already asked for help.」
外人さん:「のーる?  いっしょ?」 
ボク:「 No. Thanks.」 
外人さん:「Oh. OK.」

、、、と、なーーんとか意思の疎通が吐かれたようで、外人さんはホームに向けてさっていき、すぐに入線した埼京線に乗っていきました。(、、、たぶん。 見えないから確認してないけど、、、、静かになったし、、、。 笑)

 そうこうしているうちに、ボクのところに駅の係員さんが来てくれたので、無事電車に乗り、帰途に着いたのでした。

 帰り道に、最初は次の日のおもしろ話のネタにでもしようかと、このの出来事を思い出していると、不思議なことに、ボクはだんだんと温かい気持ちに包まれていったのです。


 どうしてだと思いますか?



 ボクは、この日に出会った外人さんについて思いを馳せていました。

1 日本に来ておそらくは日がまだ浅く、交通事情もよくわからない。
2 日本語もまだよくわからない。

 おそらくは、こんな背景の中で頑張って日本という外国で生活を送っているのでしょう。

 もしこれが自分だったら、と置き換えて考えると不安だらけでストレスフルな日々になるのは確定的ですね。きっと、自分の生活を維持するだけでいっぱいいっぱいになって、他の人や物事に気を回す余裕なんてないですよね


 しかーーーーーし、


 この外人さんは、自分の行き先への行き方すら定かでないのに、白杖を持って立っていたボクを発見して、言葉がうまく伝わらないのにも関わらず、助けの手を 差し伸べてくれました。


 すごくないっすか?みなさんにはできますか?、、、ボクには、、、 たぶん、できません。


 いやーーー。
 この外人さんのすごさに気が付いた時、ボクは久しぶりに心がポカポカしたんです。

 自分に余裕がない時にでも、他の人(文化も言葉も異なる見知らぬボクも含めて)助けの手を差し伸べられる人がいることを実感することができて、ボクはとても幸運だなーと思い、暖かな気持ちで満たされました。

 ボクもこの外人さんのように、どんな時にでも周りに助けの手を差し伸べられる人になりたいなー。

 外人さん、どうもありがとーー!

 無事、目的地に着いていますように、、、。



 最近、重苦しくてモヤモヤする日が続いていたけど、世界は、まだまだ暖かくて優しいんだなー

 なんてことを考えながら、ほっこりしつつ帰宅しました。


いいなと思ったら応援しよう!