JW203 稲葉より愛を込めて
【孝元天皇編】エピソード6 稲葉より愛を込めて
第八代天皇、孝元天皇(こうげんてんのう)の御世。
すなわち、紀元前210年、皇紀451年(孝元天皇5)春正月、思兼神(おもいかねのかみ)が降臨した。
それから、数日後か、数か月後のこと。
ここは、軽境原宮(かるの・さかいはら・のみや)。
稲葉国(いなば・のくに:現在の鳥取県東部)から、ある豪族が来訪していた。
先に紹介しておこう。
ジョージとマイケルである。
ジョージ「エピソード197以来だで! そんで、ヤマトに来るんは、初めてだで。」
マイケル「き・・・緊張して来たのう・・・。」
そこに、孝元天皇こと、大日本根子彦国牽尊(おおやまとねこひこくにくる・のみこと)(以下、ニクル)がやって来た。
ニクル「待たせたのう・・・。我(われ)が大王(おおきみ)じゃ。」
ジョージ「さ・・・笹福(ささふく)様の皇子(みこ)だいや(ですか)?」
マイケル「ジョ・・・ジョージ! 何、言っとっだいや(何を言ってるんだ)!? それに、先代のことは、諡(おくりな)で呼ばんといけんじゃろう!」
ジョージ「あっ! そげか! ええっと、大日本根子彦太(おおやまとねこひこふと)・・・。」
ニクル「良い、良い。笹福様で、良いぞ。」
マイケル「も・・・申し訳ありませぬ。」
ニクル「して、汝(いまし)らを呼んだのは、他でもない。鷲峯山(じゅうぼうやま)の一件について、聞いておきたいからじゃ。」
ジョージ「そ・・・そげですねぇ。突然、大きな鷲(わし)に乗った神様が降臨したんだで。」
ニクル「大きな鷲? して、どの神様であったのじゃ?」
マイケル「その神様は、八千矛神(やちほこのかみ)だで。」
ニクル「八千矛神? 初耳じゃな?」
マイケル「大己貴命(おおなむち・のみこと)と言えば、分かるじゃろ?」
ニクル「なっ! それは、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)のことではないか!?」
ジョージ「そげです。そげです。この物語では『くにやん』と呼ばれちょる神様だで!」
ニクル「く・・・くにやん?」
すると、まばゆい光と共に「くにやん」が現れた。
くにやん「初めまして。僕が『くにやん』だよ。ちなみに、出雲大社の正式な読み方は『いづもおおやしろ』なんだよ。覚えておいてね。」
ニクル「な・・・なんと・・・。大神が降臨あそばされるとは・・・。」
ジョージ「大神を拝(おが)むことが出来るとは・・・。や・・・役得(やくとく)だで・・・。」
マイケル「笹福様に感謝せんとなぁ。」
くにやん「ところで、ジョージ、マイケル。」
ジョージ・マイケル「何だいや(何でしょうか)?」×2
くにやん「僕は、鷲峯山が気に入ったんだよ。だから、社(やしろ)を創建してくれないか?」
ニクル「ま・・・まさか、この伝承がもとで、神社が創建されておると?」
くにやん「その通りだよ!」
ジョージ「分かったで! 『くにやん』がお願いしちょるんだけぇ、建てんといかんじゃろ!」
マイケル「そ・・・そげだな。」
ニクル「して、社名は?」
くにやん「そんなの決まってるじゃないか。僕が、鷲に乗って降臨したから、鷲峯山(じゅうぼうやま)・・・。その地に鎮座(ちんざ)するんだから、鷲峯神社(じゅうぼうじんじゃ)だよ。」
ジョージ「そげですね! そげですね!」
マイケル「鎮座地は、鳥取県鳥取市鹿野町鷲峯(しかのちょう・じゅうぼう)に決定だで!」
くにやん「うん! すごくいいと思うよ!」
ニクル「そ・・・そうなりまするか・・・。」
くにやん「ちなみに、お義父(とう)さんの素戔嗚命(すさのお・のみこと)と、お義母(かあ)さんの櫛名田比売(くしなだひめ)も祀(まつ)るよ。」
ニクル「で・・・では、そういうことで、ジョージ、マイケル。社(やしろ)の創建がこと、よろしく頼むぞ。」
ジョージ・マイケル「任せてごせ(ください)!」×2
くにやん「これで一安心だね。じゃあ、僕は帰るよ。」
ニクル「もう、お帰りになられるのですか?」
くにやん「僕のことより、ジョージとマイケルと一緒に、先代の話をすれば良いと思うよ。こんな機会は、滅多に無いことなんだからさ。」
ニクル「お・・・大国主大神・・・。」
くにやん「あっ! ちなみに、今年の7月のことなんだけど・・・。」
ニクル「な・・・何かあると申されまするか?」
くにやん「秦(しん)の始皇帝(しこうてい)が死んじゃうよ! じゃあねぇぇぇ。」
そう言いながら、大国主大神は消えていったのであった。
マイケル「よう分からん言の葉を使っちょったなぁ。」
ジョージ「だいど(だけど)、笹福様と出会い、共に稲作教室に励み、おかげで、ヤマトも見ることが出来て、そして、大国主大神を拝むことが出来るとは・・・。」
マイケル「おう! これぞロマンであるな!」
ニクル「そ・・・それは、先代・・・父上の口癖(くちぐせ)ではないか・・・。」
ジョージ「大王も御存知で?」
ニクル「当たり前ではないか・・・。幼き頃から、聞き慣れた言の葉よ・・・。」
マイケル「では、大王! わしらの知らん、笹福様のこと、教えてごせ(ください)。」
ニクル「うむ。我(われ)も聞きたいぞ。稲葉での父がこと・・・。」
ジョージ「そげですなぁ。あれは、笹福様が皇子と呼ばれちょった頃のことだけぇ、大王が生まれる前のことだで。」
マイケル「エピソード136のことだな。隠伎(おき:現在の隠岐の島)に黄魃鬼(こうばつき)という賊がおったんだで。」
ニクル「おお、黄魃鬼か・・・。名は存じておるぞ・・・。」
こうして、三人は遅くまで、先代について語り合ったのであった。
つづく
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