JW181 新たな敵
【孝霊天皇編】エピソード36 新たな敵
第七代天皇、孝霊天皇(こうれいてんのう)の御世。
孝霊天皇こと、大日本根子彦太瓊尊(おおやまとねこひこふとに・のみこと)(以下、笹福(ささふく))は、伯伎国(ほうき・のくに)にて、稲作教室と製鉄教室に勤(いそ)しんでいた。
ちなみに、伯伎国とは、現在の鳥取県西部である。
教室には、大后(おおきさき)の細媛(くわしひめ)(以下、細(ほそ))なども参加し、かなりの大所帯となってしまったのであった。
そして、十二年の時が流れた。
すなわち、紀元前234年、皇紀427年(孝霊天皇57)のことである。
笹福「・・・ということで、改めて、上菅(かみすげ)の行宮にいる者たちを紹介しようではないか。ちなみに、行宮は、二千年後、菅福神社(すげふくじんじゃ)となっておるぞ。」
細「では、まず、大王(おおきみ)の子供たちから紹介致しましょう。鶯王(うぐいすおう)殿。彦狭島(ひこさしま)こと歯黒(はぐろ)殿。彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)こと芹彦(せりひこ)殿。稚武彦(わかたけひこ)こと、タケ殿。そして、娘の・・・。あら? 福姫(ふくひめ)は?」
そこに、大臣(おおおみ)で、細媛の父でもある、磯城大目(しき・の・おおめ)がやって来た。
大目「遅れて申し訳ないんじゃほい。福姫を連れて来たんじゃほい。『ふぅ』と呼んでほしいんじゃほい。」
ふぅ「父上! 母上! ええ塩梅(あんばい)だったが!」
笹福「伯伎の言の葉で、気持ち良かったということじゃな? それで、何があったのじゃ?」
大目「温泉に行っていたんじゃほい。どこに行っていたかは、聞かないでほしいんじゃほい。」
笹福「なるほど。どこかは分からぬが、温泉に行ったという伝承が有るのじゃな?」
ふぅ「何度も行っちょったんだけんど、分からんみたいだがん。名前は『井原(いはら)の温泉湯』って書かれちょるんだけんど・・・。」
大目「そうなんじゃほい。菅福神社から四キロほど離れたところに有るらしいんじゃほい。」
ふぅ「川の対岸にある、福長(ふくなが)っていう地名も、わ(私)が長い道のりを歩いたけん(から)、付いた地名みたいなんだわね。」
笹福「なるほど。福姫が長い道のりを・・・。それゆえ、福と長が、くっ付いたというわけか・・・。」
細「では、ふぅちゃん。帰って来たついでに、同行者の紹介に加わりますか?」
ふぅ「ええんだか(良いのですか)?」
笹福「うむ。『ふぅ』も十三歳じゃ。そろそろ良かろう。」
ふぅ「やったぁ!」
笹福「さきほどまでは、皇子(みこ)たちの紹介をしていたところじゃ。」
ふぅ「そげですか。じゃあ、次は、物部氏(もののべ・し)を紹介するだがん。こちらからは二人、参加しちょります。大水口(おおみなくち)こと『みなお』殿と、大矢口(おおやぐち)こと『ぐっさん』だがん。」
笹福「うむ。それから、あとは誰が居る?」
ふぅ「芹彦兄上の奥方様だがん。百田弓矢姫(ももたのゆみやひめ)こと『ユミ』殿だがん。」
笹福「ヤマトから来た者たちは、これで、以上じゃな。」
ふぅ「では、次に、伯伎国で教室に加わった方を紹介するだがん。牛鬼(ぎゅうき)殿だがん!」
そこに、件(くだん)の牛鬼がやって来た。
牛鬼「ふぅさまぁ! わしのこと、忘れずに紹介してくれたんかや? だんだん、だんだん(ありがとうございます)!」
笹福「我(われ)も忘れては、おらなんだぞ!」
牛鬼「いやぁ。兄貴は、怪しいけん(から)・・・。」
笹福「なにゆえじゃ!?」
ふぅ「されど、なにゆえ、牛鬼殿は、父上のことを『兄貴』と呼んどるんです?」
牛鬼「あれは・・・大倉山(おおくらやま)でのことだったげな・・・。」
笹福「ま・・・まあ、それについては、また後日ということで良いではないか。」
牛鬼「ええぇぇ!! 何度でも話したいんだがね!」
笹福「エピソード177を読めば、済むことじゃ。それより・・・。」
細・大目・牛鬼・ふぅ「それより?」×4
笹福「なにゆえ、今年(孝霊天皇57年)が取り上げられておるのじゃ?」
細・大目・牛鬼・ふぅ「あっ!」×4
ふぅ「そげですねぇ。なにゆえだねか?」
するとそこに、伯伎の住人がやって来た。名は、ジムと言った。
ジム「お初にお目にかかりまする。『ジム』だがん!」
笹福「またまた、作者による変な命名か・・・。」
ジム「そげなこと、言わんでごしない(言わないでください)。」
笹福「して、何かあったのか?」
ジム「そげだがん(その通りです)。わ(私)たちが暮らしちょる印賀(いんが)に・・・。二千年後で言う、鳥取県日南町印賀(にちなんちょう・いんが)に、鬼が現れたんだがな!」
笹福「なに!? 鬼じゃと!? して、名は何と申す鬼か?」
ジム「名前は残っちょらんので、分からないんだがな。」
笹福「何を言っちょうだ(言ってるんだ)! 名が分からねば、何と呼べば良いのじゃ!?」
ジム「そげに仰ると思って、作者に付けてもらったが。」
笹福「作者に? い・・・嫌な予感がする・・・。」
ジム「その名も『デーモン』だがん!」
笹福「また、よく分からぬ、異国(とつくに)の名か!」
ジム「だいど(だけど)、さんだがない(酷くてどうしようもない)鬼なんだが! お願いだけん(だから)、なんとか退治(たいじ)てごしない(ください)。」
笹福「致し方ない。では、印賀に向おうではないか。」
細「わらわも『ふぅちゃん』と共に参ります。」
笹福「何を言っちょうだ! 危ない目に遭(あ)うやもしれぬのじゃぞ?」
細「されど、伝承では、付いて行っておりますので・・・。」
こうして、笹福は、細媛や福姫を連れて、印賀に向かったのであった。
つづく
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