JW437 振根、激怒
【崇神経綸編】エピソード12 振根、激怒
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前38年、皇紀623年(崇神天皇60)秋。
ここは、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)。
崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)の元に、出雲(いずも)からの使者が来訪していた。
使者とは、下記の通りである。
出雲君(いずも・のきみ)の弟、甘美韓日狭(うましからひさ)(以下、カラピー)。
そして「カラピー」の息子、鸕濡渟(うかずくぬ)(以下、ウカズ)である。
今回の「ヤマト」側の使者となった、物部大母隅(もののべ・の・おおもろすみ)(以下、ロス)の姿もある。
大臣(おおおみ)の物部伊香色雄(もののべ・の・いかがしこお)(以下、ガーシー)が、まず、口を開いた。
ガーシー「出雲よりの使い、『カラピー』殿と『ウカズ』殿やで。」
ミマキ「うむ。遥々のお越し、痛み入る。して、これが神宝か?」
カラピー「そげです。具体的に説明出来ぬのが、悔(くや)しゅうござりまする。」
ロス「せやねん。どんなモノだったのか、全く書かれてへんねん。」
カラピー「ちなみに、我(われ)は、エピソード296以来の登場にござりまするぞ。」
ウカズ「そして、我(われ)が『カラピー』の息子『ウカズ』にござりまする。」
ミマキ「左様か。して、これより、出雲は、ヤマト政権に与(くみ)するということじゃな?」
カラピー「そげです。もはや、出雲に力はありませぬ。無駄な血は流すべきではないと・・・。」
ミマキ「出雲君である振根(ふるね)殿については、如何(いかが)致すのじゃ?」
カラピー「その辺は、我(わ)が兄、飯入根(いいりね)が、なんとか説き伏せる所存にて・・・。」
ミマキ「こちらとしても、血は見とうない。穏(おだ)やかに済むと良いのう・・・。」
こうして、神宝は「ヤマト」に渡った。
それからしばらくして、振根が、筑紫(ちくし:現在の九州)から出雲に戻ってきた。
そして、ことの顛末(てんまつ)を聞いたのであった。
振根「なんじゃと! なにゆえ、わしが戻ってくるまで待てなかった! 何を恐れて、容易(たやす)く神宝を手放した! これでは、出雲が、夜麻登(やまと)に降ったも同じだに!」
飯入根「我が君! 出雲は降ったんだに。もう争う時ではないんだに。」
振根「この『だらず(馬鹿者)』が! 何を言っちょうだ! わしは、そげなこと、認めんぞ!」
飯入根「神宝を送ったのですぞ? そげなことをしたら、ヤマトへの裏切りになるっちゃ。」
振根「裏切りだと? 飯入根よ。この国の主(あるじ)は、誰だ?」
飯入根「そ・・・それは、兄上にござりまする。されど、出雲の行く末を想えば・・・。」
振根「出雲君が、あずかり知らぬことを約定(やくじょう)と呼べるか?」
飯入根「あ・・・兄上・・・。」
振根「とにかく、神宝を取り戻すっちゃ! 戦(いくさ)だに!」
激怒する振根に、飯入根は、何も言い返せなかったのであった。
それから、しばらくして・・・。
飯入根「まさか、作者オリジナルの展開で、あそこまで言われるとは思わなかったに・・・。」
するとそこに、振根がやって来た。
振根「弟よ。さっきは悪かったに。頭に血がのぼって、落ち着いて考えることが出来なかったに。」
兄弟の対話はつづく。
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