JW179 水音がうるさくて
【孝霊天皇編】エピソード34 水音がうるさくて
第七代天皇、孝霊天皇(こうれいてんのう)の御世。
すなわち、紀元前246年、皇紀415年(孝霊天皇45)5月。
大后(おおきさき)の細媛(くわしひめ)(以下、細(ほそ))は、妊娠した状態で、孝霊天皇こと笹福(ささふく)の後を追ったのであった。
同行する者は下記の通りである。
百田弓矢姫(ももたのゆみやひめ)(以下、ユミ)。
細の父親、磯城大目(しき・の・おおめ)。
宿禰(すくね)の物部大水口(もののべ・の・おおみなくち)(以下、みなお)。
そして一行は、伯伎国(ほうき・のくに)に入ったのであった。
現在の鳥取県西部である。
もちろん、最初に訪れたのは、妻木邑(むき・のむら)であった。
細「ここが・・・妻木(むき)なのですね?」
大目「二千年後の言い方をすれば、鳥取県大山町妻木(だいせんちょう・むき)なんじゃほい。」
そこに村長(むらおさ)のヘンリーと、笹福の妃、朝妻姫(あさづまひめ)がやって来た。
ヘンリー「お初にお目にかかりまする。ヘンリーだがん。」
朝妻「わ(私)が朝妻にございます。」
細「汝(いまし)が朝妻殿ですか? 会いたかったのですよ!」
朝妻「お・・・畏(おそ)れ多いことだがん。」
細「気になさらないでください。ただ、大王(おおきみ)が、心から慕われた女人(にょにん)とは、一体どのような御方なのか、見てみたかったのです。」
朝妻「そ・・・そげなこと・・・。」
細「わらわは、別に大王を慕って嫁になったのではありません。あくまで、家と家を結ぶため・・・。」
朝妻「お・・・大后は、大王を慕ってはおられんだか?」
細「そんなことはありません。大王を慕っていないというわけではないのですよ。ただ、家との結び付きに捉(とら)われず、大王が慕われたのは、他でもない、汝(いまし)です。」
朝妻「そ・・・そげなこと言われても、困ります。」
細「まことに慕い合(お)うて、夫婦(めおと)となる者は、如何様(いかよう)なものなのか、昔から興味が有ったのです。今日は、汝(いまし)に会えて、本当に嬉しいのです。」
朝妻「そ・・・そげな・・・。」
ユミ「ところで、朝妻殿。うちの人、知りません? 髭(ひげ)もじゃの暑苦しい奴なんですけど?」
朝妻「あ・・・暑苦しい? 彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)こと芹彦(せりひこ)殿かや?」
ユミ「それで分かっちゃうって、ちょっと複雑・・・(´;ω;`)。」
朝妻「大王たちなら、今は、南の大倉山(おおくらやま)に行っておられます。そこから少し北の地で、たたらなんとかをしちょるそうだがん。今は、大王が居られるけん(から)、都郷(つごう)と呼ばれちょります。」
ヘンリー「二千年後の言い方をすれば、鳥取県日野町上菅(ひのちょう・かみすげ)だがん。そこの都合山(つごうやま)で、たたら製鉄をしちょるそうだが。稲作教室だけでなく、製鉄教室も、やっちょるようだがな。」
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