JW182 印賀と鬼と
【孝霊天皇編】エピソード37 印賀と鬼と
第七代天皇、孝霊天皇(こうれいてんのう)の御世。
すなわち、紀元前234年、皇紀427年(孝霊天皇57)。
孝霊天皇こと、大日本根子彦太瓊尊(おおやまとねこひこふとに・のみこと)(以下、笹福(ささふく))は、伯伎国(ほうき・のくに)にて、稲作教室と製鉄教室に勤(いそ)しんでいた。
伯伎国とは、現在の鳥取県西部のことである。
そんなある日、印賀(いんが)という地に鬼が現れる。
それを聞いた笹福一行は、早速、平定に向かうのであった。
ここで、印賀の住人、ジムが叫んだ。
ジム「わ(私)たちが暮らしちょる印賀(いんが)に・・・。二千年後で言う、鳥取県日南町印賀(にちなんちょう・いんが)に、鬼が現れたんだがな!」
笹福「・・・ということで、我(われ)らは行宮(あんぐう)を出て、印賀に向かったのじゃ。」
細「行宮とは、二千年後の菅福神社(すげふくじんじゃ)にございます。」
ふぅ「えっ? 高宮神社(たかみやじんじゃ)ではないんだねか?」
笹福「高宮神社?」
牛鬼「さすがは『ふぅさま』! 元々は、高宮神社と呼ばれちょったんだが。そげなことで、地元の人も、高宮大明神とか、皇宮大明神と呼んどったんだがね。」
細「では、ある時から、名が変わったということですか?」
牛鬼「そげだがん(その通りです)! 西暦1920年、皇紀2580年(大正9)に、周辺の小社八社を合祀(ごうし)したんだけんど、その際に、菅福神社と改称されたんだが。」
笹福「そげか。されど、『ふぅ』は、なにゆえ、それを知っておったのじゃ?」
ふぅ「牛鬼殿に教えてもらったんだがん。」
笹福「なるほどのう。我(われ)の知らぬところで、そげなやり取りをしておったのじゃな?」
牛鬼「へ・・・変なことは吹き込んでないけん(から)、安心してごせ(ください)。」
笹福「分かっておる。」
みなお「ところで、大王。印賀の鬼の名前が『デーモン』になったっちゅうのは、ホンマ?」
笹福「認めたくはないが・・・。そうなってしまったようじゃな。」
ぐっさん「へ・・・変な名前やなぁ。」
そんなことを語らっている内に、一行は、印賀に辿り着いたのであった。
鶯王「では、大王(おおきみ)。ただちに行宮を築きまする。」
笹福「うむ。この行宮が、のちに樂樂福神社(ささふくじんじゃ)となったのであろうな。」
タケ「なったのであろう・・・ということは、はっきりとは分からぬのですか?」
笹福「そげだ。行宮であったとは書かれておらぬ。」
大目「しかし、樂樂福神社の名前から考えても、この地以外に考えられないんじゃほい。」
芹彦「ん? どういうことじゃ? 神社の名前?」
ユミ「漢字は違うけど、大王の諱(いみな:本名のこと)が付いてるでしょ?」
芹彦「なっ! なんとぉ! その手があったか!」
笹福「我(われ)の名は、笹福ゆえな・・・。」
牛鬼「いつも兄貴と呼んどるけん(から)、知らんかったが! ということは、樂樂福神社に祀(まつ)られちょるんは、兄貴ってことになるんだねか?」
笹福「う・・・うむ。ま・・・まあ、その通りじゃ。」
牛鬼「どげしたんです? 歯切れが悪いようですが?」
笹福「まだ生きておるというに、己(おのれ)が祀られた神社の話というのは・・・どうも、しっくり来ぬのよ。」
牛鬼「確かに! そげですな。((´∀`))」
そのとき、怪しげな笑い声が轟いてきた。
謎の笑い声「フハハハハ・・・。紙面の都合で、出て来てやったぞ! かたじけなく思うが良い!」
笹福「も・・・もしや、汝(なびと)は?!」
謎の笑い声「その通り! 吾輩(わがはい)が『デーモン』である!」
歯黒「デーモンよ! 印賀で暴れまわるとは、如何(いか)なる了見(りょうけん)ぞ!?」
デーモン「食い物を求め、各地を彷徨(さまよ)い、この印賀に辿り着いたのよ。」
印賀の鬼たち「閣下! これからも付いて行きますぜっ!」×多数
笹福「これ以上の乱暴狼藉(らんぼうろうぜき)、捨て置けぬっ! 皆の衆、戦(いくさ)にござる! 細(ほそ)! 汝(いまし)は『ふぅ』と『ユミ』を連れて、後ろに下がっておれっ!」
細「かしこまりましたっ!」
ふぅ「父上! 頑張って!」
笹福「うむ。『ふぅ』よ。父が槍働き(やりばたらき)、如何(いか)なるものか、刮目(かつもく)すべしっ! では、各々方(おのおのがた)! いざ、攻めかかれぇぇ!!」
笹福一行「おおっ!!」×多数
デーモン「小癪(こしゃく)なるかな、ヤマト人(びと)! てめぇら! 斬り結べぇぇ!!」
印賀の鬼たち「よっしゃぁぁ!!」×多数
こうして、笹福一行と印賀の鬼たちの戦が始まったのであった。
一方、そのころ、出雲(いずも)では、出雲君(いずものきみ)の知理(ちり)と家来の明速祇(あけはやづみ)(以下、あっくん)が、浜辺で語らっていた。
知理「なあ、あっくん? 素戔嗚命(すさのお・のみこと)こと『スーさん』が、報せに来てから何年になる?」
あっくん「十二年にござりまする。」
知理「まことに月支国(げっしこく)は攻めて来るのか? わしら、騙(だま)されちょるんではないか?」
あっくん「い・・・いやぁ。さ・・・されど『スーさん』が嘘を吐くとは・・・。」
知理「されど、攻め込んでくる気配が、全く無いではないかっ!」
あっくん「それは、それで、よろしいのでは?」
知理「良くない! わしらが、海岸防備に勤(いそ)しんでおる間に、ヤマトの笹福は、伯伎(ほうき)で我が物顔となっておるのだぞ!? このままでは、稲葉(いなば)、隠伎(おき)につづき、伯伎までヤマトの手に・・・。」
月支国は、本当に攻め込んで来るのであろうか?
そして、印賀の鬼との決着は如何に?
次回につづく
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