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選択肢を与えればよいわけではない。

授業の中で、選択式の課題を設定したことは今までにもあった。
「課題を選択式にすれば、生徒の学習意欲が高まるだろう」という浅はかな意図しかないままに、授業づくりを行っていたこと。
この本を読んで、そのことに気づかされた。

ストレッチゾーンにいるということ

この本の序盤に、ヴィゴツキーの発達の最近接領域(ZPD,Zone of Proximal Development)という言葉が頻繁に出てくる。

😙コンフォートゾーン(簡単にできる)
😕ストレッチゾーン(できるかどうかは頑張り次第)
🤯パニックゾーン(ほぼ無理)

ZPDを簡単に表現すると、ストレッチゾーンである。
例えば、自転車に乗れない子どもを想像してほしい。

😙補助輪ありで乗る(簡単にできる)
😕後ろに手を添えてもらいながら、補助輪なしで乗る(できるかどうかは頑張り次第)
🤯補助輪なしで乗る(ほぼ無理)

ストレッチゾーンにい続けることは、かなりエネルギーを消耗する。
しかし、ストレッチゾーンはやがてコンフォートゾーンに代わり、さらなる成長を可能にする。

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学習についてもこれが言える、ということである。

「なぜ、この言葉についての説明が多いのだろう?」と思いながらも読み進めていくと、後半にこのような言葉が出てきた。

よい選択方法を教えることなく生徒に選択をさせることは、子どもに運転の仕方を教えずに車のキーを渡すようなものです。(P150)

なるほど、「よい選択肢」はZPD内にあるということである。
当然、「よい選択肢」は生徒によって異なる。

よい選択をするためには、自分の能力やスキルについて、十分な理解がなされていないといけない。
つまりメタ認知が重要になってくる。
選択する学びは、自分の知性を俯瞰する自己認識能力を育てることにもつながる。

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「よい選択肢」を選ぶとはどういうことか。
「よい選択肢」を選ぶための方法とは、どのようなものか。
また、よい選択によってどんなメリットがあるか。

今までの授業で伝えたことがなかったので、反省。

最後に、生徒が何を学んだのか、どのように学んだのか、選択が自分の学びをどのように助けたのか(あるいは助けなかった)のかについて、よく考える機会を提供します。(P155)

結局のところ選択することは手段であって、それ自体は目的ではないということです。(P158,159)

目に見えないものが学びを支える

教育は環境や習慣、継続だということを、たびたび痛感する。
学習において、「自分がどのゾーンにいるか?」ということを考える習慣は、様々な要因の積み重ねでしか達成されない。

「選択する学び」の効果を高める方法は、多くが以下のような目に見えないファクターを重要視している。

学習環境のソフト面で最も重要な要素の一つは、肯定的な人間関係を築くことです。(P56)

毎日決まって行うこと(ルーティン)をコミュニティーづくりに活用する(P63)

教室をよりサポーティブで安心できる場にしたいなら、使う言葉は、競争ではなく協働、量ではなく質、比較ではなく振り返りを重視しなければなりません。(P67)

教師はコーチの役割を担い、生徒のニーズに応じて、指導したり、サポートしたり、問題解決をしたり、励ましたりします。(P155)

教師も生徒にとっては環境の一つである。
教師の在り方、教室の在り方、生徒の在り方。
学習は、それらに大きく左右される。

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逆に、習慣や環境を味方につければ、学習効果は何倍にも膨れ上がるのだとも思う。

次からは「選択する意味」を伝えます

今年度は、今もっている3年生の授業は終わってしまう。
30日もせずに。
もう卒業してしまう彼らに、伝えられないのがもどかしい。

次なる生徒たちに伝えるべく、自分への戒めの意味も込めて……この本を皆様にお薦めしたいと思う。

PLC便りにも取り上げられているので、ぜひ。

そして、前回の記事もよろしければ。


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