連載「菌活ボーイがゆく」⑫
⑫三きょうだい
わが家には、こうじボトルが三つある。
長男の菌太郎は発酵が進んで、マイルドな性格。
次男の菌次郎は唐辛子の量が多めで、やや辛口だ。
いずれも褐色マッチョの醤油こうじブラザーズ。
最近、コウノトリが飛んできて、色白のニンニク塩こうじも育てることになった。
僕は、「ソル子」と呼んでいる。
多忙なサラリーミャン生活。
男の細腕で、3本も育てられるのか。
「不安です」
涙ぐむ僕に、さっちー師匠がアドバイス。
「塩こうじでお肉をもみ込めば、どんな料理もおいしくなる」
もみ込むことからして、めんどうなんですけど…。
僕はぐっと言葉を飲み込んだ。
昨夜、フライパンで焼肉しようとして、ふと師匠の言葉が聞こえた気がした。
「めんどうなら、垂らしてみるにゃ~ホトトギス」
お言葉に従い、ボトルを傾け、ソル子をぽたぽた――。
うまあ~~~っ!
肉と塩こうじのハーモニー。
ニンニクのうまさと香りも口いっぱいに広がる。
おひとり様生活も3年目。
さっちー師匠、僕はいま、幸せに暮らしています。
(続く)