やりたいことはヘドロのように。
仕事の話。
生命保険営業の仕事をしていたとき、何が最も大変だったかというと「見込み客を探す」ということだった。
すべての「新規営業」という仕事に共通するものかと思うけど、自分の話を聞いてくれる人を「見つける」というのはなかなか難しい。
ルート営業ならば、もちろん難しさはあると思うけど、見込み客は割り振られている。そこに通って、何かの情報を仕入れ、こちらからも情報を与えられれば、これすべてうまくいく。
すべて事業活動というのは「話を聞いてくれる人」がいてなんぼである。
どんな営業でもそうだと思うけども、新規の見込み客をリストアップする作業があることと思う。A社、B社、C社……Z社まで続く、終わりのない作業。
生命保険の営業をやっていたときに、尊敬すべき上司に言われたのは「ヘドロに気をつけろ」であった。
自力でがんばって見つけてきた、虎の子の新規営業先。がんばって仕事の話をして、契約へと結びつけようと躍起になる。
すべてがうまくいくはずもなく「また機会があれば」とか「いいタイミングになったら」とか「今回はなかったことで」だとか、まあ契約に至らない、というケースがよくある。
ヘドロに気をつけろ。
ヘドロというのは営業マンが「契約見込み先だと思い込んでいる」お客様のことを指す。今はダメだけど、いつかは契約になるのではとか、この人は話した感じ反応は微妙だったけど"おそらく"契約になるだろう、と思い込んでしまうお客様のこと。
これを指して「ヘドロ」と表現する。
すべての営業マンには、ヘドロになっている見込み客が存在する。
見込み客探しというのは、水道とコップの関係と同じだと過去の上司に言われた。
綺麗な水が出てくる水道に、自分のコップを差し出す。綺麗な水はコップに溜まっていく。しかし、これを長い時間放置していると、その水はやがてくすんできて、最後にはヘドロ化するのだと。
このヘドロに希望を見出してしまうと、次は水道の蛇口をひねるという作業をストップしてしまう。「自分にはこれだけの見込み客がいるのだ」と勘違いしてしまう。新規先を探す、という行為をストップして、負のスパイラルに入ってしまうから気をつけろ、と言われた。
ではヘドロはどうすればいいのか。
単純な話で、契約になるのか、ならないのか、きちんと返事をもらえばいい。コップに水をいかに溜めないようにするかが大事だ。「いつかは」とか「もしかしたら」というこっちの思い込みは不要ということ。
この、ヘドロという考え方。
やりたいことリストにも似ている。
ヘドロのようになっている自分の願望はないだろうか。いつか中国語を勉強する、いつかは注目される人間になる、いつか海外旅行に行く、いつかは自分で会社を作る、いつかは、いつかは、もしかすると、……でも、やってないこと。
これらはすべてヘドロのように私たちのコップに溜まって、何も行動に移せなくなる原因になる。
営業と同じことで、このヘドロを綺麗さっぱり洗い流して、次の行動をしていきたいものだ。結局は行動しないとね、という話。
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