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奇縁堂だより 32【本の紹介 : 直木賞③】

 一回飛びましたが,「奇縁堂だより29」「奇縁堂だより30」に続き,直木賞受賞作を紹介します。
 今回は第123回(2000年上半期)から第135回(2006年上半期)までの受賞作で,在庫がある5作品を紹介します。この辺りの受賞作から,映像化される作品が増えてきています。作品を読んだことはないけれども,映画化された作品やドラマ化された作品なら観たことがあるという人も多いのではないでしょうか。
 まだ原作を読んでないという方は,映像とは違った楽しみ方できるともいますので,ぜひ読んでみてください!

紹介作品一覧

○『GO』
○『後巷説百物語』
○『容疑者Xの献身』
○『風に舞い上がるビニールシート』
○『まほろ駅前多田便利軒』

作品紹介

『GO』 金城一紀 文庫 ¥150 (税込)
 第123回受賞作
 この物語は"僕"の物語。
 「広い世界を見るため」に,"僕"はあることを実行する。
 それは,在日朝鮮人から在日韓国人になり,そして民族学校ではなく都内の男子校に入学することだった。いろいろ手続きや親とのやりとりが大変だったものの,なんとか成功する。
 「広い世界」に飛び出したある時,友人の誕生パーティーに参加した際に,一人の女の子に出会う。そして"僕"は彼女に恋をする。

 「在日」として葛藤やアイデンティティの確立に悩む青年の心の内がしっかりと描かれています。「在日」だということで直面する問題や差別も描かれていますが,そのことは決して主題ではなく,あくまで"僕"の(恋愛)話の一つの要素です。
 登場人物の描写が上手く,物語の中に入り込みやすいので,一気読みすること間違いなしです!


○『後巷説百物語』 京極夏彦 四六判 ¥450 (税込)
 第130回受賞作
 「巷説百物語」シリーズの3作目です。前作までは江戸時代が舞台でしたが,本作品は明治時代へと舞台が変わります。
 警視庁の一等巡査である矢作剣之進は友人の笹村与次郎らと共に,ある伝説についての真偽を確かめるために奇妙な老人・一白翁の元を訪れる。
 その老人が,前作までの物語の主人公であった三度の飯より怪談が好きな山岡百介だった。そして百介は過去に体験したという怪異な話を剣之進らに語り始める。
 
 前作までの作品を読んでいる方は,この作品で語られる百介と又一らの関係に心打たれるものがあると思います。百介がメインの百物語はこの作品で終わりなので,前作までを読んでいる人は必読です!もちろん前作までを読んでいない人も楽しめる内容です!
 ちなみに,シリーズ2作目の『続巷説物語』と5作めの『西巷説物語』も販売しております。


○『容疑者Xの献身』 東野圭吾 四六判 ¥330 (税込)
 第134回受賞作
 湯川の大学の同期であり,彼から天才数学者と評される石神。しかし石神は研究者としてではなく,高校教師として天才数学者とは思えない生活を送っていた。
 そんな石神にも想いを寄せる人がいた。それは一人娘の美里と隣の部屋に住む花岡靖子であった。ある日,靖子の別れた夫・富樫が彼女たちの部屋を訪れる。そして彼女たちに金を要求し,暴力まで振るう。耐えかねた靖子と美里は冨樫を殺してしまい,途方に暮れる。そこに石神が現れ,二人を救うために完全犯罪を計画する。
 警察は花岡親子に疑いを向けるが,決め手が全くない。捜査が難航する中,刑事の草薙は湯川の元を訪ねる。そして湯川が天才・石神が考えた謎に挑むことになる。果たして,石神が考えた完全犯罪のトリックとは?

 石神が天才だから,石神の靖子に対する想いが本物だったからこそなしえたトリックです。この作品はミステリーであると同時に,一人の男の"想い"描いた小説です。石神の深い想いに心揺さぶられます。また石神のトリックに気づいた,友人としての湯川の心理描写も上手に描かれています。ミステリーなのに感動する作品です。絶対に満足する内容です!
 この作品は映画もされています。どちらかだけでなく,小説を読んで映画も観る。これをお勧めします!特に映画では,石神役を勤めた堤真一の演技が素晴らしいです!


○『風に舞いあがるビニールシート』 森絵都 文庫 ¥250 (税込)
 
第135回受賞作
 共に難民を保護し支援する国連機関(UNHCR)の職員として働く里佳とエドの夫婦。ただ里佳は事務職員で,エドは現場で働く職員という違いがあった。里佳は,結婚後エドも事務職員になることを望んだが,エドは現場の職員を続けた。そしてエドの次の赴任地がアフガニスタンに決まる。現場での仕事にやりがいや生きる理由を見出すエドと,平穏な暮らしがしたい里佳。価値観の違いが明確になり二人は離婚する。
 エドがアフガニスタンに赴任してから3ヶ月後,里佳は彼が亡くなったことを知る。エドが亡くなった理由は,少女を銃弾から守ってのことだった。現場での仕事に意義を見出し,命を懸けたエド。彼はなぜそこまで現場にこだわったのか?
 そして,里佳はアフガニスタンへ行くことを決意する。アフガニスタンに行き,里佳が見たもの,感じたものとは。(風に舞いあがるビニールシート)

表題作の他に5篇の短編を収録した短編集です。


○『まほろ駅前多田便利軒』 三浦しをん 文庫 ¥250 (税込)
 第135回受賞作
 東京のはずれに位置しているが,東京の南西部では最も大きい街・まほろ市。
多田啓介は,まほろ駅前で便利屋の"多田便利軒"を営んでいる。お客さんの代わりにお見舞いに行ったり,ペットの世話をしたりなど,便利屋=なんでも屋である。
 多田がペットを預かる仕事をしていた時に,高校時代の同級生(特に親しかったわけでもない)の行天に出会う。そしてなんだかんだあって,行天が多田のもとに転がりこむ形になる。そして"多田便利軒"は二人体制になる。
 お見舞いに納屋の整理など,便利屋の仕事は決して難しいものではないはずなのに,多田便利軒が受ける仕事は,いや多田便利軒が仕事を受けたからトラブルが発生する!?

 シリーズ3作目の『まほろ駅前狂奏曲』も販売しております。


ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回も直木賞受賞作品の紹介をしていきます。

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