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週末タイ留学

ことばを学び始めた途端、気がついてしまった。
単語だけ覚えても使い方がわからないこと、ネイティブが使っている言い回しが翻訳アプリで出てくるとは限らないこと、言葉の温度やニュアンスは習慣や価値観を反映していること。これがちまたで言う「言語は文化」というやつか。

ここ一年くらい、週末はタイレストランでタイ人たちと働いている。たくさんいた日本人スタッフはいつの間にか私ひとりになり、気づいたら日本語勢力が小さくなっていた。あらゆる業務連絡がタイ語で交わされ、なかなか私まで届かない、数日遅れてやってくる、あるいは何が言いたいのかわからない。これはいかん。ゆるゆると学んでいたタイ語を真剣に覚え始めた。あなたと話したいから。

彼らと円滑に話すためには、彼らを理解する必要がある。というわけで「それはなぜ?」「これは何?」とこれまでより踏み込んだ問いをしてみる。誰かが言っていた、適切な質問をすることさえ出来れば、欲しい答えは必ず手に入るのだ。会話を重ねれば、わからなかったことも感覚的に理解できるようになる。ダラダラやってたバイトに目的を見い出し、心の中で“週末タイ留学”と呼んでいる。

そんなタイ文化から気がついたことを記録しようと思う。

ガパオのガパオ

ガパオのことを知っているだろうか?タイの定番料理のひとつ。最近はセブンイレブンでも売ってるし、結構メジャーな料理だと思う。

豚や鶏の挽き肉を、唐辛子やホーリーバジル、ナンプラー(魚醤)、スパイスなどで炒め、半熟の目玉焼きと白いごはんとともにワンプレートで提供する大衆食堂や屋台の定番メニューだ。

ガパオ(กะเพรา)とはホーリーバジル(熱帯を原産としたハーブ)のことで、料理名を正確に言うとパッガパオ(ผัดกะเพรา)でハーブ炒めという意味だ。とかなんとかネットでは色々書いてあるが、カレーライスをカレーと呼ぶみたいに、飲食店では省略してることが多いんじゃないかな。

ところで家庭では家にある食材でさっとご飯を作るように、まかないご飯もその日あるものでいろんなガパオが出てくる。

・鮭ハラスのガパオ
エビやイカを使った海鮮のガパオ炒め、ガパオタレー(กะเพราทะเล)は有名だが、魚を入れても美味い。ナンプラーを多めに入れた濃いめの味付けとハラスの油は当然ようにご飯に合う。鮭のハラスは豊洲で働いているというスタッフの知り合いが、差し入れしてくれた。

・鶏レバーのガパオ
ホーリーバジルとニンニクで炒めることでレバーの臭みが消えて、本当に食べやすかった。挽肉よりあっさりして、ツマミにピッタリな味。大きめの玉ねぎも入れると甘みが加わってさらに食べやすい。レバーはのんべえのスタッフが買って来たもので、酎ハイと一緒に楽しんでいた。

・キャベツのガパオ 
余った鶏ガパオに大量のキャベツを投入して再度味付けした、キャベツが主役のガパオ。余り物と侮ることなかれ、炒めることでキャベツの甘みが引き出されて箸が止まらない。野菜のダシって肉とはまた違ったコクがありモリモリ食べれる。このシリーズでもやしのガパオもよく出るが、こちらはよりあっさりした味で、シャキシャキした食感が良い。ガパオを再びホーリーバジルと唐辛子で炒めてガパオにする、ガパオのガパオでもある。

・唐揚げのガパオ
こちらは余ったからあげをガパオ炒めにした料理。ただでさえ美味いからあげにニンニクと唐辛子が加わって、ガツンとした味になる。若者に好評だった。一口めは最高だがちょっと重たかったので生野菜と一緒に食べた。

このようにタイ人は、なんでもガパオにしてしまう。食材をホーリーバジルと唐辛子で炒めたらそれはガパオという料理なのだ。日本人にとっての醤油酒みりん、みたいなものだろうか。

ヘッダーの写真は朝ごはんの小さなガパオ。
朝お店に行くとみんながกินข้าว(キンカーオ)と言ってくれる。“ご飯食べな”って意味でわたしが理解できる数少ないタイ語のひとつ。別に言われなくても勝手に食べるんだけどわざわざ毎回言ってくれるのはたぶん、わたしと話したいから。


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