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一生使える上手な人物描画のコツ3選

小説の書き方シリーズ第一弾です!!!

もともと小説は好んで読んでいました。何冊も作品を読んでいるうちに「書く側の視点」に興味を持ち始めたのがきっかけです。物語の構造が理解できれば、作品をより深く楽しめると思ったからです。

そんなわけで今回紹介したいのは「描写」です。そもそも描写ってなに?

プロの作家さんはどうやって書いてるの?という疑問を解消していきたいと思います!

参考書籍

「描写」とは何か

小説を描き慣れていない人にありがちなのが、描写についての誤解です。
初心者は読者に「きちん情報を示さなければならない、情報を与えなければならない」と意気込んでしまい、ついあからさまに書いてしまいます。

山田花子は二十歳だ。髪は長くて、まっすぐで、性格はおっとりしている

これでは「描写」ではなく「説明」です。性格がおっとりしていることを「おっとり」している、と抽象的分析で書いしまうのはNGです。

おっとりした性格の子を書きたいなと考えたら、まずどんな振る舞いをすればおっとりに見えるかを考えなくてはいけません。たとえば話しかた。おっとりしている人は柔らかなトーンで話すイメージがありますよね。また、1つ1つの動作がゆっくり落ち着いている感じがします。

こういったそのキャラの性格にあった振る舞いを書くことを「描写」と言います。情報のいくらかを描写に込めることができると、読者は、いままさに必要な情報を与えられ、読まされているのだと気づかされることなく、それを認識してくれます。

どんな作品でも伏線は必要

作品は基本的に文字数の制約があるため、言葉はいつも節約して使う必要があります。短い文章の中に多くの情報を加えることができれば、多くの内容を語ることができます。

ただ、この辺りはバランス感覚が非常に重要です。やりすぎ、詰め込みすぎはかえって読みにくくなるだけです。

その日花子は、姉のおさがりのオーバーオールに太郎のトレーナーをだぼっと着た格好だった。彼女の髪はまっすぐで背中が隠れるほど長い。それをブローもせず、ただ洗いっぱなしのまんまにしている。

このような文章も、節約しようと思えばもっと短く描写ができます。

姉のおさがりのオーバーオールに、太郎のグレーのトレーナーをだぼっと着て、洗いっぱなしのまっすぐ長い髪を背中にたらした花子は〜(以下略

著者曰く、このような書き方を「作者がほんとうに言わんとするところに、わざと焦点を合わせない書き方」と呼ぶそうです。

焦点を合わせない書き方ができないと「伏線」を上手にはることができません。

素人ほど、最初に書いたその時点に、いきなり生まれたように見えてしまいます。要するに生まれたときからもうすっかり「あるがまま」みたいな状態です。

ものごとも人物も、小説として描かれる以前からどこかにあるように見せなくてはいけません。あなたがあえて書いていない混沌の彼方に、それは人知れず誕生し、成長し、あるいは既になんらかの変化を経ていたりしなくてはならない。

小説の登場人物は、作者が創作活動の時点で作り出した架空の人物です。親や兄妹、子供と違い、幼い頃から彼らを知っているわけではありません。

しかしいくら架空の人物とはいえ、物語というボードの上に乗せる以上、精巧な人間に見せる必要があります。

そのために必要なのが「伏線」です。

後のほうのどっかでもっと詳しく書く予定である事柄について、あらかじめ、ほんのちょっとだけ語る。

何か別のことをついでにさりげなく言及しておく。

面白そうにほのめかしておいて、読者の好奇心を煽るわけです。

「描写」と「伏線」この2つができないと、説明くさい文章になります。情報はなるべく加工して、美味しく召し上がっていただきましょう。

読者を上手にだますコツ

以下の文章は著者が書いた「小説版ドラゴンクエスト精霊ルビス伝説」の1文です。

ルビスは寝巻着姿のままひとり窓辺に立って、コウデマ山の向こうに沈んでゆく夕陽に、赤い瞳を細めていた。
太陽は、ナスタチウムの丘の懐にある生家から見る時よりも、幾分小さく霞んでいた。しかし、ちょうど今時分のカショーロの実のように、重たく熟れきった色をしている。年に一度の収穫祭のはじまりには、まことに相応しいみごとな姿だった。
もはや横になっていなくてはならない頃合であった。太陽はイデーンのこの季節には、夜半ばをすぎるまで隠れることはないのだ。

この文章のなかで、作者が最も伝えたかった情報はなんだと思いますか?ちょっと考えてみましょう。













分かりましたか?







正解は「ルビスは赤い瞳をしている」です。著者曰く、それ以外の描写、寝巻着姿や窓辺に立つところ、夕陽の沈み具合などは全てどうでもそうです。

ルビスは寝巻着姿のままひとり窓辺に立って、コウデマ山の向こうに沈んでゆく夕陽に、赤い瞳を細めていた。
太陽は、ナスタチウムの丘の懐にある生家から見る時よりも、幾分小さく霞んでいた。しかし、ちょうど今時分のカショーロの実のように、重たく熟れきった色をしている。年に一度の収穫祭のはじまりには、まことに相応しいみごとな姿だった。
もはや横になっていなくてはならない頃合であった。太陽はイデーンのこの季節には、夜半ばをすぎるまで隠れることはないのだ。

「あれだけ丁寧な描写があっても、結局それしか伝えたいことないの!?」って思いません?私は思いました。

しかし私含め、このような感想を抱く人は作者の見事な手品にまんまと引っかかっています。さすがプロ👏

皆さんは「ミスディレクション」って知ってますか?手品好きな人とか、「黒子のバスケ」好きだった人ならご存知かもしれません。

いわゆる「視線誘導」というやつです。見ている人の注意をマジックのネタからそらすため、別の方向に視線を誘導する手法のことです。

この文章における作者の目的はルビスの身体的特徴を、読者にさりげなく知ってもらうことです。

そのため作者はわざと、読者を「窓の外の景色」に誘導しています。

確かに「ルビスはまるでルビーのように赤い瞳をした娘だ」と簡潔に書くことはできます。ですが、作者はあえてそれをしていません。

自然と瞳について言及できる別のものを描写してるふりをして、サラっと瞳について描写する。こうすることで描写にわざとらしさがなくなります。

他にも作者ならではの工夫が散りばめられています。たとえば漢字が多い。
「今時分」「相応しい」など、ひらがなでもいいような言葉を、あえて漢字で表現しています。

他にもコウデマ山、ナスタチウムの丘、イデーンといった架空の地名。

これら全ては読者に本作はファンタジー世界の話であることを強調するための仕掛けになっています。

ファンジー特有の地名までならわかりますが、漢字の使い方や言葉の選び方などで世界観を表現するって考え方が素晴らしいですよね。個人的には盲点でした。

まとめ

登場人物は説明しない。振る舞いから逆算して描写を考える。

できるだけ短い文章の中に情報を加えることを意識する。

「焦点を合わせない書き方」ができると、伏線がはりやすくなる。

人物描写のために、わざと他の描写を見せる手法がある。

作風やジャンルによって言葉の使い方は変えた方がいい。

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