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【保存版】等級制度 設計方法(前編)

弊社では、これまで100社以上の人事評価制度に関するコンサルティングを行ってきた知見をもとに、実際に運用可能な一般的な人事制度(等級制度・評価制度・報酬制度)をスピーディ(3ヶ月程度)に設計する方法をご紹介しております。
※詳しくはこちらの記事をご覧ください⇩

今回は、その中でも、各制度設計の基盤となるような『等級制度』についてより深く、詳細にご紹介して参ります!

本題に入る前に

そもそも…
人事制度の代表として「等級」「評価」「報酬」制度の3つが掲げられていますが、労働の対価である「報酬」や報酬額の決定に活用される「評価」と同様に掲げられるほど「等級」は人事制度において必須なのでしょうか?

いまいち「評価」や「報酬」の制度との関連性がつかみきれていなかったり、そもそも触れる接点が少なく運用が形骸化している…といったことはないでしょうか?

結論としては、メンバーの方に社内で長期的に活躍いただきたいのであれば、設定されるべきであると強く推奨いたします。

このように、活用方法やタイミングがあまり掴みきれない『等級制度』について、なぜ「評価制度」や「報酬制度」と同列にご紹介しているのか、その重要性が少しでも伝わればと思い本記事を書かせていただきます!


等級制度の目的

等級制度とは何か?ですが、端的に申し上げると『会社が社員に何を期待しているのかを示す成長指針』になります。

また、あくまで半期や1年間のうちにここまでできるようになりたい、といった短期的な成長指針ではなく、この会社に所属することで各メンバーがここまでできるようになりたい(あるいはなって欲しいと思われる)長期的な成長指針を言語化したものが等級制度になります。

そのため、各期ごとに行われる評価は長期的な成長指針(等級定義)に沿う形で実施されるべきであり、その点で先日ご紹介させていただいた評価制度の行動評価基準については等級毎に分けてご設定する事を推奨しておりました。(行動評価基準ご参考↓)

また、等級の段階や職種ごとの等級を分けて設定することで、専門性の違いなどから報酬額を分けて設定した場合においても、その理由を明確に説明することができます。

例1)同じエンジニアにおいても、他者のサポートが必要な方/自律して動ける方
例2)定型業務の専門性と非定型業務の専門性

いずれも同一の報酬とするには能力に差があり、公平性や納得性が高く報酬額を設定するためにはその根拠となるルールを設定しておくことが推奨されます。

このように、評価や報酬を設定するためには『会社が社員に何を期待しているのかを示す成長指針』が必要であり、その点で等級制度は人事制度の基盤ですので、等級制度無しに人事制度設計を進める事は推奨しておりません。

そのため、人事制度設計を始める場合にはまず全体方針を決定の上、等級制度の設計から着手されることをお勧めいたします。

アウトプットイメージ

等級制度の最終的な形は下記の通りを予定しています。

後ほどご紹介させていただきますが、上記の例の通り、担っている役割などに応じて各等級を階層分けし、階層毎に基準軸を設定のうえ、軸と役割レベルに応じた定義を定めていく想定です。

それでは、具体的な設計方法についてご紹介させていただきます。


設計方法

①等級の種類

一般的に等級制度の考え方はこの3つのパターンがあります。
※厳密にこのどれかしかないわけではなく、考え方が混ざっている場合などもありますが、代表的なものとしてこちらの3種類をご紹介いたします。

ざっくりと要点をお伝えすると下記の通りです。

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・職能等級:
能力をベースに上がっていくもので、役職に関係なく能力が高ければ高くなるほど上がっていくという形です。
ローテーションがあって、長い間をかけて育っていくような組織に多く採用されています。ポジション(役職)が変わっても能力が下がらない限り等級は変わらないというのも特徴です。

・職務等級:
個別に職務定義書(ジョブディスクリプション)を作り、担っている業務がどれぐらいの難易度なのかを元に評価する形になっています。

・役割等級:
ポジションごとに等級を設定するような運用イメージです。
そのため、メンバーなのかリーダーなのか、部長なのかといった役割が変われば等級が変わるため、社内の組織変更が生じた際などに等級の調整が必要となります。※役職に紐づけるかどうかはオプションで選択可能です。

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日本の場合は職務等級をきっちり運用しきる難易度が高く、職能等級も曖昧で使いにくいと感じ、中間的な役割等級として運用されている場合が多いと思います。

とくに、創業間もない時期や組織の形や規模がみるみる変わっていく成長フェーズにある企業の場合、役職や仕事内容は状況にあわせてどんどん変化します。

そのため、ジョブディスクリプション(職務記述書)を軸に設計していく職務等級に振り切っ てしまうとその運用を適切に維持するためのコストが大きく、形骸化する恐れがあります。

実際に検討する際はこの3つのパターンどれにするのかという議論を先にするよりも、自社 は何を持って社員の階層を分けたり、期待値設定や昇格の機会を提供したいのかというイ メージを具体化することが重要です。

②等級の階層数

続いて、等級の階層(等級の数)を検討していきます。

こちらは、昇格までの滞留年数や今後の組織の拡大をイメージしながら階層数を決定していきます。

例えば、等級1〜5までの昇格を通常のパフォーマンスの社員であれば 20年間かけて行うとすると、単純に計算すると等級が1段階あがるのに5年かかる想定となります。

同じ等級に長く滞留していると、モチベーションを損なう可能性があるため、階層数を増やし、昇格頻度をあげていく..といった形で考えていきます。

また、組織規模の拡大状況によっては、非管理職から管理職に上がる場合、ポジションがな く滞留してしまう可能性も考えられます。

そうなると想定していた滞留年数よりも多く滞留しデモチベーションしていく可能性も考え られるため注意が必要です。

一方で等級数を10個・20個と多くする企業もありますが、等級が多くなるほど等級の差異が分かりづらくなり、メッセージがブレてしまうので注意が必要です。

 基本的にスタートアップではそこまで多い等級数にはせず、5段階〜どんなに多くても8段階までに収める方が良いでしょう。

ご参考:役割により等級定義を行った場合の、各階層のレベル感

③コースごとの切り分け

冒頭の等級定義の目的でもお伝えした通り、職種により求められるレベル感等は異なります。

そのため、イメージしやすい切り口だとマネジメントとエキスパート(専門職)、セールスとエンジニア、総合職と一般職といった形で等級を分けて設定されることを推奨しております。

スタートアップにおいては事業成長や事業環境の変化に伴い、職種やキャリアパス、各職種に求める期待値もどんどん変遷していきます。

そのため、メンテナンスコストの観点から、まずは求められる役割が大きく異なるマネジメントとエキスパートで大別するか、もう一歩踏み込んでマネジメントをビジネス系とエンジニア系で分類し定義するケースが多いです。

以上が等級制度の概要設計になります。



今回の設計で全体の枠組み(フレーム部分)が固まったところで、
より具体的にどんな軸で各等級の定義を行っていくかなど、詳細な設計については後編にてご紹介を行って参ります!

次回もどうぞよろしくお願いいたします!