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不登校と中学受験(8)
今から10年ほど前のことです。
ある生徒が入塾してきました。Sくんです。
彼は中学3年生の夏休み前に入ってきました。国立大学の附属中学校の中3です。
彼は小学校6年生の時、兵庫県西宮市に本社のある中学受験進学塾の浜学園に通っていたそうです。それは、本人に聞く前に、他の生徒から聞きました。
なぜなら、彼は中学校入学当時から有名人だったのです。
浜学園の公開学力テストでは、常に10位以内で、名前が載っていた生徒だったのです。
ですので、小学校の時に浜学園に通っていた子ども達の間では、超優秀な生徒、半ば神、みたいな感じで思われていたようです。
そのおかげで、子ども達が興奮して教えてくれました。
Sくんは、当然、浜学園の中でも上位10位以内ですから、灘中を受けました。
ところが、残念な結果になったのです。そして、国立の附属中学には合格したので、通っていたのです。
そこで、入塾してきた時に、学校の成績を私が聞いたのです。
当時、中学校は相対評価で10段階評価をつけていました。
私「Sくん、10段階評価、どうだったの?」
S「9」
私「何が9やったの?数学?」
S「合計」
私「?」
S「だから合計」
私「9教科の合計!?」
S「うん」
私「ということはオール1か?」
S「うん」
私「それは厳しいなあ。高校受験校を決めるまでに、相当頑張らないといけないね」
S「やりたくないなあ・・・」
中学入学当時、同級生の間で、浜学園の10傑の一人がこの学校にいる、ということで、ものすごく注目されていたようですが、当の本人は、もう、全くやる気をなくしてしまい、まだ、中1の時は少しは勉強もしていたようですが、中3では、ほぼ何もしていない状態になってしまっていました。
お母さんにお聞きしたところ、小1・小2は別の塾に行き、小3から浜学園に行き、お母さんが毎日、ついて、一緒に勉強していたようです。
遊びたくても、ゲームをしたくても、常に、お母さんの決めたスケジュールの通りに勉強をしないといけなかったのです。
彼はやればやっただけ、塾の成績も模擬試験の偏差値も上がっていったので、お母さんはどんどんやらせようとして、Sくんとは何度もぶつかったようです。でも、最後はSくんも勉強するということで、中学受験までやってきたとのことでした。
そこまで、どうして勉強させたかったのですか、という問いにお母さんは、はっきりと「灘中に行って欲しかった」とおっしゃったのです。
「灘中から灘高、東大に行って欲しかった!」とはっきりとおっしゃっていました。
どうしてそこまでして灘から東大に行ってほしいのですか?という問いには、
「東大に行くには関西だと灘が一番、東大に合格しやすいから、灘に行ってほしかった。いろんなことが学べるから、東大に行けば、何をするにも選択肢が多く、将来、安定した職業につけるから。できないなら諦めますけど、できるなら、その能力を活かした方がいいじゃないですか!」
でも、Sくんは途中から浜学園でもあまり勉強をしなかったようです。
反対に、お母さんの受験熱はどんどん高まっていき、かなり細かく、Sくんに指示して、時には、つきっきりで夜遅くまでやらせるようになっていったのです。
Sくんはこの頃のことを振り返って、
「毎日息苦しいだけだった。常に上位10位を維持し続けたのは、やらされた、からだ」
もう受験の時には、勉強に対しての興味を失っていて、まともにやっていないので、不合格になり、お母さんはそれでもあきらめきれずに、日程の違った附属中学に出願しておいたので、附属を受けて合格。
でも、やる気はなく、中学校では、授業中、ほとんど起きていない、ただ、ただ寝ている状態だったのです。
どうして、こんなことになったのか、ということですが、Sくん本人は、
「勉強しかしなかった。何も楽しくなんかなかった。僕はそんなにしたいなんて思ってなかった。何度も言ったけど聞き入れられなかった。だから、お母さんの気持ちを考えると、仕方ないなと思った。だけど、中学生になったんだから、自由にさせてもらう、と思って自分の思うようにしてきた。」
キッパリと言い切っていた。
お母さんはというと、
「私はあの子のためにやってきたのに、こんなことになってしまった。力がある子なんだから、その力は生かさないといけないんです。だから、まだ、やればできるんです。なんとか国立大学に行けそうな高校に行かせたいのです。」
とまだまだ、あきらめ切れないという感じでした。
お母さんの頭にはできるのだから、もっとやってほしい、その結果、できれば東大、京大に行ってほしい。
そのことしかないようでした。
Sくんの思いを聞く、Sくんと一緒に考える、なぜ中学受験をするのかをSくんと話し合う、などということは全くなかったと、Sくんからもお母さんからも聞きました。
前回の一つ目の観点でお話ししたように、こういうことが普通にあります。
ご家族の価値観、思いがあまりにも強いと、子どもの気持ちや考えに思いを寄せる、考えるなどということがなくなってしまうのです。
しかも、相手は自分の子どもです。だから、子どもは小学生なら、まだ親の言うことを聞くのです。当たり前なのです。お父さん、お母さんを嫌いな子どもなんて、いませんから。
特に男の子の方が第二次性徴が少し遅いので、親のいうことを受け入れてくれるのです。
Sくんもそうでしたが、何も思っていないわけではないのです。自分の気持ちを何も聞いてもらえない、そのあきらめが、言うことを聞く、と言うことになってしまっていたのです。
だから、余計にSくんのようなことが起こるのです。
このことは、中学入学後、親の言うことを聞かない、と言うことで一気に噴き出してきます。
それは思春期になったから、と言うことももちろんあります。
それに加えて、今までの自分の思いを聞いてくれなかったことへの反抗、ということがはっきりとある、とSくんは教えてくれました。
Sくんの進学した高校は、中学受験では、偏差値が灘中から約20も下の学校でした。
その後、大学はさらに下の大学に進学したと、Sくんの同級生から聞きました。
このSくんのことからわかることは、これだけではないのです。
子ども達の中学受験塾への思い、そして、第二志望校がどんな学校かを知らない、ということがはっきりとあるのです。
そのことは、また、次回、お話したいと思います。
進学塾TMC池田 講師(算数・理系数学・理科担当)
フリースクール・パーソナルアカデミー カウンセラー、講師
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