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不登校と中学受験(14)

たかが中学受験。でも失敗は許されない


関東の中学受験率の高い地域では、難関中学受験塾に通う子ども達が学校の授業の邪魔をするために、学校の授業が崩壊している小学校があるそうです。

関西でも全く同じことが起こっています。

こんなバカなことをするために、中学受験塾に行っているのか、と呆れてしまいます。


学校の授業が簡単だから、バカにする子どもは昔からいました。

以前も他人の迷惑になるような子どももいましたが、先生も厳しく注意をしましたし、子ども達も、無茶なことはしませんでした。

しかし、授業の邪魔をする、他人に迷惑をかける、ということは年々、ひどくなっているように思います。


これは、やっている子ども自身に一番責任があります。
しかし、もちろん、子どもだけの責任ではありません。
塾だけの責任でもありませんし、親だけの責任でもありません。

周りの大人全員の責任だと私は思います。


そもそも何のために中学受験をするのか、させるのか、ということが、ただ、ただ、少しでも難しい学校に合格させるためだけ、になっているように思われてなりません。


ですから、合格だけが目標になっているのですから、自分さえ合格できればいい、他人のことはどうでもいい、となっても仕方がないように思います。

子ども達もご家族も、そうしていないとやっていられないから、やっているのか、他人を蹴落としてでも勝つことが良いことだと思っているのか、それはわかりません。


現実は、人のことなど、どうでもいいと思っているようにしか思えないのです。


お亡くなりになった京セラ創業者の稲盛和夫名誉会長は、「人として正しいことをする」「利他の心を大切にする」ということを、京セラ創業時からずっと説かれていました。

働くことは、自分を磨くことであり、人として正しいことをし、他者への思いやりをもたなければ、企業の繁栄はないとして、京セラとKDDIを大企業へと成長させ、日本航空を再生されました。

稲盛会長の「生き方」という本をお読みになった方も多いと思いますが、この本は2004年に刊行されてから150万部も発行され、多くの方がこの本から学ばれているのです。


「人としてどう生きるべきか、どうあるべきか」

このことが、どれほど大切かということを、多くの大人が気がついていることを表していると思うのです。


ところが、中学受験となると、人としてどうあるかなど、どうでもいい。

とにかく今は、どんなことをしても合格しないといけないのだ、とばかりに、周りのことなど関係なく、合格に突き進もうとする。

そういうご家族、子ども達があとをたちません。


この風潮は強くなるばかりです。


結局のところ、人としてどうあるべきか、それが大切だと思うのは、そうなっていないということがわかっているからであり、その顕著なものとして、弱い立場の子ども達のところに、その歪みがまともに出ていると言っても良いと思います。

今の中学受験大手進学塾のやっていることは、教育ではないと私はずっと思っています。

あくまでも、受験合格のためのサービス産業です。


せめて、子ども達が、自ら学び、周りの子ども達と切磋琢磨しながら、共に励ましあい、共に成長していく。

長い間、塾で教えるということを仕事にしてきた立場として、中学受験を生業とするところは、そういう場所であってほしいと強く願うばかりです。


感受性の強い子ども達の心を蔑ろにし、不合格になった時に、計り知れないほどの心の傷を子ども達に負わせることになるとも考えず、難関中学受験合格だけを目標にさせ、子ども達に圧力をかけるようなことは、絶対にあってはならないと思うのです。


不合格は不合格でしかないのです。「失敗」などではないのです。

日本社会では、まだまだ失敗は許されません。

一度、失敗したとレッテルを貼られたところから立ち上がってくることは、大人ですらとても難しいのです。だから、多くの方が悩み、自ら命を絶ってしまいます。

だから、絶対に12歳の子ども達に「失敗」などと言わないで欲しいのです。


その心の傷跡がどれほど大きなものだったか、塾というものができて半世紀近くになるにもかかわらず、その検証はなされていません。


私は、不登校の子ども達と共に歩んできた中で、受験の時の心の傷跡を嫌というほどみてきました。

だからこそ、中学受験というものを、もう一度、見直してみて欲しいと思います。


谷 圭祐
進学塾TMC池田 講師(算数・数学・理科担当)
パーソナルアカデミー カウンセラー、講師
谷圭祐事務所 


 


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Keisuke Tani
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