不登校と中学受験(10)
幼稚園・小1から中学受験塾に行く必要があるのか?
小学校受験をされる場合は、幼稚園から、難関中学を目指す方の場合でも、早ければ幼稚園、小1、小2から中学受験塾に行かせることになります。
関西であれば、浜学園、馬渕教室、希学園、SAPIX、能開センター、日能研関西といった、灘中合格者を多数出しているところは、全て小1からのコースを持っています。
しかも、塾によって異なりますが、小4くらいまでには、一通り小6までの内容を学ばるのです。
そんな早くから、受験勉強を詰め込んでいくのです。
楽しいと思う子どももいるでしょう。訳もわからずやっている子どももいるでしょう。
ただ、そんな早くから、何のためにするのか、ということが、子ども自身がわかっていないことが悲しいことだと思います。
なぜなら、考えて理解する、というよりも、なぜ、その問題を解くのかということがわかっていないので、覚えること、が中心の学習になってしまいます。
それでは頭が硬くなってしまいます。思考パターンが限られてしまいます。
言い方が少し違いますね。
わからないことがあっても、点数を取ることを求められるので、何とか覚えようとするのです。
小学校低学年では、子どもの脳はまだまだ、自分で見ることができること、具体的なことがらしかわからないのです。
抽象的概念はまだ理解できないのです。
ところが、関西最難関中学や関東御三家を目指すような中学受験の塾では、あまりにも早くから、基本事項を理解し、定着することよりも、少しでも早くカリキュラムをこなすことを優先したテキストを使って、競争させていくのです。
そのため、百ます計算のような単純な計算問題をやったり、基本計算に時間をかけたりはしません。
単純な計算問題を、しっかりと正確に、かつ、早くこなせないのに、難問を思考し、方針を立て、具体的に計算をするというときに、処理が遅くては合格などありません。
小学校低学年から中学受験塾に入れて、最難関中学を目指す前に、基本事項の理解が本当にできて、読み書き計算は確実にできるようにしてあげることが、低学年の子どもには必要なのです。
それができているという前提で、お聞きします。
特に小学校4年生、5年生、6年生の方々です。
公立の小学校に通われているのであれば、学校のテストで満点を取ってきていますか?
学校のテストがあった場合、漢字でも、計算でも、国語の読解でも、満点か、せめて1問間違いくらいの結果になっていますか?
やっている範囲が違うというのは、はっきりとただの言い訳です。
最難関中学だけでなく中堅の中学以上を目指すというなら、基本問題は100%できてほしいと思うのです。
ですから、学校のテストが満点を取ってきている、基本問題は確実にできている、ことを証明してほしいのです。
小学校の基本的なことだけが出題されているような問題で、満点かそれに近い点数も取れないような状態で、どれだけ難しいことを小さい時からさせても、本当に学力がついているわけではないのです。
子ども達が本当に伸びていくためには、基礎基本という土台がしっかりとできていなければ、必ず積み上げた時に、できないどころか、わからないところが出てくるのです。
基礎基本がしっかりできていなければ、積み上げて行った時にわからなくなり、勉強に対して、抵抗感、嫌悪感を持つことになります。
それが、低学年であればあるほど、勉強が嫌になります。
知らないことを知ることは、本来はとても楽しいことなのです。
でも、難しい受験勉強をさせることで、勉強を大嫌いにさせてしまうのです。
それは、子ども達の持つ大きな可能性をその時点で潰してしまうことになるのです。
もう一つは、これまでにお話しした、塾自慢、塾のクラス自慢をする子どもに、基本ができていない、学校のテストでも高得点を取ることもできない子どもが本当に多いのです。
これだけではありません。
もっともっと大きな問題があるのです。
塾講師を37年間やっていて、これをやり出すと、もう、どうすることもできません。
だから、絶対にするなと、口を酸っぱくして言い続けていることがあるのです。
それは、「わかったふり」です。
僕は「わかっている」
私は「理解できているから大丈夫」
というふりなんです。
これを平気でやるのです。
子ども達も必死なのです。
しかも、ひどくなると、わかってもないのに、「それ塾でやった!」「それ知ってる!」とやった・知ってる自慢が始まるのです。
こうなったら、もうそこから先は、何をやっても、伸びません。
伸びないどころか、新しいことが身につかないので、どんどん成績が下がります。
これが現実なのです。
だから、中学受験大手進学塾に行かれるのは、問題ありませんが、大手塾の言っていることに踊らされることなく、学習スピードに負けることなく、徹底的に基礎基本を丁寧に身につけていってほしいと思います。
30年以上、不登校の現場と進学塾の現場を、常に同時に見てきて、私立中学に合格したのに、ついていけず、学校に通えなくなって、私のところを訪ねてくる子どもの多くに見られることなのです。
子ども達は、疲れ果てて、私の前に来てくれるのです。
それでも、健気に学校に戻りたい、勉強がついていけるようになりたい、というのです。
話を聞いているこちらが辛くなってしまいます。
ご家族が、小学校低学年の間は、読み書き計算を徹底することと、勉強を楽しめるようにしてあげるようにして欲しいと思います。
そして、基礎基本を大事にすることを、しっかりと子ども達に伝えていただき、中学受験大手進学塾に通うのなら、なおさら、基礎基本を徹底することを教えてあげて欲しいと思うのです。
そうしなければ、中学受験で六年一貫校に合格したのに、学校に行けずに辞めてしまう子ども達は、受験のために遊ばずに勉強し、合格できたのに、喜んだのも束の間、学校に行けなくなり、辛い現実を突きつけられてしまうことがあるのです。
フリースクール・パーソナルアカデミー カウンセラー、講師
進学塾TMC池田 講師(算数・理系数学・理科担当)