【本要約】採用基準
アウトライン
本書の結論です。
前回の記事では「スキル」と「センス」という問題について考察しました
一般的にイメージされている「優秀な人材=スキルの高い人材」ではないことが理解できましたが、より「仕事ができるとは何か」「優秀とは何か」ということに踏み込みたいと思い、本書を手に取りました。
「センス」という言葉では表現されていませんが、この本でもまた定量化できる「スキル」以外の部分に優秀さの本質みたいなものがあると書かれてます。
本書を読めば、その本質とは何か、今我々が身につけるべきものとは何かを理解することができると思います。
誤解される採用基準
コンサル会社の選考について皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか。
なんとなく、論理的思考を問うような問題が出されたりとか、地頭力みたいなものを見極めているイメージがあるかもしれません。
しかし、そこには5つの誤解があると著者は言います。
5つの誤解とは以下です。
どちらかというと、今ある能力だけを測っているというよりはその人の「資質」を見ていることがポイントです。また、部分的な優秀さよりも、総合的に成果が出せることに重きが置かれております。
とりわけ「リーダーシップ」が重要
本書の結論部分とも言えるのですが、重要な採用基準は「リーダーシップを発揮できるポテンシャルがあるかどうか」です。
現実問題を解決するとき、論理能力だけでは突破できないことがたくさんあります。必要なのは人を動かす「リーダーシップ」です。また、全員がリーダーシップを持つ組織の方が圧倒的な成果を出します。
では、リーダーシップとは何か。
本書では「自分で決め、その結果に伴うリスクを引き受け、その決断の理由をきちんと説明する」ことと説明します。また、リーダーシップは常に「成果主義」とセットになります。リーダーシップが必要な場面というのは、多くが成果を求められる時であり、リーダーである人間はこの成果に対して、責任を持つことが必要です。
日本では、リーダーシップを役職や職種に紐づけてしまうケースもあるがそれは間違っていると指摘します。「役職が先でリーダーシップが後」ではなく、「リーダーシップが証明されて役職に就く」が正しい順番です。
また、マネージャーやコーディネーターは職種の性質上、組織をまとめたり、指示を出したりすることは多いですが、これはあくまで役割であり、「リーダーシップ」とは異なると言います。
リーダーになるためには
リーダーのタスクは限定的なものではなく、多岐にわたります。ただ、突き詰めていくと、以下の4つに収束します。
いずれもアウトプットが自発的であり、人に影響を与えることに重きを置かれています。つまり、4つのタスクの目的をさらにぎゅっと絞り、リーダーの役割を一言でいうと「人を動かす」ということが言えます。
また、マッキンゼーではスキル不足であってもリーダーシップをとる姿勢を重視します。新人であろうと自分の仕事であれば、リーダーシップを取ることが大切で、実践していくうちに各々のリーダーシップの型が出てくると言います。
マッキンゼーではリーダーシップを発揮するための行動、マインドで4つの基本動作があります。以下が4つの基本動作です。
マッキンゼーでは常にこの4つの動作が求められます。
周りが超優秀なシニアコンサルタントばかりの会議であっても、ホワイトボードの前に立ち、議論のリーダーシップを発揮し、自分の意見・結論を伝え、議論の場でバリューを出すことが求められます。
リーダーシップは生まれながら決まる先天的なものではありません。こういった基本動作を繰り返し、学習プロセスを踏んでいくことで誰でも学べるものです。今、特に日本では圧倒的にリーダーが不足していると著者は指摘しています。
最後に、リーダーシップを得ることで個人にどのような効用をもたらすかについても解説されております。以下は個人にもたらす5つの効用です。
まとめ
今回は『採用基準』を要約・解説して参りました。
最後に、総括した感想と補足としては【AIにリーダーシップが発揮できるか】ということを挙げさせていただきます。
AIにリーダーシップが発揮できるか
私のnoteではこの先の10年でAIにより大きな変化があることを前提に、我々はどうするべきかを考えることが多いです。今回は主題が「リーダーシップ」ということでしたが、果たしてAI時代の「リーダーシップ」はどのようになるのでしょうか。
まず考えなくてはいけないのは、「リーダーシップ」という能力はAIによって代替可能かどうかです。言い換えると、「AIにリーダーシップが発揮できるか」という問いです。
私の結論は「いずれ発揮できるかもしれないが今すぐには難しい」が結論です。理由は2つあります。
①リーダーシップを発揮する場面は未知であることが多い
日々のルーチンワークでは特段リーダーシップを発揮する必要はないと思います。リーダーシップが必要とされる場面は不確実性が高い、未知の領域にチャレンジする時です。
未知の領域でも、過去の似たような事例があったり、データがあるものは、AIでもある程度は予測や判断が可能です。しかし、サンプル数が極端に少ない場面や複雑な場面では必ずしもAIが力を発揮するとは言えません。
特に近年は変化が激しく、過去の事例をそのまま適用できることは少なくなっています。サンプル数が少ない中、判断をしていくのは現状のAIの能力では難しいです。
②AIについていきたいと人は思わない
リーダーの役割は「人を動かすこと」だと先述しました。リーダーシップは常にフォロワーがいて成立するという構造関係にあります。(参照:TED デレク・シヴァーズ: 社会運動はどうやって起こすか)
つまり、AIがリーダーシップを発揮するためには、人がフォロワーとして必要です。通販で何を買うか、次の動画は何を見るかなどの判断はAIでも良いでしょうが、国を左右する決断だったり、人命に関わるような決断、自分の生活に大きな影響を及ぼす場面ではAIではなく、人についていきたいと思うはずです。
以上の2点から短期的にはAIによるリーダーシップの代替は難しいと思います。
長期的にはもしかすると全ての判断をAIに委ねる日が来るかもしれません。しかし、この先10年ほどではAIがアシストすることはあっても、重要な局面での最終的な判断や人を動かすことは人の役割になりそうです。
そのため、AI時代であっても「リーダーシップ」には高い価値があり続けると思います。また、著者曰く、今の日本ではこの「リーダーシップ」が不足しています。需要に対して、供給が少ないということは価値が高くなります。
実際、私が転職エージェントをしていた時でも、確かにリーダーシップがある方は高給であることが多かったと思います。
「リーダーシップ」は希少で価値が高く、AIの時代になっても価値が下がりにくい。そしてそれは適切な学習により身につけることができる。下手な資格を取るよりも、自身のキャリア戦略上は重要なことではないかと思いました。
本書はその他にも採用(人を見極めること)に重要な要素が詰まっています。上部だけのテクニック論ではなく、本質に迫った良書ですので、ぜひご興味のある方はご一読ください。
今回の記事は以上になります。
ご一読いただき、ありがとうございました。