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小さなまちの公教育に選択肢をどうつくるか?選ばされるから、選べる学校づくり。
日本初のイエナプランスクールとして2019年に開校した大日向小学校。
設立準備から4年間関わってきた中川綾さんをゲストに、つの未来会議の第5回「小さなまちの公教育」を開催。
町長、教育長、小中学校長をはじめ、宮崎県の教育委員から町内の小学生、民間の経営者までいつも以上に幅広い町の方々で話し合いが行われました。
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中川綾さんからは、どんな地域に、何のために、どんな学校をつくり、何が起きたか、をご紹介いただきました。
1.佐久穂町の廃校を再生
長野県の佐久穂町は人口約1万人で都農町とほぼ同じ規模。
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廃校になった旧佐久東小学校でイエナプランスクールをつくっていく、と佐久穂町の人に話をしたら、横文字であやしい、黒船?宗教?という反応。
紙新聞を全戸配布したり、各区の公民館で説明会を開催。
そのうち、まちの重鎮が「学校がなくなって寂しい、もう一度、学校ができるなんて奇跡だ!」と大きな声で言ってくれたのがきっかけで、大きな反対にあわず、議会で満場一致。学校づくりがスタートしました。
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2.共生社会をつくるために
大日向小学校をつくった目的は、イエナプランスクールをつくるためではなく、共生社会をつくっていくことを一番大切に考えた、と中川綾さん。
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イエナプラン教育はメソッドではなくコンセプト。
中川綾さんに、コンセプトで特に大事な8つを紹介してもらいました。
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インクルーシブは、性別、年齢、国籍をすべてひっくるめて、人はみんな違うんだから、その人たちと共に生きていこうという意味で使われてます。
オランダやアメリカでは学び方に選択肢があります。
中川綾さんとしてやりたかったことは公教育に選択肢を増やすこと。
ここで質問。
選択できるとしたらどんな学校?
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「少人数の学校!」
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「もっとタブレットを活用した授業!」
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3.イエナプランのコンセプト
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「対話」「遊び」「仕事(学習)」「催し」の4つ、生活の営みの中でみんながやっていることをリズミカルに循環させるのがイエナプランの特徴。
①異年齢学級(マルチエイジ)
1クラスに3学年の異年齢学級を実践してます。社会に出ると同年齢の人はいない、学校の中で理想の共同体をつくることは、社会に出て行く練習。
学校で学ぶ理想の共同体で得た経験、知識を得て、理想の社会を作ろうとする人を育てようとすることもイエナの大事な視点です。
②サークル対話
朝も帰りも、サークルになって今日どうよ、今日一日どうだった?
サークルになって対話の量を増やします。
③ブロックアワー
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ブロックアワーは基礎的な学習(学科)の自立学習。
自分で自分の学びを進めていく自分のための時間。
学ぶスピード、使う道具、教材など自分にあったものを選び個別最適化。
1週間の課題が提示、空いている時間(ブロックアワー)に自分で計画。
④ワールドオリエンテーション
協働的で総合的で教科横断の学び。
基礎的な学習を活かすのがワールドオリエンテーション(総合的学習の時間)で、毎日やります。
うまくいかなかったら、基礎的な学びが少なかったんだと、ブロックアワーに戻るという循環。
ゆるやかに日々の基礎的な学びがあり、その力をワールドオリエンテーションの中で活かします。
4.教育移住とまちづくり
設立準備段階から、町の人たちと対話をしながら作ってきた大日向小学校では、開校後も、町の人たちとゆるやかにつながれるよう、ランチルームを開放、同じ給食を子どもも大人も食べれるしくみをつくっています。
(いまは感染対策で休止)
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子どもの保護者が、商店街の空き店舗に新しく店を出し7店も開業!
ドーナッツ屋から、カレー屋、本屋、ジュエリー工房、パン屋、クレープ屋と、まちづくり的にみても注目!!
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大日向小学校ができたことで、佐久穂町の人口が少し増えました。
町長としては、移住者用住宅は特につくることなく、関係人口が増えればいいという考え方。隣の佐久市に住んでもらい「佐久市は佐久穂町のベッドタウン」(笑)になればいいと言ってます。
最後に、中川綾さんから当日の参加者に、これからのまちづくりで重要な共生社会に必要な多様性・選択肢・インクルーシブ・世界との繋がり・持続可能性を学べる地域であるために、公教育はどうすればよいか?
問いが立てられて終わりました。
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都農町として、中学校1校、小学校3校、分校1校の公教育を、人口減少に柔軟に対応しながら各校をどう特徴づけして、魅力的な選択肢にしていくのか?まさに待ったなしの議論をスタートさせる時期に来ています。
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5.都農町の教育に選択肢をつくる
参加者同士が話し合いながら質問が付箋に張り出されました。
中川綾さん・町長・教育長と一緒に答えていきました。
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参加者からの質問①これからのまちづくりと教育の関わりは?
町長
人を育てていくのがいかに大事なのか、つくづく思います。
都農高校閉校で、自分たちのまちを自分たちで運営していくことの重要性をより感じてます。
まちづくりと教育はきっても切り離せないものです。
町民みんなで、子どもたちが都農町を、社会を、国を、世界をよくすることを自分で考えて行動できるように育てていきたいですね。
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教育長
まちづくりは人づくり。教育につながってます。
いま、地域学校協働活動として3つの動きをはじめて成果が出始めてます。
・コミュニティスクール(学校運営協議会)
・キャリア教育支援センター
・家庭教育サポートチーム
地域や家庭での教育と学校教育を連動させて、地域のみんなで町の子どもたちを育てていきたいですね。
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参加者からの質問②イエナプランは公立の学校に適用できるのか
中川綾さん
イエナプランはコンセプトなので、公立校のカリキュラムにも適用できます。広島県の常石小学校が開校しました。公立なので無償です。
参加者からの質問③都農の公教育は何を目指すべきか?
中川綾さん
選択肢を増やすことが大事だと思います。
好きなこと、興味関心のあることはがんばれるし、自分のやり方にあえば勉強するんだと思います。
都農町に小学校が3校あるのはチャンスです。
多様性を担保できる公教育を目指せればすごくいい。
「選ばされるのではなく選んでいく」
これが自立や参画につながっていくと思ってます。
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町長から中川綾さんへの質問|少人数で社会性を身につけるには?
中川綾さん
どんなコンセプトで学びの場をつくるかで違う
少ない方がいいと思うのは、そこに関わる大人が手厚い対応をできるから。多様性を担保するのは人数ではないと思ってます。
9年間同じメンバーで学ぶのに比べて、異年齢学級だと3学年1つだと必ず毎年3分の1は変わります。
3分の1変わるとかなり雰囲気変わりますよね?
参加者からの質問④どんな人が育ってほしいですか?
中川綾さん
自分のことは自分で決められる人になってほしい
小さなことでもいい、自分で考えて、選んで、責任を持てることが大事。
保護者が大日向小学校を選んだ理由は人それぞれですが、共通して多いのは
自分たちで学校を共につくる
6.未来への提案
最後に、参加者全員が一人ひとり、「都農町の小中学校にこんな選択肢があったらいいなと思うこと」を、未来への提案として書いて頂きました。
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都農町国民健康保険病院の桐ヶ谷院長
タブレット学習を活用、自宅学習を含め自分で能動的に学べるように
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学校ごとに、うちの学校はここがいいとこだよと選択肢がある古部祐子さん(地域おこし協力隊)
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子どもたちが自分たちで自由に考えて、学び舎も自分たちでつくる!
最後は、つの未来会議恒例となった、町長から次世代へバトンを託します。
渡されたのは、都農小学校の5年生
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バトンをもらって一言。
わたしはゼロカーボンのまちづくりのことを考えるチーム(Green Hope)に入ってるので、2050年までに都農町から二酸化炭素をゼロにする取り組みを全力でがんばります!!
翌日、教育長のところに、全員分の参加者全員の「未来への提案」「アンケート」を持参して何からやりますか?って直談判 笑。
「選択肢をつくる」「自分で考えてつくる」を実践するために、まずは、都農町の教育として何を目指すのか、明確に言語化する話し合いをはじめましょう!
中川綾さんの著書「あたらしいしょうがっこうのつくりかた」
次回の「つの未来会議」第6回は10月20日(木)19時
ゲストは600園以上の保育園設計を手がける日比野拓さん
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