「リバーシブルで遊べる 小倉百人一首」のゲームデザイン
百人一首かるたの決定版、出来ました!
「百人一首のかるた」を再構築してみよう!
「お正月」の「かるた」といえば「百人一首」です!
という方も多いことでしょう。もちろんマンガの「ちはやふる」(末次由紀先生/講談社)を読んで、競技かるたや百人一首に興味をもった! という方もたくさんいるはず。
いままで、いくつか百人一首かるたを作ってきました。イラスト入りや、30首だけの入門用のものなど。
「リニューアルしましょう!」とお声がけいただいたときに、新しくどんなものを作ろうかな……、とアイディアをいつものように手帖に書き出しはじめました。
アイディア出しながら、思い出したのは短歌カードゲーム「57577」のゲームデザインをしていた時のこと。
ゲームのルールやコンポーネントを考えるために、「ゲームデザイン」に関する本を入手できるもの、片っ端から読んだのです。それがすごく面白くて!
「デザイン」の、美しさ、無駄のなさ。「ゲーム」の、集団でおこなうエンターテイメントであることの大切さ。わかりやすくシンプルなルールの大事さ。
大事な所、たくさんメモ帳に抜粋しました。
「このゲームデザインのルールを、百人一首かるたにも照らし合わせてみたらどうだろう?
一度限界までばらばらにして、ゲームとして再構築してみよう!」とひらめいたのでした。
古典の勉強や習字の練習のために「必要」だから「覚える」ようになった百人一首。
いくら57577のリズムが覚えやすくても、100首も覚えるのは大変。
さて、どうしよう?
昔の人はいろいろ考えました。
イラスト入りの本にしよう。それから?
すごろくにしてみようか? うーん、いまいち。
あ、ポルトガルから来た「カルタ」ってあるらしいね、うん、「貝覆」もあるね。
読み上げて取るから耳から覚えるし、負けず嫌いの子が一生懸命覚えていいね、よし。「百人一首」は「かるた」で覚えよう!
……という歴史を踏まえて、もう一度、見つめなおす……。
「かるた」だけで完成させたい!!
そもそも「百人一首」そのものの歴史がありすぎて、いろんなものが混線しています。
それを解きほぐしつつ、「百人一首かるた」に求められているものを見つめなおしました。
古典・和歌に触れるきっかけ。入門として。
競技かるたの入門として。
「ぼうずめくり」や「ちらしとり」などのカードゲームとして。
大きく求められているのはこの3つ。それぞれをバランスよく、「このかるただけあれば他に何もいらないぞ」というくらいまで完成度を高めることを目標に!!
「本」も「決まり字一覧」もいらないかるたに!
歌を覚えるために「かるた」が生まれました。でも、それだけだと意味も分からないし、イラストも入っていないから、「イラスト入り解説本」が必要になる(そのおかげで、室町時代から当時の絵師による美しい百人一首、たくさん残っています)。
でも、札にもう「イラスト」(歌の意味をイラストにしたものを「歌意図(かいず)」といいます)と「訳」が入っていたら?
札を置いて本を手に取らなくてもOKです。
さらに、競技かるたを極めたいと思ったときに(かるた大会で優勝したいときも!)まず初めに覚える必要のある「決まり字」も、印刷してある専用のかるたはありますが、普段一般に売られているかるたには書かれていません。
遊ぶのに、なんだかいろいろ必要となっちゃうの、あんまりスマートではありません。ゲームのメカニクスとして美しくない。
札にきれいに収めたい……。
そこで、参考にしたのは、ポケモンカードやデュエマなど、息子たちの持っているカードバトルのカードたちでした。
そして、カードバトルのカードとともにゲームの説明を聞いて、あ、これも採用したらよいのでは?というのを思い付きました。
そんなカードバトルのあれこれを踏まえてのラフがこちら!
そして、カードゲームあれこれ見せてもらって、(これ、百人一首にもあったらいいな……)と思ったのは、プレイマット!
畳のお部屋がないお家でも、テーブルの上でも、畳が印刷してあって、札を置くガイドがあれば気軽に遊べる!
よし、いつもガイドブックの裏は百人一首ポスターにしていたけれど、今回は競技かるたプレイマットにしてしまおう!!
札が競技かるたの公式札より大きいので、公式の幅にしてしまうと、札がたくさん置けない……。
そんなとき、監修してくださった西郷直樹永世名人から「初めの頃は狭い競技幅で練習しましたよ!」というありがたいアドバイスが!
というわけで、「競技かるた入門向け」の「札大き目」「競技線は子どもでも手が届きやすい狭め」のプレイマットができました。
左右、とっさにまちがえる子をよく見てきたので(我が家で)、左右もちゃんと書いておきました。
今回のかるたは、西郷直樹永世名人の監修!!!
先ほどさらっとお名前を出したのですが、今までのかるたと一番違うのは、西郷直樹さんに監修についていただいたことでした。
歌の内容についてや「ぼうずめくり」などのゲームについては、「はじめての百人一首」や『エピソードで覚える!百人一首おけいこ帖』などを作ったり書いたりしてきました。資料もたくさんあります。
でも、「競技かるた」については……。
今回、「決定版」のかるたを作りたい、と思い切って西郷さんにお声がけしたのでした。
お引き受けいただき、ガイドブック執筆していただけて……。10年前に西郷さんの最後の名人戦を近江神宮で観戦していた私に、「将来、一緒にかるた作れるよ!」と教えてあげたらびっくりするだろうなあ!としみじみしました。
イラストは即決でした!大高郁子さんが畳の模様まで!
リニューアルのかるた、編集さんからの希望が一つありました。それは「ジェンダーレス」にすること。
「はじめての百人一首シリーズ」は絵がかわいらしいので(妹の絵はどれもすばらしく可愛い!←姉ばか)、もうちょっとクールな感じにできたら、と。
さらに、エイジレスにもできたらいいなあ、と、つまり老若男女が「素敵!」と思える絵が必要……。
すぐに浮かんだのが、大高郁子さんでした。編集部でもつるりとOKが出て、とてもスムーズにお願いすることができました。
着物の柄も! 畳の柄も! そして読み札取り札、人物200人!!!
厳しい締め切りの中素晴らしい絵を描いてくださいました。
一枚一枚、届いた画像を見るのが楽しみでした。
100首、200枚、どの歌にどんな歌人が、どんな歌意図が描かれているか、じっくりご覧くださいね!!
高校かるた部のみんなに、新入生の勧誘に使ってほしい!
年末まで高校かるた部へのキャンペーン実施中です!
(引き続き書き足していきます!)