AMANO Kei

歌人の天野慶です。〈馬だった頃のあなたにあこがれてヒトとしてまた逢えてうれしい〉

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歌人の天野慶です。〈馬だった頃のあなたにあこがれてヒトとしてまた逢えてうれしい〉

マガジン

  • 毎日のように手紙は来るけれど #kurukeredo

    短歌、言葉、その周辺の仕事。興味のあることだけやって二十数年生活してきた歌人の、あやまちだらけの毎日を知ることで気持ちがきっと楽になります。正直さでは負ける気がしません。1日ずつのバラ売りも(たまに)しますが、まとめ売りのマガジンは毎日更新をめざしますので、30本とかで700円。更新できなかった日の翌日は、2本更新します。1日あたり24円。

最近の記事

  • 固定された記事

新刊『見て楽しむ ことば図鑑』(共著)が発売されます!

こんにちは。天野慶です。 この夏は言葉にまみれていました。 そして、本に囲まれて、いろんな図書館を渡り歩いていました。 それは……こんな本を書いていたからなのです。 なんと説明したらよいのか……とにかく、創作に役立ちそうな言葉を、仲間ごとに分けて素敵なデザインで100集めておきました、という本です。 豪華な類語辞典のような、創作アイディア辞典のような、とにかく「見て楽し」く言葉と触れあえる本です。オールカラー、100のテーマに合わせたデザインが言葉たちを彩ります。 60テ

    • 正倉院展といえば

      橘(たちばな)は実(み)さへ花(はな)さへその葉(は)さへ枝(えだ)に霜降(しもふ)れどいや常葉(とこは)の木(き) 知人が「橘」という姓になったときに「橘っていいよね~!」という歌を詠んであげているので、聖武天皇絶対いいひと! 道(みち)に逢(あ)ひて笑(え)まししからに降(ふ)る雪(ゆき)の消(け)なば消(け)ぬがに恋(こ)ふと云(い)ふ吾妹(わぎも)   「俺の笑顔に惚れたって?」というこの歌も可愛いモテ自慢の歌で好き。 #正倉院展 #万葉集

      • +6

        天野慶自薦60首

        • 絵本の創作過程(文章担当)公開!

          こんにちは。歌人の天野慶です。 よく自己紹介するときに「短歌を中心とした創作活動をしています」と言っています。 ・短歌を詠む がもちろんメインでスタート地点かつホーム、なのですが その他に百人一首関係活動(ワークショップ・カルタ製作・入門本の執筆)と 絵本や紙芝居の文章を書いています。 9月には絵本の最新刊がでました! 2022年6月に企画のご相談を受けて、2024年9月に発売になりました。 ・絵は「いつつごうさぎ」シリーズや「モンポケ絵本」が大人気のまつおりかこさ

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        新刊『見て楽しむ ことば図鑑』(共著)が発売されます!

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        • 毎日のように手紙は来るけれど #kurukeredo
          ¥700 / 月

        記事

          「転がる石の辿り着く場所 ~ニューウェーブ以後のローリング・ストーンたち~」

           フリーターとニート、合わせて280万人。若者の5人にひとりが、このどちらかに当てはまる計算になる。ニートに限った統計を見ると、その数の6割を25歳から34歳までが占めている。つまり1970年代に生まれた人たち。戦争も、戦後も、バブル経済もバブル崩壊も経験せず、過去の事実としてしか認識していない世代である。不景気といわれながらも平和で穏やかな、言い換えれば「のっぺりとした」時代に生まれ育っている。  父母は戦後生まれ、バブルは小学生の頃に、携帯電話の登場は高校時代に。「就職

          「転がる石の辿り着く場所 ~ニューウェーブ以後のローリング・ストーンたち~」

          短歌人 時評2017年1月

          「回収、ではなく」  第62回角川短歌賞の選考結果によると「所 属結社」というアンケート欄に結社名(学生 短歌会や同人誌は除く)を記入している人数 は35名中17名。つまり約半分。第61回 選考結果を見ると、35名中20名。比較す るために15年前、平成13年の第47回 (受賞者は佐藤弓生さんの「眼鏡屋は夕暮れ のために」)では30名中18名。こちらは 6割。  6割から、15年で5割に。これを結社離 れとみるか、予想ほど結社から人は離れてい ない、とみるか。  『テノヒラ

          短歌人 時評2017年1月

          伝える、そこから先のこと。

          「テノヒラタンカ」という、自然。         天野 慶 伝える、そこから先のこと。 忘れてしまいそうな風景があります。 大切に憶えていたい、でも時間がたてば必ず忘れてしまうことがわかっている風景。 通学路にいた犬。放課後の人気ない廊下。二人乗りの自転車から見た夕焼け―――。 これから歳を重ねるにつれ、生活のなかに埋もれてしまいそうな、あやうい記憶たちです。 そんな記憶を保存することのできるメディア。小説・映画・写真・漫画。 たくさんのジャンルから私たちは「短歌」と「イ

          伝える、そこから先のこと。

          ケータイで詠む短歌とは

          言葉で喜び、言葉に傷つく。  コミュニケーションの手段は、ケータイ電話のメールの時代。クラスメイト、部活の仲間、彼氏・彼女のあいだで。事務連絡も、ケンカも仲直りも、告白も別れ話も、すべてがメール。  メールで、つまり、それはすべて文字で書かれた言葉によって。 *  私はケータイが普及する直前の(ほんの十年前の)女子高生であった。家の電話のベルが二回鳴って切れたら、それは彼氏からの合図。すぐに電話の前に飛んでいって、家族より前に、受話器をとれるように準備する。親機の「通

          ケータイで詠む短歌とは

          その先の、枡野浩一に。

           うなぎの寝床のような、狭い狭い部室でした。もともと生徒会室だったのを本棚で無理やり2つに区切り「演劇部」「写真部」「漫画研究部」「クイズ研究部」「社会問題研究部」「文芸部」に与えられた部屋で、総称「5文科部室」と呼ばれていました。「クイ研」と「社問研」はもう活動していなかったので、実質的に活動していたのは3つの部活だけ。ちなみに私はいちばん勢力の強い「演劇部」に所属していました。  ほぼ360日学校に通うほど部活動をしていたものですから、部室にもずいぶん入浸っていました。そ

          その先の、枡野浩一に。

          2024年の秋のお知らせ

          ▢ゲームデザインをしました短歌カードゲーム「57577」が、「グッド・トイ2024」を受賞しました! 57577 ゴーシチゴーシチシチ | グッド・トイ2024 | GOOD TOY Awards なべとびすこさんのゲームを元に、一からルールを考案して、ワードを選び、パッケージを考え……と、 いつもの「短歌」とはまったく違うゲームデザインについて学ぶの、とても楽しく刺激的な体験でした。 「57577」のゲームデザイン(1)|AMANO Kei (note.com)

          2024年の秋のお知らせ

          <魂離る><死出の旅><不帰の客となる><煙となる>……600を超える「死のことば」と出逢ったこと

          新刊『見て楽しむことば図鑑』おかげさまで毎月増刷が決まって、いま4刷りの完成を待っているところです。 発売後いろいろあって、本屋さんに並んでいるところがちっともみられていなくて、実感が乏しいのですが……。編集さんからの嬉しいメールに、部屋でごろごろ喜びのたうち回っています。いいぞ、もっと頑張れ~!! 『見て楽しむことば図鑑』執筆前、母を急性大動脈解離で突然失いました。 本当に元気な人だったので、お産以外入院したことなく、通院もしていなかったので、元気→死の境目ゼロ、ピンピン

          <魂離る><死出の旅><不帰の客となる><煙となる>……600を超える「死のことば」と出逢ったこと

          『見て楽しむ ことば図鑑』はじめに(初稿バージョン)

          はじめに・色彩豊かなのことばのパレット  本書は「桜のことば」「美味しいことば」「さびしさのことば」「出会いのことば」「色のことば」「時のことば」「言葉のことば」などの、<ことばで表現したい人>のために役立つ100のテーマのことばを集めた一冊です。 テーマのひとつひとつに、鮮やかで見ごたえのあるデザインを施しているので、イメージが一層ふくらみます。    ◇小説や詩、短歌などの、文字での表現のアイディアを探したい。  ◇イラストや漫画などの、ビジュアルでの表現の

          『見て楽しむ ことば図鑑』はじめに(初稿バージョン)

          新刊『見て楽しむ ことば図鑑』(幻冬舎)執筆裏話

          明日22日全国書店にて発売される『見て楽しむ ことば図鑑』(著・みっけ/天野慶)。 100のテーマに沿ってたくさんの「ことば選び」をしました。 テーマに関する言葉を複数の類語辞典で調べる 『日本国語大辞典』や『日本語大辞典』でさらに関連することばを調べる テーマの専門書を複数読み込み、さらに語句を足す という作業をみっけさんと編集Sさんと共有したGoogleスプレットシートにまとめてゆきました。 それをみっけさんがあの素敵なデザインにしてくれました。 その「ことば選

          新刊『見て楽しむ ことば図鑑』(幻冬舎)執筆裏話

          奥山に

          「せつない鹿の鳴き声響く秋」  秋。一番せつなく思うのはどんな瞬間だろう? 身分の低い俺は、様々な場所で芸をしながら仲間と旅をしている。あちらこちらで歌を詠むので俺たちのことを「吟遊詩人」と人は呼ぶ。春夏秋冬、いろんな場所を旅してきた。自然は次々に表情を変え、楽しませてくれる。山道の果てに凛々しい梅の木と出会った春。草木に生命が満ち溢れる夏。どこまでも続く雪原のただ白一色の世界に立てば、自分まで真っ白になってしまいそうな冬。 そして、俺が一番好きな秋。赤や黄色、紫の花々が

          田子の浦に

          「雪降り続く富士山、なんと美しい!」  いろんな場所を旅してきました。自分が生まれ育った場所と違う景色、食べ物、人々、匂い。旅の日々は驚くことだらけです。  僕には、そんな旅での感動を留めておく魔法を持っています。五七五七七の短歌にすること。たった一瞬の感情でも、歌にすることで永遠の命を得るのです。ほら、まるで魔法みたいでしょう。  身分の低い役人でありながら、天皇の行幸にお供する宮廷歌人として重用されていました。奈良の都を出発し、道中たくさんの山に登りました。小さくと

          田子の浦に

          あしびきの

          「ひとりで過ごす、長い長い夜」  ひとりで眠る夜。君とふたりで眠る夜。同じ夜とはいえ、そのふたつは全く別物だ。ただ朝までの眠るだけの時間と、愛おしい君と過ごすあたたかな時間。ね、まったく違うだろう?  持統天皇に宮廷歌人として仕えてきた。様々な場面で、僕は歌を詠んできた。皆に成り代わって、旅をすれば旅の歌。誰かが亡くなれば挽歌。もちろん天皇をたたえる歌も。人々が共感する歌を詠むのが僕の仕事なのだ。  でも、ひとたび宮廷歌人としてではなく、個人の僕に戻ったときにはたくさんの

          あしびきの