
〈読書〉リカバリー・カバヒコ
・リカバリー・カバヒコ 著者:青山美智子
『リカバリー・カバヒコ』は、新築分譲マンションに住む人たちが主人公の短編集です。
マンションの近くの日の出公園にいるカバヒコは、古びた遊具です。
しかし、カバヒコには、自分の直したい部分と同じ部分に触れると、回復するという都市伝説があるようです。
日の出公園近くに店を構えるサンライズ・クリーニングの常連客たちが信じている都市伝説です。
『奏斗の頭』の主人公は、高校生の奏斗。
中学校までは勉強が得意でしたが、高校生になってからはテストでよい結果が出せずにいます。
自信が持てずにもやもやとした日々を送っていますが、カバヒコの頭をなでて、もっと柔軟に積極的に生活してみようと思い始めます。
『紗和の口』の主人公は、幼稚園に通う娘がいる主婦・砂羽。
ママ友たちに気をつかう日々に息苦しさを感じています。
カバヒコの都市伝説を聞いて、カバヒコの口を撫でます。
自分の意見を言えるようになりたくて。
『ちはるの耳』の主人公は、耳の不調で休職中のちはる。
好意を寄せていた同僚が、他の同僚とつき合っていることを受け入れられずに苦しんでいます。
自分の耳で現実を受け入れられるように、カバヒコの耳を撫でてお願いします。
『勇哉の足』の主人公・勇哉は小学生。
駅伝大会の選手をくじ引きで決めることになり、足が痛いと嘘をついて、くじ引きを回避します。
しかし、本当に足が痛くなってしまいます。
カバヒコの都市伝説をきいて、カバヒコの足を撫でる勇哉。
整体師の伊勢崎さんの助言もあり、勇哉は嘘をついた自分、嫌な自分を克服していきます。
『和彦の目』の語り手は、出版社で編集長をしている和彦。
50代の和彦は老眼など自身の加齢を感じています。
また、高齢になった母のことも気がかりです。
せめて老眼を改善してほしいとカバヒコを撫でます。
カバヒコを撫でた後、和彦の老眼は改善していないようですが、今まで気づかなかったことが見えてきます。
遊具のカバヒコは、いつも日の出公園にいるだけです。
しかし、カバヒコを撫でた人たちの心と身体は回復しています。
各短編の主人公たちが抱える悩みも、多くの人が抱えている悩みです。
この本を読むことで、悩める登場人物に共感し、励まされる人も多いのではないでしょうか。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
こちらも青山美智子さんの作品です↓↓↓
私K.Kからのごあいさつです↓↓↓