「介護の大変さを、少しでも、やわらげる方法」⑤自分をほめる
介護をされている方は、毎日、ずっと気が抜けない時間が続いていると思います。
いつからか、はっきりとは分からないかもしれませんが、介護が始まってから、いつ終わりが来るか分からない毎日がずっと継続している感覚だけは、変わらないのでは、とも思っています。
家族介護者の介護負担感
おそらく、どんな時でも、介護を受けている方(要介護者)が、できたら、いつまでも生きて欲しい、という気持ちと、同時に、介護が終わってくれないだろうか、という思いは、矛盾せず、どちらも起こってくることだとも思います。
ただ、そうした両方の思いによって、ご自分を責められたりすることで、より疲労感が増すかもしれません。さらに、介護を受けている方を、大事にする気持ちに嘘はなくても、厳しい介護環境がゆえに、つい怒ってしまったりすることもあって、ご自身に対しての嫌悪感すらわいてきて、そのことで、また疲労感が増大する可能性すらあるのでは、と考えています。
今は、それに加えて、コロナ禍のことで、いろいろな心配が増えて、さらに、負担が増えている可能性も高いのでは、と思います。
その介護生活での気持ちの状態は、説明しがたい大変さもあると推察することしかできないのですが、それでも、ほんの少しでも、負担感や、ストレスを減らせるかもしれない方法は、お伝えする努力はしていきたいと思っています。
時間的にも余裕がなく、どこかへ出かけることも出来ない場合がほとんどだと思いますが、この「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」シリーズでは、何回かに分けて、お金も時間も手間もなるべくかけずに、少しでも気持ちを楽にする方法を考えていきたいと思います。少しでも気が向いたら、試してみてもらえたら、幸いです。
「自分をほめる」
「介護の大変さを、少しでも、やわらげる方法」シリーズ第5回目のテーマは、「自分をほめる」です。
こうしたテーマを見ただけで、「またか」もしくは「無理…」とか、「恥ずかしい」といった反応をされる方も多いかと思いますが、それでも、あらためて「自分をほめる」ということを考えていきたいと思っています。
毎日、介護をされていて、絶え間ない緊張の中で、常に起こる出来事に対応し続けるという時間が、ただ目の前にずーっとあって、その中で、自分を責めることはあっても、自分をほめることなんて、ひとつもない。といったようなことを反射的に思ってしまうのが、多くの家族介護者ではないか、という印象があります。
ただ、その時間の中で、おそらくは消耗し続けていらっしゃる可能性も高いので、ほんの少しだけ、ご自分のことに目を向けていただけないだろうか、というのが、今回のテーマでもあります。
ほめる、ことは難しいと思います。
特に、現代の日本で生活されていて、年齢層が高い方ほど、ほめられた記憶が乏しいのではないか、と考えています。
だから、自分をほめるのも、どうしていいのか分からない、というのが最初の反応かもしれません。
最初に試して欲しいこと
ほめるところを探す、というのも、もしかしたら負担になると思いますので、最初は、自分へのあいさつみたいなところから始めるのは、どうでしょうか。
介護生活の中で、あまり熟睡できないかもしれません。もしかしたら、疲れがひどくて、意識を失うように眠ってしまうかもしれませんが、それとは逆に、すぐに眠れない方もいらっしゃるかと思います。
どちらにしても、眠る前に、心の中で、一言でいいので
「今日も、お疲れ様でした。よくがんばったと思います」
と、ご自分に声をかけてもらえないでしょうか。
それで、良い感じでしたら、次は実際に声に出すと、(小さい声で構いません)自分の耳で聞くことになりますから、またさらに気持ちが違ってくると思います。
今、読むだけだと、ばかばかしいと思われるかもしれませんし、本当に効果があるのかと、疑問を感じられるかもしれません。ただ、もし、やったことがないのであれば、できたら試してみてください。
介護の日々で、自分の気持ちに目を向ける余裕すらなかったと思います。数秒でも、心の中でも、言葉をかけることで、自分を少しでも気遣うことになるので、少し気持ちが、違ってくる可能性はあります。
自分のほめかた
毎日、介護をされていて、いつもと違う小さい変化はよく起こり、そのたびに、心ならずも、介護をされている方(要介護者)に、つい怒ってしまったり、厳しい言葉をかけてしまったりすることも少なくないかもしれません。
そのことで、ご自分を責めてしまったり、許せなかったりすることもあり、それが、自己嫌悪につながり、また負担になることもあると思います。
それを、無理に、というか、意識的に「やめてください」とも言えず、また言ったとしても、実際に、自分を責めるのをやめる、というのも難しいかもしれません。
ですので、たとえば、こんな風に考えるのは、どうでしょうか。
毎日のように、10回くらい、つい怒ってしまうような出来事があって、それは怒っても仕方がないことだとも思います。それでも、怒ってしまう自分が嫌になる場合は、そのうち、1回でも怒らずにすんだら、それを秘かに、心の中だけで、「よくがんばった、すごい」と自分をほめるのは、どうでしょうか。
これも、読むだけだと、馬鹿馬鹿しいかもしれませんが、もし、よかったら試してみてください。
自分の介護行為に対して、もしかしたら、誰も見てくれていないのかもしれませんが、自分自身が見ている、ということの確認になると思います。
それは、よく言われるように、「自分を大事にしてください」にも関係してきます。ただ、自分を大事にするために「どうしたらいいか?」を考えるのも、ある程度の余裕がないと難しいと思います。
だから、まずは、こうした「自分をほめる」行為をしてもらって、自分のことを考える時間を、1日のうちに、ほんの何十秒かでいいので持ってもらえると、やはり気持ちが、違ってくると思います。
ここで、気をつけていただきたいのは、「10回のうち、1回怒らずにすんで、自分を秘かにほめた」あとに、「次は2回がまんしよう」と目標を高めるのを、できたら避けていただきたいことです。そうなってしまうと、「今日は1回しか我慢できなかった」といったように、その目標が新たな負担になる可能性もあるからです。
できたら、そんな風に、試してみてください。
もしも、苦痛だったり、気が進まなかったりしたら、無理はされないほうがいいと思いますが、今まで述べてきたことが、自分に合いそうでしたら、続けてもらえませんか。また、さらに、可能でしたら、あきないように、ほめる内容を変えたりして、続けていただけたら、と思っています。
自分に心の中で、声をかける。さらに、可能であれば、自分の声が聞こえるように、自分に声をかけてもらえたら、それは、思った以上に、気持ちに作用することもあるかもしれません。
家族介護者の方々に思っていること
最後によけいなことかもしれませんが、自分自身が介護に関わるようになったのが20年前で、臨床心理士になって介護相談をやらせてもらうようになってからは7年ほどがたつのですが、家族介護者の方々と話をして、いつも思うことがあります。
それは、「介護をされている方は、それだけですごい」ということです。
いろいろなことがありつつ、厳しい時間の中で、ご自分を責めたりすることも多いと思いますし、丁寧な介護をされている方ほど、自分に対して厳しい見方をしてしまう傾向が強いようにも思います。
ですが、介護を必要とされている方(要介護者)が、認知症や、老化や身体的な病気などを抱え、それでも毎日を生き続けているのを支えているのは、間違いなく、介護をされている方だと思います。
そう言われても、ピンとこないかもしれないですが、改めてすごいことだと思っています。
あとは、ご自身の負担などを少しでも減らしたり、ご自分のことに気を使う瞬間を、数秒でもいいので持っていただければと、思います。さらに、体を休める時間を、難しいと思いますが、可能な限り持ってください。
そうした家族介護者へのエールは、最近、コメントでもいただきました。
ここでお名前をあげることが、その方のご意志に添うかわかりませんので、『「介護時間」の光景⑭ 「たぬき」 6.27.』のコメント欄をご覧になっていただければ、と思っています。
介護者に向けての応援と思って、とてもうれしくありがたい言葉でした。
今回は以上です。
もし試してみて、あまり効果がない場合はすみません。もし、よろしかったら、他の方法も紹介していますので↓、クリックして、読んでいただければ、と思います。
「介護の大変さを、少しでも、やわらげる方法」③気分転換の方法を見つける
「介護の大変さを、少しでも、やわらげる方法」④ 怒りが消えた行為
(他にも介護について、いろいろと書いています↓クリックして読んでいただければ、うれしく思います)。
「介護books」②介護が始まるかもしれない人へ。不安を(少しでも)減らすための4冊
介護離職して、10年以上介護をしながら、50歳を超えて臨床心理士になった理由①
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